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私のことは諦めて

私達は朝の約束通り昼休みは生徒会室に来た、ここなら他の生徒達に聞かれる事はない。

生徒会副会長である桐山陽子きりやまようこは自分の椅子に座るなり口を開いた。


「で、春夏はるか、話しって何?」


「陽子って私のお兄ぃの事知ってるでしょ」


「ええ、文化祭のパンフレットを春夏のお兄様に作ってもらってますもの、明日も学校帰りにお兄様の会社に寄ろうと思ってたのよね」


「だよね~」


がっくし、改めて突きつけられる現実に、膝から崩れ落ちる。

私の態度に陽子が首を傾げる。


「何、お兄様になんかあったの!病気!だったらすぐにお見舞い行かなきゃ!!早退する?」


陽子がガタリと立ち上がって私に詰め寄って来る。


「ちょっと待て!落ち着いて、病気は病気だけど命に別状はないから」



凄い剣幕で詰め寄る陽子を引き剥がすと、深呼吸をする。



「ちゃんと説明しなさいよ」



陽子から文化祭のパンフレットのデザインで相談を受けた時に、それならとお兄ぃのデザイン会社を紹介した。

それがきっかけで、陽子はよりにも寄ってお兄ぃの事好きになっちゃったらしい、これは思わぬ誤算だった。

確かに兄の顔は悪くないが馬鹿だぞアレ、陽子趣味悪いな、男は内面が大事なんだぞ。

ま、兄を知ってる以上はちゃんと話ておかないとね。


「実は昨日、兄は居なくなったの」


「え、失踪?」


「いや、家に居るには居るんだけど、兄ではなくなった」


「は?どう言う事よ」


陽子の目が鋭く私を睨む、落ち着けよ、こっちもどう話したらいいか悩んでいるんだから。


「信じられないかもしれないけど、とりあえず聞いてね。たぶん陽子は知らないかもしれないけど、実はこの世界にはTS病と言う政府も公認の難病指定された病があるの」


「えっ、TS病!!」


「ん、陽子、知ってるの?」


「前にムーで読んだことがある、一夜で性別が変わる奇病……まさか本当に!」


あぁ~~~~!!ムーには載ってるのかよ、ゴシップオカルト雑誌じゃねえか!そう言えば陽子いつも定期購読してここで読んでたわ~。

でもTS病を知っているなら話が早い。

そう思っていると、陽子が真剣な顔をして私の肩を掴んで来る。


ガシィ


「今日、春夏の家に行く!!お兄様、いやお姉さまに会いたい!!」


「えぇ~!!」


いきなり陽子に手まで握られ、宣言される。私としては女になっちまった兄への想いは諦めてと、説得しようと考えていたのだが、この展開は考えてなかった~。








そんなこんなで、あっという間に放課後。


「で、なんであんたまでついて来てるのよ」


私の隣で歩いている竜太を睨む。


「え、良いじゃん、俺もお兄さんの事は昨日から気になってたし」


「何、竜太はお姉さまにもう会ったの、どう、綺麗だった!」


「おう、凄え綺麗だった!もう、こう、ボイ…」


「黙れ竜太」


やばい、ちょっと私の彼氏にバカである疑惑が出てきた。


放課後、陽子に懇願された私は結局は断りきれず、なぜか彼氏である竜太と3人で帰路についている。

そう言えば、お兄ぃの奴、会社大丈夫だったかな、首になってなければいいが。


マンションの前、駐車場に兄の白い車が停まってるのが見えた。


「あ、車がある。もう帰って来てる」



ガチャ


「ただいま~、お兄ぃ、会社どうだったぁ!」


カチャ


「おう、春夏お帰り!」


「「「…………」」」


ちょうど風呂場から出てきたお兄ぃは上半身裸で首からタオルをかけ、下半身はパンティ一丁のアラレもない姿をしてやがった。

玄関で固まる私達、竜太は静かに鼻血を流し、陽子はアワアワと口をパクパクさせている。


いや、今日は結構暑かったし家に帰ったらすぐにシャワーを浴びたいのもわかる、それに普段からトランクス一丁で部屋をウロウロしてるのは知っている、もう何度も注意してるからだ。

でもね、今は女でしょ、その格好で家の中ウロウロするのは痴女と言われてもしょうがないぞ。


「あれ、竜太君、今日も来たんだ、こんばんわ。それに陽子ちゃんも?」


「挨拶はいいから、服を着ろ、服を!」


「あ、いけね」


いや~ん、まいっちんぐ~じゃねえよ、何だよそれ。馬鹿だなほんと。







さて、仕切り直しといこうか。


「大変お見苦しい姿をお見せしました!」


ドンキーで買ったライムグリーンのブラ一体型のキャミソールに短パンに着替えた兄が私たちに頭を下げる、いや、私が下げさせた。

まだ露出は多いが着るものが少ない今、良しとしよう。


「いえ、お見苦しいどころか結構なものを拝見させて頂きました、ウエストくびれてて、脚も長く、生おっぱ……あ、また鼻血が」


「お兄様はお姉様になってもカッコよくて綺麗です!」


あれ?なんだよこの2人の反応、私がどこか間違ってる?





