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第3話:すれ違った心

「私に任せて下さいよ~!」


地球防衛軍の作業の一環で、拳銃の整備作業を何人かの隊員で実施しており、夏美や誠もその中に居た。

夏美は件の台詞を自信満々に言ったものの、途中から訳が分からなくなり、1人で悪戦苦闘していた。


「伊藤!」

「…。」

「伊藤!」

「…。」

(あーっ!上手いこと行かないときに話しかけないで下さいよ!)

「伊藤!お前遅いな。」

「もう、うるさい!」

(な、何逆ギレしてんだ?)


作業が上手くはかどらず、イライラが募る夏美だった。


「お前そんなんじゃあ、日が暮れても終わらんぞ。」

「ええ~っ!」


誠の忠告に夏美は目を丸くして驚いた。


「だいたい、お前、作業がデタラメなんだよ!貸して見ろ。」


誠が途中まで夏美の分の作業を肩代わりする。

夏美は途中から誠の監督下で作業を再開し、無事に作業を終えた。


「やったーっ!出来ましたよ!」


何とか完成に持ち込んだものの、誠がいなければ作業が終わらなかった夏美にイライラした誠は、


「お前なあ、分からんかったら分からんってちゃんと言えって言ってんだろ!」

「そ、そんな…。」

「こんな作業程度だから良いけど、これが戦闘中だったらどうすんだ?」

「え、え…?」

「いつもはかっこいい事言っといて、肝心な時はこうだ!そんなんでよく…。」

「そんなに怒らなくても良いでしょ!」

「は…?」


誠の説教に耐えられなくなった夏美が逆ギレして怒った!


「何逆ギレしてんだ?この馬鹿女!」

「…。」


それから誠が何を言っても、夏美は誠に背を向けたまま口を閉ざした。


次の日、非番の夏美は買い物と美容院に行くために1人で街を歩いていた。


(誠先輩、あんなに怒らなくても良いじゃない!私だって不得意分野があるわよ!)


昨日、誠に怒られた事を気にしていた夏美はあまり周りを見ていなかったからか…、


『ドスン!』


「きゃっ!」

「痛っ!」


歩道の交差点で夏美は誰かにぶつかり、尻餅をついた。


「大丈夫ですか?」


こけた夏美を助けようと、ぶつかった相手が夏美に手を差し伸べた。


「ご、ゴメンナサイ…。」

「僕もボーっとしててゴメンナサイ。怪我はありませんでしたか?」


夏美とぶつかった青年は、こけた夏美に手を差し伸べた。


「…えっ?」

「さぁ、立って!」


青年は夏美の手を取って起こすと、夏美の鞄の埃を手で払ってあげてから返した。


「あ、ありがとうございます。」

「僕の方こそゴメン!君みたいな可愛い女の子に迷惑をかけたから。」

「えっ!」


自分を女性として優しく扱ってくれる青年の言葉に、夏美は顔を赤く染めた。


「えっ、あっ、だ、大丈夫ですぅ。」


自分を大事にしてくれた青年にうっとりした夏美は買い物に行くためにそそくさとその場を離れた。


「ヤダァ、私、変な顔してなかったかなぁ?」


ショーウィンドー越しに映る自分の顔を見て、夏美は先程の青年との出会いを思い出してはニコニコしていた。


(さっきの素敵な人とまた逢いたいな。)


笑顔の夏美がしばらくショーウィンドーの中の着飾ったマネキンを見ながら思っていた。

そんな時、ふっと誠の顔が出て来た。


(誠先輩…、誠先輩も優しいけど…、いつも余計に私に厳しくしてるし、私の事を女扱いしないし、私、嫌われてるんかな?)


何故か誠の事を思い出しては切なくなる夏美だった。


それから買い物も美容院も終わり、髪型を変えて上機嫌の夏美だったが、先程の青年とぶつかった交差点に差し掛かった際、また…、


『ドスン!』


「きゃっ!」

「い゛で~!」


再び夏美は誰かとぶつかった。


「ご、ごめんなさい。」

(また、さっきの彼だったら良いなあ!)

