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君の名は

「丸山ちゃ~ん、今日は内海は会社来んのぉ~」


「どうでしょう、妹さんの話だと昨日お医者さんには行ったみたいですけど」


「珍しいよな、あいつが体調崩すなんて、元気なだけが取り柄のくせに」


「もう藤崎君わぁ~、すぐそうやって憎まれ口叩くんだから、私は内海君のデザイン好きですよ、クライアントの評判も良いし。そうだ、一応は今日お休みになっても仕事の引き継ぎ出来るように資料に目を通しておいてくれます」


「えぇ~!」



ヴァボボボボ


「あ、この車の音、内海君の……良かった来たみたいね」



ガチャ


「どうも~、昨日はご心配おかけしました!!」



「「はぁ?誰ぇ!!」」








事務所の会議室で社員3人で集まる、そして昨日医者に行って来た事と世の中にはそう言う珍しい病気があるのだと一生懸命説明した。

いい加減このパターン飽きたな。


「はぁ、そんな病気聞いたことねぇぞ、マジか!」


藤崎が俺の説明にまだ納得いかないのか、顔に手をあてて天井を見上げる。

こいつ藤崎 じゅんは学生時代からの腐れ縁なのだがちょっと頭が固いのだ、先輩で社長の丸ちゃん先輩は説明の間も今もずっと目を丸くしている。

やっぱり、昨日まで男だったやつがいきなり女になって会社にやって来たら、信じられない物なのかね。

やばいかな、性別詐称とか言って、いきなりクビにはなんないよな。


「本当なんだって、ほらこれ、お医者さんの証明書」


藤崎の奴が証明書を俺から奪ってまじまじ見ると、自分のPCで検索をかける。

フッ、現代人はすぐネットに頼っちゃうよな、春夏もそうだったし。


「……信じらんねけど、本物だ。え、なんでこんな凄い病気の知名度がこんなに低いの、俺まさかラノベの世界に転移してる?」


藤崎がなんかショックを受けてる、わかる、わかるよ〜。


「な!俺もそう思った!」


自分の頬をつねる藤崎はほっといて、さっきから黙って俯いている丸ちゃん先輩に話しかける。


「で、丸ちゃん先輩、俺、会社クビにならない?」




「……綺麗」


「ん」


「内海君、凄く凄く綺麗です!めっちゃタイプです!うわぁ~、どうしよう、どうしましょ、とりあえず写真撮っていい?」



「あれ?」


再起動したかと思えば、バタバタとロッカーにデジカメを取りに行く丸ちゃん先輩を見送る。

おいおい、携帯じゃなくて1眼レフかよ、本気だな。



丸ちゃん先輩の突然の奇行に呆然としていると藤崎に肩をポンと叩かれる。


「丸ちゃん、レズっ気あるから気をつけろよ」


「マジで!!俺が女になった事よりビックリだわ!」






デザインスタジオ エム

丸山先輩と藤崎、そして俺の社員3人でやっているグラフィックメインの小さな広告デザイン会社だ。大学で一つ上の先輩だった丸ちゃん先輩が卒業後デザイン事務所を一人で立ち上げ、それに便乗するように翌年同じ商業デザインのサークルで後輩だった俺と藤崎が揃って入社した。

コロナ禍を経て企業の広告費が軒並み削られてる厳しい昨今だが、さいわいにしてうちのデザイン事務所は色々な会社からお仕事を頂いて、ちゃんとご飯を食べて行けている。web広告に移行する企業も増えて来ているが、うちは紙媒体の広告メインでやっている、やはり観光地では手に取れるパンフレットの需要はバカに出来ないのだ。

丸ちゃんのデザインは女性なのにかっこいいと評判なんだよな。



「で、実際どうしようか、内海君のクライアントには説明しないといけないよね」


「でも、わかってくれるか、新人として引き継いだ方が問題なくね」


「じゃあ、俺に姉ちゃん居た事にでもする?双子の弟が入院でもしたって事で」


「「それだ(です)!!」」


お役所の書類関係は政府発行の証明書があるから良いとして、クライアントにはその設定で行く事になった。全然似てないけど双子設定でいいのか?

ところで丸ちゃん先輩、そんなにくっつかなくても話せるので離れてください、鼻息荒いですよ。


「え~!これは先輩と後輩の正しいスキンシップの形です、慣れてください!」フンス


「えぇ~」



こら、藤崎なんとかしろよ、お前も丸ちゃんの後輩だろ、アイコンタクト必死に訴える。


「いや、俺は元が内海ってだけで遠慮する、パス」


「は、何言ってんのお前、どう言う意味だよ」


藤崎と言い合っていると丸山先輩が、俺の腕にギュッと抱きついて来た。


「じゃあ、内海君は私の物って事で!!」ハァハァ


あの真面目で優しかった丸山先輩がぶっ壊れた。


「丸山ちゃん、お似合いだよ!」


「そ、そんな〜」テレ


うるせぇよ藤崎!

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