双蓮の誓い
夜明けを拒む街《永夜街》。
そこに咲く蓮の花は、決して枯れないかわりに、人の心を少しずつ奪っていく——。
双子の姉妹、ルナとセラは、その蓮から生まれた。
姉のルナは人の温もりを集め、心を燃やすことができる。
妹のセラは人の冷たさを集め、心を凍らせることができる。
二人は生まれながらにして「対」となり、互いの力が均衡を保つことで街の命は循環していた。
しかし、ある晩、均衡が崩れる。
街の中心にある「赤い蓮」が突然枯れはじめ、人々は夢から覚めないまま眠り続けるようになったのだ。
ルナは人々を目覚めさせようとするが、セラは「夢の中の方が幸福だ」と言って立ちはだかる。
ルナ:「セラ、それは偽りの幸福よ。みんなの心を返して」
セラ:「じゃああなたは、現実の痛みを彼らに押しつけるの?」
二人は互いを傷つけぬよう戦い、蓮の花びらが舞い散る中、力を削り合う。
だが、最後にルナは気づく。——枯れた赤い蓮は、二人のどちらかが消えなければ蘇らないことを。
静かに微笑んだセラは、自らの存在を蓮に還した。
その瞬間、街は再び目覚め、夜明けが訪れる。
残されたルナは妹の花を胸に抱き、誓った。
——「また蓮が咲くとき、必ず迎えに行く」と。
永夜街の片隅、夜にだけ咲く翡翠色の蓮が、静かに揺れていた。