「怪我無いか?」

(さっきの彼とは違うわね。それもそうよね。)


さっきの青年とは違う感じの、ぶっきらぼうな男性のようだった。


「はい。」


男性はさっきと同じようにこけた夏美に手を差し伸べた。


「あ…、ゴメンナサイ。…、ええっ?」


手を差し伸べた相手を見ると、夏美と同じシフト勤務で同じく非番の誠だった。


「か、鎌田先輩?」

「えっ?誰?」


誠は、髪型を変えた夏美に最初は気づかなかったが、しばらくしてようやく気付いた。


「え…?伊藤?」

(あ、何だ、美容院に行ってたのか。)

「先輩、ぶつかって怪我でもしたらどうしてくれるんですか?」

「こっちの台詞だろ、ブス!」

「ブ、ブスゥ?ブスゥゥゥ!」

「何事実を言われて怒ってるんだ?」

「失礼過ぎますよ!私のどこがブスなんですか?良く見て下さいよねっ!」


夏美は髪型を変えた事を誠に誉めて欲しかったが、誠は逆に、


「さあ?いつもと変わらんだろ?」

「髪型変えたでしょ!気付かなかった?気付かなかった?」


夏美は髪型を変えた自分の変化に気付いて居なさそうな誠に向かって、なじるように言った。


「あ、そう、別に興味無かったから。」


『髪型変えたんだね、似合ってる、カワイイ!』と、夏美の期待していた回答が出ないばかりか、逆に、自分をけなすような言葉に、夏美は怒りを覚えた。



「興味がないぃ?」

「別にどうでもいいだろ?お前の髪型なんか。」

(どうでもいい?どうでも…?)


誠の乱暴な発言に、夏美は怒り心頭にたっした。


「失礼しますっ!」


夏美は誠の方を見ることなく、その場を後にした。


「何だよあいつ?あんなに怒って?」


夏美の怒る理由が分からず、ただただ呆然とする誠だった。


(あ゛~っ!最っ低!あんなん、宇宙1無神経な男よ!)


宇宙のヒロイン、スーパーシャイニーである夏美の言葉だから非常に説得力がある。

夏美はブリブリと怒りながら歩いていると、


「あ、さっきの…!」

「えっ?」


夏美の前に、さっきの青年が立っていた。


「あ…、さっきは…。」

「美容院に行ったんだね。さっきも可愛いかったけど、今度はまた違った可愛らしさがあるね!」

「えっ…!あ、ありがとうございますっ!」


夏美は目を丸くキラキラさせて喜んだ。


「君が良かったら、さっきのお詫びのしるしにお茶を奢るよ!」

(ヤダ、ナンパ?うーん、行きたいけど…、軽い女と見られなくないし…。)


夏美が思案に暮れてると、


「初対面の男の誘いには乗らないよね。でも、僕は君みたいなカワイイ女の子と一緒に楽しみたいな。僕の名刺をあげるから、今度暇なときに連絡してよ!」


青年は名刺を夏美に手渡すと、にっこりとした笑顔でその場を去った。


(や、優しい!やっぱり私ってモテるんだ!)


誠の態度とは正反対な、紳士的で爽やかな青年に心が揺れる夏美だった。


次の日、夏美の様子が明らかに違っていた。

勤務中だと言うのに派手なメイクや休憩時間中にはやたらと同僚隊員に対して、


「私、カレが出来たんですよ!」


と、彼氏自慢を始めた。

確かに、女性隊員からは、


「夏美隊員、おめでとう!」

「良かったねっ!」


と、祝福して暮れる事が多かったし、大抵の男性隊員も同様だったが、あからさまに度を超えたノロケ態度は一部の隊員の顰蹙を買った。


「鎌田、お前、伊藤の指導教官だから、ちゃんと指導しとけよ!」


と、夏美に直接ではなく、誠に文句を言って来た。

確かに誠自身も、夏美の行き過ぎた態度は注意する必要があると考えてはいた。

そこで、誠は夏美を呼び出した。


「伊藤?」

「何すかあ?」


夏美はいつもの素直な態度とは違い、横柄な態度で誠に接した。


「何だその言い方!まあいい、お前、彼氏が出来たからってちょっと浮かれすぎだぞ!」

「そんな事ないっすよ!」


(このクソアマ、先輩にタメ口聞きやがって!…まだ我慢だ!)

