準備
ドパラッパ!ズドンドンドン!ドン!
「うわ、やっぱ神保さんのドラム凄ぉ」
ベキャベキョベキョベキョ
正確なリズムを刻むドラムの音に、スラップでベースの音を重ねて行く。
LaLaLa~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪
ジャーーガッガガ!
クッ、この娘のギターどんどん凄くなる、この私が思わずバッキングに徹しようとしてしまった。
にしてもマイクも無しに、この音に全然負けない生声は反則でしょ、どんな喉してるのよ、この化け物。
ジャーーガッガガ!!ジャーーガッガガ!!
勘弁してよぉ〜、UTUMIにプラスしてM-HOTOMIとジャーさんまでぇ!!
「くぅ〜〜っ、私のベースが負けるぅ!じ、神保さんは私の味方よねぇ!見捨てないでぇ」
カシュ、ゴクゴクゴク
くあぁ、ビール美味え!やっぱ演奏後はこれだよね。あれ、皆んな飲まないの?冷蔵庫にいっぱい入ってるよ。
「UTUMI、もっと感情込めろよ、お前のギターは上手いけど切ない感情がこもってないんだよ、楽しそうに弾くな!」
「すんません」
「ハハ、しょうがないよHOTOMI、俺だって凄え楽しいもん、最後ニヤケちまった」
HOTOMIさんの言う通り、ギターは同じメロディを弾いても人によって個性が出る、この曲はブルージーでR&Bを感じさせる曲だから、今のUTUMIのギターは弾けちゃって楽しい感じが出過ぎだ。
でも、ジャーさんの言う通り、私も楽しくてしょうがない、神保さんも苦笑いしてるし。
紅白用に結成されたグループ、レッド&ホワイト(仮)。
今日は3回目の音合わせをHOTOMIさんのスタジオで行っている。
ドラムはフュージョン界では有名な神保さん、ベーシストに私、山本光。ギターは豪華に3枚、M-HOTOMIとジャーさんとUTUMI。ボーカルは当然UTUMIだ。
ツインギターでも合わせるのが珍しいのに3枚って、でもそこは流石に世界で活躍するギタリストの2人完璧に合わせて来やがる、カッコ良くてたまらん。負けるかこなくそ。
3回目の音合わせとは言え、毎回アレンジ変えるので正直ついていくのがキツい、でもそれ以上に曲がどんどん良くなっていくのがわかるのでめっちゃ楽しいのだ。
「それにしても、UTUMIの金髪ショートにも違和感なくなったね」
「そろそろ光さんみたいなピンクにしようと思うんですけど、どうです?」
「やめてキャラがかぶる、UTUMIみたいに綺麗なのと比べられたらへこむ、絶対に隣に並ばない」
「えぇ、光さん可愛いじゃないですか」
「あんたの方が100倍可愛いよ!」
「「「ハハハハハ」」」
「コラおっさんども、笑うな!」
「さてと、再開しますか」
「へ、まだ演るんですか?」
「後、2・3試してみたいフレーズがあるんだよ」
「え〜、またアレンジですかぁ」
M-HOTOMIさんが立ち上がってギターを構える、神保さんもジャーさんも文句を言う事なく自分の楽器に向かう。
私とUTUMIは二人で見つめ合って、うぇ〜と言う表情を作った、元気過ぎるぞおっさんども。
「う〜ん、やっぱりホットパンツよりはワンピースよね、ハイウエストで絞って太ももがチラチラ見えるようにスリット入れて、そうなると網タイツとヒールね、けど下品にならないようにしなくちゃ、合わせるジャケットはトーンを変えて……」
秋江がスケッチブックを前にブツブツ言いながら、カリカリとデザインスケッチを描いている。
相変わらず絵が上手い、あの子がデザインの道に進んだのも秋江の影響があるかもしれないな。
「でも、あの胸と脚はしっかりと主張したい!あぁ、悩むわ〜」
夕飯時、気持ちここにあらずの秋江を前に、美味しそうに湯気を上げるテーブルを見る。
「なぁ、母さん。今日の夕飯もカップヌードルかな、俺先月の検診で医者に塩分の取り過ぎに注意するように言われたんだが」
「大丈夫、血圧だったら冷蔵庫に胡麻麦茶買ってあるから、ちゃんと飲んでね」
「栄養バランス悪くないかなぁ」
「あぁ、カロリーメイトも買ってあるわよ、身体を壊しちゃ元も子もないから食べてね」
「はい」
ズルル
「最近の食生活で何故か2kg痩せた、血圧も安定している。あれ?おかしい、前はあれだけ気を使って、太る一方だったのに、最近のカップ麺はバランスがいいのか?」(あくまでも個人の感想です)
「良し!明日はどん兵衛の天ぷらそばにしよう!」
「天ぷらは半分にしておきなさいね」
「は〜い」
何事もバランスって難しいよね。
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50話、10卍を超えたので10月はこれで一旦休みます、続きは11月に入ってから再開します。(11月4日予定)