「春夏からご病気の事は聞きました、大変でしたねお姉様!」


「そうなんだよ陽子ちゃん、俺も昼寝して起きたらこんな姿になっちゃててビックリだよ」


で、陽子。貴女はなんでそんな普通にこの兄と喋れるの?竜太だってもうちょっとびっくりしてたよ。


「でも、女になってもお兄様は凄く綺麗なお姉様で安心しました!」


「サンキュ、あぁ、会社で丸ちゃん先輩にも同じような事言われたよ」


「チッ、あのレズビアンめ」


陽子の態度と言葉に竜太が反応する。


「えっ、お兄さんの会社にそんな人が居るんすか?」


陽子が舌打ちしながら竜太の言葉に答える。


「居るのよガチなのが、私いやらしい目で見られたもの。いままではお兄様だから安全だと思ってたけど今のお姉様の姿だととっても危険だわ」


この言葉に兄も反応する。


「え、陽子ちゃんも知ってるって事は丸ちゃん先輩って本当にレズなんだ。藤崎の言う通りか~」


私はこの会話を聞いて、そうなの?丸山さん凄い真面目で優しかったけど、そんな一面があったの!

人は見かけにはよらないな、そう言えば良く触ってくるなぁとは思ったけど。

え、でも陽子って男の兄が好きなんじゃ、あれ?




でも、今はこっちの確認が先ね。


「じゃあ、会社には上手く説明出来たのね」


「おうよ、バッチリ!」


兄が私に向かって親指を立ててドヤ顔をする。


「良かった~理解ある会社で、最悪クビになるかもと思ってたから」


ちょっとホッとした、これで一つ心配事が減った、収入が無くなるのは家計に響く。





「そう言えば陽子って、お兄ぃがこんなんになっててもいいの?」


私はキャミソール&短パン姿であぐらをかいて座ってる兄を指差す。

足広げてんじゃねぇよ、竜太が凝視してるだろ。


「は?私は人間としてのお兄様推しだから性別は男でも女でもどっちでも良いのよ、むしろ同性の方がスキンシップがしやすくて嬉しいわ」


「推し?」


陽子が大きく頷く、推しってそう言う物だっけ?

推し活って奥が深いなぁ。











「そうだ、陽子ちゃん頼まれてた文化祭のパンフレット、デザイン組み上がってるよ、見る?」


「見ます!もう出来たんですか、流石お姉様お仕事が早いですね」


「ふっふっふ、まあね」


ドヤ顔の兄は自分の部屋からノートPCを持って来て電源を入れる。

表示された画面を3人で顔を寄せて覗き込む。


「おぉ!凄えかっちょ良い」


「すごく見やすくて分かりやすいです」


「へえ、やるじゃんお兄ぃ」



学園祭のパンフレットらしく楽しげなレイアウトで情報がわかりやすい、学生レベルじゃこうは上手くまとめられない出来だ、流石プロだなと素直に感心する。

画面を見ながら陽子は兄に修正点を言いながら、その場で兄がノートPCを使って修正して行く、へぇ、そんなに簡単に直せるんだ。


タタンッ、兄がキーボードを叩く、どうやら修正は終わったようだ、でも陽子そんなにくっつかなくてもいいんじゃない、兄も作業がやりづらそうだよ。


「陽子ちゃんに一度見てもらって良かった。それじゃあPDFで学校のアドレスに送っておくから、生徒会長さんと顧問の先生にも確認してもらって良いかな」


「わかりました、明日絶対に確認させます♡」


「あ、いけね。もうこんな時間か、春夏、陽子ちゃんを家まで送ってくるわ」


窓の外を見ればもう陽が落ちかけている。


「お兄さん、俺は?」


「悪りぃ竜太くん、俺の車2人乗りなんだ」


「竜太は近くなんだから歩いて帰れるでしょ」



「お姉様とドライブデートだわ!!」





ヴァボボ


「それじゃ、ちょっと行って来る」



薄暗くなった街並みに消えて行く兄の車、本当に陽子の奴嬉しそうだったな。

で、竜太は何落ち込んでんのよ?


「俺も綺麗なおね、お兄さんとドライブしたかった」


「あんた、彼女を前にしてそういう事言う?」


私は一応は彼氏である竜太をジト目で睨む。




「あ、そう言えばお兄ぃの奴、化粧落としてスッピンのくせに綺麗だったな、おのれ~女体初心者のくせに生意気な!」

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