9.層が厚い生徒会メンバー
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週明けの月曜日――の放課後。
来い言われたさかい、きちんと来たったわけやけど。
生徒会室、無駄にキレイな部屋やな、ロイヤルな感じや――の真ん中で、愛想ナシの椅子の上に座らされてるオレとアキラっち。
机を挟んだ向こう側にゃあ生徒会長の蝶野ミキさんがおって、彼女はにこにこにこにこ笑ってやる。
「やっぱやめます、仲間になんのやめます」オレはけっこうバッサ、断言口調で言うた。
「えっ!」と驚いた声を発したのは会長や。「この状況で断っちゃうの? 不都合も不具合も不利益もないでしょ?」
「いや、そない言うたかて、生徒会とか、やっぱつくづく面倒そうやから」
「うーん、まあ確かに、それはそうかも?」会長が席を立った。「うんうん、わかるぞよ」とか芝居がかった物言いしながら部屋ん中ぁ練り歩く。「しかしだな若人よ、高校生を二度はやれないのだよ?」
一つ違うだけやのに若人かとか思いながら、「それ、法律で決まってるんですか?」とか訊いた。
「そういうことを言っているんじゃないのぉ、心の問題なのぉ、ココロのっ」
「はぁ、まあ、なるほど」
なんや、呆れるしかなかった。
リアルに疲れてくるな。
「ひょっとして、成分が足りない? オ・ン・ナ、の」
「ああ、はい、もう、いや、はい、そないなもん、気にしたことないですけど」
「んもうっ、かわいくないなぁ!」会長は腰に手を当て前のめりに文句を言うように迫ってくる。「我が軍門にくだればいい思いができるんだってば!!」
「何をするにも軍門は嫌です。その単語が嫌や。物騒やさかい」
「んもうっ、んんんんもうっ!!」とかなんとか悔しげな会長はまさに地団太踏みながら――。「ハーレムだよ!? 今ならハーレムなんだよ?!」
「そうかもしれませんけど、って、いや訂正、そこにきっちり男子が一人いますし」
オレは無作法を承知で「その男子」を指差した。オレに負けへんくらいえっらい細くてえっらい色白で染め抜いてるんやろう、オレンジ色の鬼太郎ヘアしたなんとも不健康そうなその男子は「僕のことは気にしないでいいよ」と事も無げに言うた。「僕、いるだけだから。奉仕の精神くらいは持ち合わせているんだけれどね」とか激しく冷静に小難しいことをのたまってみせやった。「僕の名前はアスカイという」――飛鳥井さんか? この際、お名前はなんやかてええわ。にしてもそのセリフ、期せずして「ブギーポッ〇」思い出したな。あの「飛鳥井さん」は素敵やった。彼に比べるとこっちの飛鳥井くんはカリスマ性が足りへんな、果てしなく。
「あらためてのたまいます。飛鳥井くんがおるんやったら、ハーレムやないでしょう?」
「犀川くん、細かいね、きみは。しからば、我が生徒会の最終兵器を紹介してしんぜようぞ」
「最終兵器?」
いきなりなんや――と思いつつ、次に気ぃついたときには会長の隣にめっちゃデカい、たぶん女性や――がいきなり現れたみたいにして立ってた、アッシュグレーのロングヘアの女が腕組みして立ってた。胸はデカいんやけど色っぽいデカさやなくてめっちゃ硬質な筋肉質な感じで、全身から匂い立つオーラは格闘技の達人のそれや。スカートから覗くふくらはぎがバキバキすぎて怖い。肩かてメロンなんや。
「シシドウ・ネモちゃんと言います、平伏せよ!」
平伏はせんけど、シシドウ? 獅子堂か?
