第0話:正体不明のヒロイン
今、世界中において、何人かの人間が行方不明になる事件が多発している。
人種も、職種はもちろん、老若男女を問わず、世界のあちこちで人間が行方不明になっているのだ!
警察力に限界を感じた世界政府は、その内部機関であり、宇宙人や宇宙怪獣から地球を守る
『地球防衛軍』
にも調査を命じた。
「この辺か?」
先日、行方不明となった若い男女の捜索に、地球防衛軍の隊員である
『鎌田 誠』
が、他の同僚隊員とやって来た。
一見して普通の町内の公園であり、ブランコ、砂場、シーソーにベンチと、特に変わった様子はない。
「手掛かり0か…。」
そう思って基地に帰ろうとした時、突然!
「お待ちなさい!」
2人の背後から若い女性の呼び止める声を聞き、2人は振り返った。
「君は誰?」
誠が女に対して問う。
身長は155センチほど、肩まで伸びた茶髪の、目のパチッとした若い女の子がそこに居た。
「あの車に乗ったらダメ!それに…。」
女は唐突にも誠達が乗ってきた防衛軍の車に乗るなと言っただけでなく、まだ何か言いたげだった。
「後は何だい?」
「それにの次?初対面の女の子にそんな言い方をしたらモテないわ!と言おうとしただけ。」
「は!」
これまで女性にモテた試しのない誠が気に障る事を言われて頭に来かけた時だった!
『バシュュューン!』
誠達がさっきまで使用していた防衛軍の車が誠達の目の前で大音響と共に姿を消した。
「え?な、何で?」
突然の出来事に混乱する誠達だった。
「あ、そうだ、お前!じゃなかった、君!」
車がこうなることを予想でもしてたのだろうか?誠は先程の女を探したが、女も何故か煙のように消えていた。
「誠、さっきの女は?」
もう1人の隊員が誠に問いただした。
「否、初対面だよ。しかし…、」
誠は先程の女を思い出していたが、言葉を詰まらせた。
「その先は何だよ!」
「いや、あ…、可愛いかなって…。」
「誠、他に言い方は無いのかよ?」
少し照れた誠をからかう、もう1人は呆れられただけだった。
防衛軍の車を亡くして仕方なくタクシーで基地に帰った2人だったが、状況を方向しようと隊長室に入った瞬間、基地が一斉攻撃を受けていることを知らせるサイレンが鳴り響いた!
『攻撃者多数、基地内に侵入、正体不明、隊員は直ちに撃退せよ!繰り返す…、』
「し、正体不明?宇宙人か?」
「報告は後回しだ!総員、戦闘準備!」
「了解!」
誠達地球防衛軍の隊員は基地内に侵入した敵を撃退すべく、抗戦を始める。
しかし、侵入者達は少し奇妙であった。
服装はまるで民間人のようであり、手に持つ物は棒とかが主体で銃や刃物を持たず、攻撃すると言うよりはむしろ手に持つ棒とかを振り回すぐらいであった。
「何だ、こいつら?」
侵入者にしてはかなり奇妙な集団を前に、誠達は戸惑った。
その時、背後から!
「あの人達を撃たないで!」
撃つなと懇願する若い女性の声が鳴り響いた!
誠達が振り向くと、そこに居たのは、誠に危険を知らせたあの時の女が立っていた!
「あ!お前…。」
誠が振り向き様にすっとんきょな叫びを上げた。
「あの人達は最近になって行方不明になった人達、みんなグリー星人に操られてるだけなのよ!」
「な、何?」
女の言葉にその場にいた誰もが困惑した。
無理もない、緊迫した特殊な状況下で見ず知らずの女が宇宙人の名を叫んだりしてもにわかに信じられる訳がない!
「君、デタラメを言うな!」
「状況を見てからものを言え!」
女の話を誰一人として聞こうとはしなかった。
たった独りを除いて、
「隊長、彼女の言うとおりかも知れません!あの侵入者達は明らかに様子が変です。催涙弾攻撃に切り替えましょう!」
誠が女の言葉を信じた。
「わかった。総員、催涙弾攻撃、…、催涙弾、撃てーっ!」
隊長の号令一下、地球防衛軍の催涙弾の一斉攻撃を食らい、侵入者達は呼吸を乱し、涙を流してその場に倒れた。
すると…、
「うえっ、ゲホゲホッ、…?あれ?ここはどこ?」
暴徒化していた侵入者達が自分達の意識を取り戻した。
「やっぱり、侵入者達は最近の行方不明者達だったか!」
「君、よくわかったね!」
地球防衛軍の隊員達が皆一斉に女を称えたが、女は逆に険しい顔をして、
「まだ終わってないわ!みんな、気をつけて!」
「え!」
その時!
『よくぞ見破ったな、地球防衛軍よ!私はグリー星人、地球を手に入れる!』
基地内にグリー星人の声が鳴り響いた!
