表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/117

百合子の回想_幼少期1(百合子視点)

 清一さんと初めてお会いしたのは、私が数え年で十三歳、彼が十一歳の頃でした。

 清一さんは災害でご両親を亡くされ、天涯孤独となったところを、清一さんのお父様と古くから知り合いであった私の父が引き取ったのでした。


 初めてお会いした清一さんは、なんというか……まるで絵本の中から出てきたような美男子(びなんし)だったのです。

 すっと通った鼻筋に、潤んだ瞳、白い肌、薄くて可愛らしい唇、華奢な身体、さらさらとした艶のある髪……。

 なんとも儚げで、あまりの美しさに私は目を奪われてしまったのでした。


「はじめまして、早川百合子といいます」

 私が挨拶をすると、清一さんは目を丸くしたまま、私の父の影に隠れてしまいました。


「可哀想な子なんだ、仲良くしておあげなさい、百合子」

「はい、お父さん」


 私は返事をし、清一さんの手を取りました。

「こっちにいらっしゃい。お部屋に案内するわ」

 清一さんは何も言わず、私の説明をただ俯いて聞いているだけでした。



 そのうち、同じ学校に通うようになりました。校内でたまに見かけるけれど、清一さんがお友達と打ち解けている様子は見られませんでした。

 その姿はいつも寂しそうで、ある日急にふらっと消えてしまいそうな、そんな雰囲気を醸し出していました。


 私はそれがとても恐ろしくて、何度も清一さんに話しかけては、この世から消えてしまわないようにと引き止めているつもりでおりました。


 そうして関わっていると、ある日清一さんは、消え入りそうな声で言ったのです。


「もう僕に関わらないでください。あなたといると、僕は惨めになるんです」


 それ以来、私は清一さんに話しかけるのを躊躇うようになりました。

 遠くから覗いては、生きている彼を見て少しほっとする、そんな関係が続きました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