「なあ伊藤、お前だって他の女性隊員がノロケ話しまくってたら、そんなのにつき合ってられないだろ?そう言う事を言ってるの!」

「妬いてんだ!」

「え?」

「私と言う美女を他の人に取られて妬いてんだ!」


夏美はニヤリと微笑みながら得意気に喋り、誠の神経を逆撫でした。


「な、何浮かれてんだ?お、俺はお前のことなんか好きじゃないし。」

「またまたぁ、はいはい、男前ですね、私の事が好きな癖に!」

「夏美、い、伊藤!お前いい加減にしないと…。」

「キャッ!」


その時!基地周辺を地震が襲った。震度はどのくらいか解らなかったが、かなり激しい揺れだったようで、その怖さに夏美が誠にしがみついていた。


「ふぅ…、やっとおさまったみたいだな。」


誠が良く見ると、夏美が地震が終わっても誠にすがりついたままだった。


(コイツ何だかんだ言ってカワイイとこあるな!)


「伊藤!もう大丈夫だ!」


誠が優しく夏美に声を掛けた。夏美がスーパーシャイニーであっても普通の女の子、ましてや、彼女は未だに地震を体験したことがないから、未知の恐怖に怯えていた。


「本当だ!地震怖い!鎌田先輩、ありがとうございます!」


夏美は自分を守ってくれた誠に感謝したが、誠はつい、


「…っ、これぐらいで怖がりだな!大袈裟すぎるぞ!」


地震の恐怖に怯える夏美には耐え難い言葉だった。


「怖いものは怖いんですよ!いくら先輩でも言って良いこと無いでしょ!」


夏美は激しく怒り、誠をジロリと睨みつけた!


「とにかく、私に偉そうにしないで下さい!」

「そんなに怒らなくても…。」

「私には強く当たっといて、自分には止めてほしいんですか?虫が良すぎますよ!」

「お、おい伊藤…。」


夏美は右手の人差し指をピンと立てて誠を黙らせると、


「隊員規範にもあるとおり、私の事は『伊藤隊員』と呼んで下さいっ!また、幾ら後輩だからと言って、偉そうにしないで下さいっ!」

「何でそんなに興奮するんだ?」

「私と鎌田隊員とはただの先輩後輩な関係だけですから!他には何もありませんっっ!」


そう言うと夏美は踵を返して誠の所から帰って行った。


「先輩後輩な関係だけって、何だよ?」


この時はまだ、誠の気持ちの中でまだはっきりとしない、夏美に対する気持ちがくすぶっていた。


その日は誠とあっても夏美は無視したままだった。


翌日、隊員用の休憩室でこんな噂話が出た。


「ねぇねぇ、昨日の夜、夏美が彼氏と歩いてるのを見ちゃった!彼、チョーイケメン!夏美がすっごいにやけてた。」

「あの子、昨日なんかホットパンツに生足で、変わったわよね。もうちょっと地味だったのに。」


そんな噂話を、たまたま廊下を歩いていた誠が耳にした。


(夏美の奴、やっぱり幸せなんかなぁ?)


誠は、自分ではまだ理由が解らない胸の痛みに苛まれていた。


その日の夕方、派手なメイクにミニスカート姿の夏美が女子寮から出たとこを誠と鉢合わせした。


「お前、派手すぎないか?」

「別に規範違反してませんから!私服で美しくなっても問題ないでしょう!」

「別に俺はそんな事で…。」

「鎌田隊員には関係ないでしょ!」


この一言で、誠の堪忍袋の緒が切れた!


