百合子の回想_幼少期1(百合子視点)
清一さんと初めてお会いしたのは、私が数え年で十三歳、彼が十一歳の頃でした。
清一さんは災害でご両親を亡くされ、天涯孤独となったところを、清一さんのお父様と古くから知り合いであった私の父が引き取ったのでした。
初めてお会いした清一さんは、なんというか……まるで絵本の中から出てきたような美男子だったのです。
すっと通った鼻筋に、潤んだ瞳、白い肌、薄くて可愛らしい唇、華奢な身体、さらさらとした艶のある髪……。
なんとも儚げで、あまりの美しさに私は目を奪われてしまったのでした。
「はじめまして、早川百合子といいます」
私が挨拶をすると、清一さんは目を丸くしたまま、私の父の影に隠れてしまいました。
「可哀想な子なんだ、仲良くしておあげなさい、百合子」
「はい、お父さん」
私は返事をし、清一さんの手を取りました。
「こっちにいらっしゃい。お部屋に案内するわ」
清一さんは何も言わず、私の説明をただ俯いて聞いているだけでした。
そのうち、同じ学校に通うようになりました。校内でたまに見かけるけれど、清一さんがお友達と打ち解けている様子は見られませんでした。
その姿はいつも寂しそうで、ある日急にふらっと消えてしまいそうな、そんな雰囲気を醸し出していました。
私はそれがとても恐ろしくて、何度も清一さんに話しかけては、この世から消えてしまわないようにと引き止めているつもりでおりました。
そうして関わっていると、ある日清一さんは、消え入りそうな声で言ったのです。
「もう僕に関わらないでください。あなたといると、僕は惨めになるんです」
それ以来、私は清一さんに話しかけるのを躊躇うようになりました。
遠くから覗いては、生きている彼を見て少しほっとする、そんな関係が続きました。