ゆうに50mを越えていそうな宇宙人が基地の前にそびえ立っていた。
「撃てーっ!」
隊長の指揮の下、地球防衛軍が一斉に攻撃したが、グリー星人には効かなかった、それどころか、グリー星人は眼から怪光線を放ちながら基地を破壊していく。
基地内は建造物の破壊と、逃げ惑うグリー星人に操られていた人々で混乱を極めた。
『フハハハハ!』
グリー星人の攻撃を防ぐのが精一杯であったが、誠はただ1人で、逃げ遅れた多くの民間人の救助のためにグリー星人に立ち向かって行った。
「今のうちに早く!」
味方の援護射撃を貰いながらも懸命に戦い続けたが、元から攻撃が効かないグリー星人の進撃を食い止めることは出来なかった。
(馬鹿ね…、無駄なのわかってる癖に、でも、優しくて勇気があるのね、地球人(彼)は…。)
地球防衛軍とグリー星人の戦いを隠れて見ていた謎の女は、胸ポケットから小さな女性用のサングラスに似た、フレームの分厚い眼鏡をかけた。
その時!
全身銀色の肌に赤いラインの入った、こちらも全長が50m近くの巨大な、然も女性のような容姿の超人が突如として現れた。
『オマエは誰だ?』
グリー星人が言い終わる前に眼から怪光線を放つが、女超人はジャンプして交わすと、空中から跳び蹴りを喰らわせた。
『名を名乗らずに戦うとは卑怯な!』
グリー星人の挑発的な言葉に女超人は初めて口を開いた。
『私は銀河を守る超戦士、スーパーシャイニー!グリー星人、あなたのような姑息な侵略者を許さない!』
『黙れ!女子供とて容赦しない!』
グリー星人が殴りかかろうとするが、スーパーシャイニーにかすらないどころか、大振りになって逆に隙の出来たグリー星人の脇腹に回し蹴りをした。
『グヘッ!』
グリー星人が苦悶の表情をする。
『ゆ、許さんぞ!』
グリー星人が辺り構わず眼から怪光線を放ちまくる。
このままでは地球防衛軍の隊員や地球人に犠牲者が出ると直感したスーパーシャイニーはすぐさま右手を高々と上空に掲げ、右手全体を光らせると、
『シャイニーアロー!』
必殺技の名を叫びながら、右手を振りかざし、手に集まった光が一つの大きな矢となってグリー星人目掛けて突き刺さる。
『グアアアア!』
スーパーシャイニーの必殺技であるシャイニーアローを顔面に受けて、グリー星人は粉々に爆砕した。
『シャアアアア!』
それを見届けたスーパーシャイニーは大空高く飛び去った。
スーパーシャイニーの大活躍で地球に平和が戻った。
「しかし、あの女、何者だったんだ?」
グリー星人の攻撃にさらされていた人達の救助活動をしながら、誠は謎の女の事を考えていた。
翌日、基地を復旧している最中、誠達地球防衛軍の隊員が隊長の指示の下で集合した。
「みんな、昨日はよく戦ってくれた。これからはあのような宇宙人の侵略が更に増えるだろう。」
隊長は話を続けた。
「そこて、新しい隊員を紹介する。さあ!」
全員が見守る中、グレー地に黒のラインとかが入った隊員服に身を包んだ1人の女性隊員が入って来た。
「あっ!」
誰もが目を見張った!
彼女は昨日の謎の女だった。
「はじめまして、いや、昨日振りですね。伊藤夏美と言います。よろしくお願いします。」
謎の女は自らを伊藤夏美と言うとにっこりと微笑んだ。
(カワイイな。)
誰もがそう思っていた時、
「彼女の指導教官を誰にするか…、よし、鎌田、お前に任せた。よろしく頼むぞ!」
「え?お、俺ですか?」
誠はびっくりした。無理もない、いきなり指導教官を任されたのだから、然も女性を。
「よろしくお願いします、先輩!」
「あ、ああ。…、じゃあ、今から簡単なことを先に教えるから、こっちに来なさい。」
ほかの隊員の冷やかしとやっかみの中、誠達はその場を離れた。
「なあ?」
「何ですか?」
廊下を二人で歩く中、誠は夏美に訪ねた。
「なんで、行方不明になった人達がグリー星人に操られていたってわかってたんだ?」
「何で聞くんですか?」
「当たり前だろ!普通解らんぞ。」
「秘密です。」
「は?」
「女の子には解るんですよ!」
誠には理解出来なかった。
「お、お前、俺のことバカにしてるのか?」
誠は顔を真っ赤にして怒鳴ったが、夏美は悪びれた様子もなく、逆に、
「そんなことより、早くお仕事の事、教えて下さいね!でないと、隊長に叱られますよぉ。」
夏美は舌をペロッと出しながらにっこりと笑った。
「こ、この…!」
怒りが込み上げる誠だったが、何故か夏美の笑顔を見ると怒りが鎮まるのだった。
これから、スーパーシャイニーこと伊藤夏美と鎌田誠の話が始まるのだった。