「ふざけんな!俺はお前が誰とつき合おうが知ったこっちゃねぇ!ただ、いきなり態度が変わったから、変な奴に捕まったんかって心配してるだけだ!」


誠は夏美の肩をガッチリ掴みながら激しく前後に揺さぶった。


「痛い!怖い!止めてーっ!」


夏美の悲鳴に誠は我に帰って、夏美の肩をガッチリと掴んでいた手を離した。


「ご、ごめん…。」

「最っっ低ぇ!乱暴な人なんて大っ嫌いい!鎌田先輩のバカァ!」


誠に揺さぶられ、恐怖を感じた夏美は、誠への憎悪をぶちまけるとその場を足早に去っていった。


「やべぇ…、ついカッとなって…。」


その場に立ち尽くした誠はがっくりした気分に陥り、とぼとぼと帰った。


(今度合ったら謝ろう…。)


そう歩き出した矢先…、


『…、本っ当、鎌田先輩の馬鹿!…。』


誠の隊員用無線機から何故か夏美の声が聞こえてきた。


『…。最低!女の子に暴力振るうなんて!今度セクハラ懲罰委員会に訴えてやろうかしら…。』


「何で夏美の声が?」


どうやら、夏美が着替える際に腕時計型の隊員用無線機を外すのを忘れ、さっき誠が揺らした際に弾みで誠との専用回線に無線が入ってしまったようだ。


「あいつドジだな、教えてやるか。」


誠は夏美に無線機越しにこの事を言ってやろうとしたが…、


『先輩のバカ!ゴリラ!嫌い!』


等と聞くととても教える気にならなかった。


(バカ女、無線機はめたまま彼氏に馬鹿にされてしまえ!)


誠は夏美の先程の態度が気に入らなかったからか、無線機の件はほっといた。


それからも、誠が男子寮の部屋に戻ってからもずっと、無線機越しの夏美からの悪口を聞いていた。


(本当にムカつくドブスだな!)

(彼氏、夏美の事、大事にするかな?)

(夏美…、危険な目に遭わないよな…?)


いつしか、誠は夏美の後を追っていた。


隊員用無線機にはいざという時用の現在位地がわかるGPS機能があり、誠は夏美のGPS情報から居場所に近付いた。


「あっ、居た。」


誠は夏美とその彼氏を見つけた。


誠は、無線機のボリュームを極力絞り、2人に近付いた。


『夏美ちゃん、今度地球防衛軍の基地を見学させてくれる話はOK?』

『剛さん、大丈夫よ!』

『作戦指令室や戦闘機とかの格納庫も?』

『私に任せてっ!』

『ありがとう!』


等々の話が出た。


(あのバカ調子に乗ってるけど、作戦指令室や戦闘機格納庫は一般人の立ち入りはNGだぞ!知らなかったんか?)


『夏美ちゃんありがとう!君って可愛くて、優しく素直で、大好きだよ!』

『も~ぅ、やだあ!』


剛と言う彼氏から頭を軽くポンポンと叩かれて、有頂天になる夏美だった。


(完全にのぼせてるな!)


『じゃあ夏美チャン、君の大好きなご褒美をあげるよ。』

『ありがとう!』


そう言うと、剛は夏美の目をじっと見た。


夏美の表情は誠側からは確認できてないが、おそらくはメロメロだろう。


しかし、剛の両目からは妖しい光が夏美に流れ出ていた。


「おい、夏美!」

「えっ、せ、先輩?」

「誰だよ、アンタ?」


いたたまれなくなった誠が飛び出して来た。


「夏美!幾ら彼氏でも、親兄弟でも、作戦指令室や戦闘機格納庫には立ち入れないんだぞ!安請け合いするな!」

「先輩…、その…。」

「だからのぼせすぎるなと言ったろうが!公私のけじめはつけとけ!」


誠の言葉に夏美は黙ってしまった。


「邪魔すんじゃねぇよ!俺は何が何でも基地に入って基地を破壊しなければ行けねぇんだよ!」

「は?」

「え?」


誠と夏美は、剛の言葉に疑問を抱いた。


「あ…、し、しまった!」

「どういう事だ?」


不用意な発言に動揺している剛に誠が詰め寄ろうとしたが、


「鎌田先輩、剛さんは別に宇宙人なんかじゃないわ!」


夏美が剛を庇おうと誠の前に立ちはだかった!