ネモちゃんてのはかわいいけど、獅子堂は恐怖を掻き立てる名前でしかないな。
「ねぇね、犀川くん」
「なんでしょうか、会長殿」
「ネモちゃんに勝ったら、出てっていいぉ?」
「腕力の話ですか?」
「そ」
「せやったらぁ……」
やめとこうおもた。
勝つ勝たへんの話やない。
どうあれそないな真似はしたくないってことや。
「わこたよ、会長。あんたに尽くしたろうやないか」と、潔くオレは応えた。
「えっ!」声を上げたのは左隣のアキラさんや。「尽くすとかっ?! イクミっ、馬鹿かおまえは、本気か?! 正気か?!」
まあ、わかる、ぎゃんぎゃん言うてくれるおまえんことはわかるぞ、アキラ。
せやけど、今は許してくれ、とりあえず、ネモちゃん――もとい、ネモさんのデカい手でほっぺたぶたれるのは嫌なんやわ。
「余は満足したぞよ」とか、やっぱキャラが独特な会長。「必要なときに召喚します。勝手に来るぶんにはどうぞどうぞ。役割については追々与えようぞ」
「やってさ、アキラ、聞いてたか?」
アキラは敵対心たっぷりに飛鳥井くん、ネモさん、会長のことを順番に見てから、オレのほうをむいた。
ふふっ、ふんだってんだ!! ――と、謎な感じに強がってみせやった。
「い、いいぞ、あたしは、やってやる。多少小遣いが目減りしようが、あたしはやってやるぞ!」
小遣いが減る――家業の弁当屋の給仕の時間の減少は減給に繋がるが――っちゅうわけなんやろう。
なんやようわからんながらも強固らしい決意やけど、生徒会、がんばってやろうっちゅうことらしい。
「えっと」オレはそろそろ話の整理を企てる。「当該コミュニティーは、会長、それとネモさんと飛鳥井くん――ってことで合ってますかぁ?」
「ううん、じつはもう一人いるの。だから、きみにとってはハーレムだって――」
ほぅ、もう一人オナゴが。
しかしや会長、すっかり身持ちがかたくなりつつあるオレは簡単に興味ひかれたりはせーへんぞ。
「こんちゃーす!!」
そんな元気な声で登場なすったかと思うと、「あ、ほら、おいでなすった」と会長はにっこり笑って――。
やってきたのは小柄な女やった、肩までの髪はひらひらで桃色、瞳は紅茶色、どっちの色もほのかなもんでキレイや。
作る表情はいちいち幼げで、せやからこそ途方もないかわいげっちゅうもんがある。
「およおよよ、会長、この方々が新人さんというわけなのですね?」
「そうだよ、メメちゃん、期待のルーキーなのだ」
桃色髪の小さめ女子は「メメちゃん」いうらしい。
識別子なんて一意であればそれでええ、せやさかい彼女はユニークなメメちゃんや。
メメちゃんが「よろしくです」と右手差し出してきたさかい、オレはすんなり応えたった。
「犀川イクミやよ。こちらこそ、以後、よろしゅう」
次にメメちゃんはてっきりアキラとも握手するもんやっておもてたんやけど、スルーしやった。
アキラは不満そうにほっぺた膨らましやった――でもあえてやぞ、からかわれてんねんぞ、真に受けへん程度の器くらいは持とうや。
「ご覧の通り、メメちゃんってば見た目はギャルなんだけど、中身は体育会系なのだ」
「およよよよ会長、それは言いっこナシッスよ」
「およよよよ?」
「およよのおよよよよッス」
およよのおよよよよ。
ったく、いったい、なんの祭りや?
「にしてもや、会長」
「うむ、何かね、犀川くん」
「イクミでいいですよ」
「だったら何かな、イクミくん」
「転校生、アルビノ、美少女ハーレムに生徒会――オレが知りうる限りのステレオタイプが集まりすぎてもはやおなかいっぱいです」
「あとは金髪碧眼にオッドアイでもいれば?」
「ええ、腹ぁはちきれます」
メタの認知とメタ的発言は感心しませんっ。
語尾跳ねで、会長は言い切った。
「いや、そない知ったふうな口利かれても」
「ま、がんばろうよ。ネモちゃんを物にできればマジ尊敬」
せやさかい、現状、その尊敬はノーサンキューや。
見てくださいッス、見てくださいッス。
ふいにそないな悪戯っぽい声がしたさかい、隣向いた。
「うはぁっ、サラシでも巻いてるんスか。でもぜんぜん隠せてないッスよ、これ。上物ッスよ、じつは超の付く爆乳ッスよ、あはははははははっ」
なんや大爆笑しながらメメちゃんがアキラの双丘を左右の人差し指つこてぷにぷにぷにぷに連打してやる。
辱めに耐えるようにしてアキラはぎゅっと目を閉じ下を向いて、ぷるぷるぷるぷる身体を震わせてた。
ええ現象や、ホンマにええ感じやな。




