開幕
トゥルルルル、カチャ
「はい、スタジオエムです」
「あ、UTUMIちゃん!ようこおばちゃんだよ、見たよYouTube、やだな〜、あんなに色々歌えるんなら最初に言ってくれないと〜、アイディア湧き出て困っちゃうよ。それで今度の曲はソウルフルなのとジャズバラードどっちが良い?春アニメで1曲頼まれてるんだけど迷っちゃてさぁ」
会社の電話に出てみれば菅野よう子さんからだった、相変わらず元気なおばちゃんだなぁ。
「は、はぁ。何故、その相談を私にするんです」
知らないよ春アニメなんか、仕事だったら中山さん通せよ。
「え、だってまた演ろうって約束したじゃん、紅白はHOTOMIさんの曲だって言うから私は我慢したのよ」
「社交辞令って知ってます?私今、年末の仕事が忙しいんですよ」
「もう、我が儘だなぁ、しょうがない、じゃあデモ作って送るからちゃんと聴いといてね」プチ
「……………」
「お〜い、内海、このデータ印刷に回しちゃって良いのか」
「あ、あぁ、お願い藤崎」
うん、俺は真面目に仕事しよ、人間最後は真面目に生きてる奴が勝つんだ。
まったく、ようこさんの曲は紅白のトリで福山さんと演るでしょうが、才能ある人ってのはどいつもこいつも自己中なんだから。
あ、やべえ、夏元さんに頼まれたイラスト仕上げないと印刷間に合わねぇ!
そんなこんなであっという間に、12月31日水曜日
ヒュ〜
「ウヒィ、寒っ!」
地獄の年末進行のお仕事が終わり、最後のデータを印刷所に送り終えた俺は眠い目を擦りながら東京駅に降り立った。(年明けすぐに印刷するデータに修正が入ったのだ)マジでもう休みたい、新幹線は寝心地良かったのが救いだった。
しかし、今の日本は暑いか寒いかしかないん?ちょうどいい気温とかないんかい!まぁ、長野よりはマシなんだが今日は服装が薄着なんだよな、東京は風がちべたい、めっちゃ寒いわ。
うん、駅員くん毎度お出迎えご苦労、あ、鞄持ってくれるの、今日はギター2本だから重いよ、ありがとうね。
タクシーに乗り込み目指すのは国営放送ホール、今夜のライブ会場だ。
国営放送ホールに到着すれば、中山さんが玄関先で出迎えてくれる、あれ、夏元さんまでどったの?
「おせえよ、前日入りぐらいしろ。こっちは色々打ち合わせがあるんだよ」
そうか俺トップバッターだしプロデューサーとしては言っとかなきゃいけない注意事項も多いだろうな。前回のリハは欠席しちゃってるしな。
「他のメンバーの方々はもう、楽屋入りしてますよ」
「え、マジで。だって番組始まるの夜じゃん、まだ昼前だよ」
ガチャ
「おっ、忘れずに来たな、偉い偉い♪」
夏元Pに小言と愚痴を聞かされ、楽屋に行けばジャーさんがギター弄ってた、失礼だな、あれだけ春夏に念を押されれば俺だってちゃんと来ますよ。
ボッボボン
「HOTOMIさん、エフェクターこれで良いですか?」
「ん、ベースは光ちゃんの好きにして良いよ」
HOTOMIさんと光さんが俺に気づかず打ち合わせしてたので声をかける、光さん今日も可愛い。
「ちぃ〜す、UTUMI参上です!」
「「あ、ちゃんと来た」」
こいつら〜、さぼりゃ良かったかな。あれ?ドラムの神保さんは?