「い、伊藤!お前何言ってんだ?」

「剛さんが悪い人じゃないわ!先輩は私に構ってもらえないからって、嫉妬してるだけなんだから…!ねぇ、剛さん。」


夏美は剛の顔をうっとりとした表情で見つめた。


「そうだよ!言いがかりつけんじゃねぇよ!」


剛は、自分を必死に庇う夏美の瞳に、妖しげな紫色の光線を浴びせ続けた。


「ええ加減にせえぇ!」


誠は夏美の両肩をガッチリ掴むと、夏美を激しく揺さぶった。


「止めてーっ!コワーイ!」

「かわいそうだろ!」


怖がる夏美や諫める剛の叫びを無視しながら、誠は夏美に問いかけた。


「お前が幾らこいつを好きでも構わない!しかし、少しでも疑いがあれば問いただすのが俺達の任務でもあるだろ!目を覚ませ、夏美!」


誠は夏美に叫び続けている間、夏美の目を見つづけた。


「止めろ、術が解けるだろ!」


剛が必死になって誠と夏美を引き離そうとした。


「てめぇ、術って何だ?」

「…あ゛!」


剛の台詞を怪しんで、夏美の両肩を掴んでいた両手を離し、誠は剛に掴みかかろうとした。


「せ、先輩?何してんですか?」


夏美が誠に問いかけた。

それは剛に掴みかかろうとした誠を制止しようとするようではなく、何故誠がここにいるのかがわかってないような雰囲気だった。


「あ、この間私に親切にしてくれた人ですよね?どうして先輩と一緒にいるんですか?」


一緒に居たはずの夏美が突然、事態を把握出来ずにいた。


「な、夏美?お前、どうした?こいつお前の彼氏じゃ…?」


夏美の状況が理解できていない誠は疑問を抱きながら剛の顔を見た。


「よくも…、俺の作戦を邪魔しやがって…!」


剛が怒りに震えながら、全身赤色の宇宙人に変身した。


「やっぱり宇宙人か…。」

「そうだよ!俺はフブラ星人、地球侵略に地球防衛軍が邪魔だから、内部に侵入して破壊工作をするために、隊員1人を利用した方が楽だったからな!」


宇宙人に変身した剛が自分の目的をやけくそ気味に話した。


「そ、そんな…。」


落胆する夏美に剛は更に追い討ちをかけた。


「誰だって良かったんだよ!適当に引っかからそうなバカ女を見つけたから利用したまでだ!」


「そ、そんな…、あんなに優しくて素敵だったのに…、ヒドい!」

「こんガキャアアア!」


夏美の人を好きになる気持ちを踏みにじった剛を、誠が何度も殴りつけた!


