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【かんわきゅうだい】 そのいち

高良たちが去った後、独り残ったバトラーはシチューの下ごしらえを終え、鍋の火を落として一息つく。


「ふぅ……しかし魔王様も分かりませんなぁ。あの女子をどうして許すのか。ケルたちもそう思いませんか?」


テーブル脇のハムスターに同意を求める。

その声の意味が分かったのか分かるまいか、ハムスターたちはガジガジと金網をかじるだけだ。


「ふっふ、そう言ってくれるのは嬉しいですな。私ももっと精進して、魔王様のお役に立ちたいのです。魔王様が世界を統一された暁にはナンバー2の座を射止めるのですよ。そうなれば魔王様の結婚式にはスピーチを任せられるに違いありませ……ん?」


そこでバトラーの思考が止まる。

そして何事か思考を飛ばした後に、とんでもないところに着陸させた。


「まさか、魔王様はあの女子に一目惚れされたのでは!? こ、これは一大事ですぞ! 魔王の横には良い妃がいるのは当然。むむむ、燃えてまいりましたぞ。重臣筆頭の私が、魔王様の恋、見事成就させますぞ!」


勝手に燃えるバトラーに共鳴するように、ハムスターたちがチチチと鳴く。


「ふふ、ケル・ベ・ロスも同意してくれますか。そうだ、こうしてはおれません。結婚するとはいえ、やはりある程度の領地は持っていないと格好がつきません。ここはスーパー参謀のこの私が、手近な魔王城を攻める手立てを考えねば! そのためには情報! 情報が私の武器になるのです!」


意気揚々とパソコンをいじりながら、バトラーは独り言を続ける。


「ふむ、今月の討伐魔王数は5体。ほぅ、3体が例のナンバー1勇者のものですか。さすがは最強と名高いだけある勇者ですな。っと、残り2体は……ほぅ、同じ“勇者候補”が倒しているようで。場所は……」


悪戦苦闘しつつも必死にパソコンを操っていたバトラーだが、その顔が一瞬にして青ざめる。


「討伐された魔王、この近くではありませんか。しかもこちらに近づいている! 討伐された魔王の日付は3日前と昨日! 距離的に言えば十分……」


そこまで考えてバトラーは迷う。

可能性としてあるだけで、確実ではない。

ありえなくはない、というだけで、杞憂で終わってしまう可能性の方が高い。

だが消えないこの胸のざわめき。

それは一度うずいてしまえば、収まることのない不安となる。


確かに高良は、そこらの魔物相手には圧倒的な強さを誇るようになってきた。

わずか3か月でそこまでのレベルに達したのは、本人の才能にもよるところがあるだろう。

だがそれは、この辺の魔物に対してに過ぎない。

言ってしまえばザコ相手に得意になっても、勇者や他の魔王とは比べるまでもなく格下だ。

今まで勇者候補にも襲われず、他の魔王から侵攻も受けずにこれたのは、奇跡と言って良いほどの幸運でしかない。

それにかこつけて、まだ大丈夫だとタカをくくっていたバトラー自身に、落ち度がなかったかと言われればそれは否定できない。

忠誠心、というより己のうかつさ、それが熱となり、バトラーを動かした。


「魔王様っ!!」


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