「あぁ、神保さんはまだ来てないよ、私達は待ちきれなくて早く来ちゃっただけだから」
「なんだ〜全然遅刻してないじゃないですか、私、夏元Pに遅い!前日入りしろって言われたんですけど」
「「まぁ、UTUMIはなぁ〜」」
何その俺が問題児みたいな表現は?こんな真面目でまともな人間なのに。
「じゃあ、UTUMIもちゃんと来たし、神保が来たら音合わせでもしとくか」
2025年紅白歌合戦
19時20分、番組の始まりを告げるファンファーレと共にステージに飛び出す20人の少女達。
ステージの左右に並ぶのはakbと椿坂の選抜メンバーだ、予想外の演出に観客がざわめく。
あれ?トップはUTUMIじゃないの?
オープニングアクトにakbと椿坂を使うのか!なんつー勿体ない使い方!
えっ、今年って乃木坂以外は落選してたんじゃ。
akbはこの前追加発表あったぞ、OBメインでやるらしいけど。
司会の綾瀬はるかと有吉がステージ中央に現れるとマイクを持った。
「さぁ、2025年紅白歌合戦、開幕です!!、オープニングダンスはakbと椿坂の選抜メンバーの皆さんです!」
20人の完璧に揃ったキレキレのダンスパフォーマンスが始まった、その間にアナウンスと共に出演者がステージに登場してくる。
♪
凄ぇ、完璧じゃん!いつもよりダンスのキレ良くねぇ、K-POPにも全然負けてねぇよ。
違う2グループ合同なのに息ピッタリ、カッコいい。
ステージ上で乃木坂のメンバーがダンスを踊る選抜メンバーを見て心の中で叫ぶ。
「ちょっとぉ、アイツらどんだけ気合い入れてるのよ、私達の時はどうすんの!見劣りしちゃうじゃない!」
♪
ダンス中の椿坂の松田由莉奈とakbの山口結衣の目があう。
「フフ、40人ですら動きを合わせて踊れるグループなのよ、選抜された10人でなんか簡単すぎるわ、ねぇ松田!」
「ふん、負けないわよ、私の方が会場を沸かせて見せる!」
二人は夏元に言われた言葉を思い出す、「お前達の役目はオープニングで出来るだけの視聴率を稼ぐことだ、日本全国のお茶の間でチャンネルを紅白に変える時間を稼ぐ、その為の選抜メンバーだ、日本中が注目してる、気合い入れていけ!」
アイドルなんぞ注目されてナンボの世界、こんな美味しいポジション完璧にやり切ってみせると、二人のテンションは最高潮に達する。
オープニング、会場はまだ温まっていないがその場を盛り上げる重要な役目だ、これでトップバッターのUTUMIは会場が盛り上がった状態で演奏を始めることが出来る。
ウワァーーーーーーッ!!
開始10分、会場が十分温まった状態、今視聴率を調べたらきっとグングンとパーセンテージが跳ね上がっている最中だろう。
「「「ありがとうございました!!」」」
ダンスメンバーが一斉に頭を下げ挨拶すると再び綾瀬がマイクを持った。
「凄かったですね〜、akbと椿坂の選抜メンバーの皆さん、素敵な応援ダンスを紅組の為にありがとうございました、それでは紅組のトップバッター!UTUMIさんに歌ってもらいましょう!!」
「「「うおぉーーーーーーっ!!」」」
今日の役目を終えた松田達が舞台裏に下がる、反対にステージに向かうUTUMIお姉様が私達の横を通り過ぎる瞬間に目が合うとニコリと微笑まれた、思わず笑みが溢れる。
「会場は盛り上げときました、後はUTUMIお姉様におまかせします、思う存分やっちゃってください!」
ダンスを終えた椿坂とakbの選抜メンバー達とすれ違いざま次々ハイタッチして行くUTUMI、その仲良さげな光景に歓声がさらに大きくなる。
夏元がステージ裏でニヤリと笑った。
ウワァーーーーーーッ!!
「松田ちゃん達が会場を盛り上げてくれたせいで凄くやり易い、これに応えなきゃ男じゃないよね」
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次話は12月23日に出来れば良いな。