「よくも夏美の事を傷つけたな!」

「ち、地球人の分際で…!」

「誠先輩、もう止めて!わたしはもう大丈夫だから!」


夏美が止めようとしても誠は殴る手を止めなかった。


「この地球人があああああ!」


耐えかねた剛が誠を突き飛ばした瞬間、身長50m程に巨大化した。


「てめぇは殺す!」


巨大化した剛が誠を踏みつぶそうと足をあげた。


「逃げられない…。」


武器を持たない誠が諦めた瞬間だった。


「身勝手過ぎる事は許さない!」


夏美はハンドバッグからシャイニーアイを取り出してすぐさま変身すると、誠を踏みつぶそうとする剛の足を下から支え、巨大化しながらはねのけた。


「ぬ、ぬおっ?」

「フブラ星人、観念しなさい!」

「お前も宇宙人だったのか…?」

「私は悪の宇宙人を倒すスーパーシャイニー!覚悟しなさい!」

「スーパーシャイニー!俺に構わずこいつをやっつけてくれ!」


誠はスーパーシャイニーを応援した。


「くたばれ!」


フブラ星人の剛は回し蹴りでスーパーシャイニーを倒そうとするが、スーパーシャイニーはひらひらと交わしながら間合いを詰め、逆に剛の胸元を蹴り飛ばした。


「ぐおおおお!」


剛は怒りに震えながらスーパーシャイニー目掛けて突進した。


「うおおおおお!」


剛はスーパーシャイニーを殴ろうとするが、スーパーシャイニーは剛の拳を左手で軽く払いのけ、同時に右手で剛の左頬を殴り飛ばした。


「こ、このアマァ!」


剛が完全にブチキレて、スーパーシャイニー目掛けて再度突進したが、スーパーシャイニーは右手に光を集め、必殺技である


『シャイニーアロー』


を放った。


「うぎゃああああ!」


シャイニーアローを喰らった剛は激しく爆発し、辺りに静寂が戻った。


「シャッ!」


と、かけ声の後、スーパーシャイニーは遙か上空に飛び立った。


「スーパーシャイニー、ありがとう!」


誠は姿が小さくなるまでスーパーシャイニーを見送った。


「あ、夏美は…?」


同時に、姿が見えなくなった夏美の事を誠は心配した。


(まさか、さっきの戦闘に巻き込まれて…)


誠に焦りが出たその時!


「せんぱーい!」


誠の背後から笑顔をたたえた夏美が小走りでやって来た。


「な、夏美!いや、伊藤、無事だったか?」


誠は夏美の無事を確認して安堵した。


「誠先輩、さっきはありがとうございました!まさか、私、騙されて操られてるなんて…。」

「気にすんなよ!」

「先輩…。」


さっきの笑顔と違って涙をうっすら浮かべた夏美が淑やかに謝った。


「全く、もう少しで大変な事になってたから、気をつけろよ!」

「はぁい…。」


誠はこの程度で説教を止めようと思ったが、


「だって私がモテるから…。」

「は?」

「だって私がモテるから、先輩だって本当は私の事が好きなんでしょ!」


夏美が照れくささを隠すためか、場違いなことを言い出した。


「ふざけんな!」

「え?」

「お前みたいな奴がモテるわけねーだろうがぁ!だいたい、ブスでペチャパイなバカ女に寄って来る奴がいるわけねーだろ!あんなにチャラい宇宙人に騙されやがって!」

(…!)


誠の怒鳴り声に夏美は首をうなだれた。


「普段からそんなに浮かれてるから引っかかるんだ!クソアマァ!」

「そんなに言わなくたって良いでしょ!」


誠の説教に耐えかねた夏美が突然叫んだ!


「だいたい、先輩は私の事分かってない癖に、文句言わなくたって!」

「はぁ?お前の事分からんかっても、どうって事無いだろ!」

「ヒドい!」

「今のお前が言えた柄か?」


2人の口論は更に続いたが、口論を止めたのは夏美の一言だった。


「先輩、私の事を何も分かってない癖に、もうこれ以上私に構わないで!」


この一言を最後に夏美はその場から駆け出した。


「…勝手にしろ!」


後に残された誠は、やるせない思いに満ち溢れた。


(夏美の奴、一体何を隠してんだ?あんなに怒らんでも…。力になってなりたいのに…。)


その時、夏美も1人で悔やんでいた…。


(私…、私が悪かったのに…、先輩にあんなに当たって…、でも、だからってあんなに怒らなくても…、私の事分かってない癖に…、あの時踏みつぶされそうになった先輩を助けたのは私なのに…、バカァ…。)


自分の正体を明かせないジレンマに陥った夏美も、この悩みを打ち明けられず、苦悩を背負っていた。

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