ライブ
スタジオエム、この日は陽子が事務所にお茶汲み(雑用)に来ていた、働かないと追い返されるのだ、社長である丸山ちゃんに。
陽子がスマホを見ながら内海に尋ねる。働けよ。
「ねえ、お姉様、アリアンティって方ご存知です?」
カチ、カチカチ、スタタン!
「え、確かアメリカのギタリストの?藤崎、このページのデータ、俺のドロップボックスに入れて」
「入れたぞ、マイキージャクソンのツアーギタリストで有名になった女性だな、一応有名人だぞ」
「なんか呼ばれてますよ、そのアメリカのギタリストさんに」
「へ?」
チャンチャンチャン♪
「あれ?中山さんだ」
ポチ
「はい、今、本職の仕事で凄い忙しい内海です」
「あぁ、UTUMIさん、今週末東京に来れます!」
「えぇ〜、藪から棒に何ですか、今忙しいんですけど」
「ご指名ですよ!ご指名!」
「誰の?ウチはキャバクラじゃないですよ」
「あのギタークイーンのアリアンティです!女性ギタリストのトップからご指名ですよ!」
「へ?」
「へぇ、あっちに見えるのがレインボーブリッジか、封鎖したくなるね、出来ないけど」
ZEP!ダイブシティ東京、お台場東京臨海高速鉄道りんかい線「東京テレポート駅」より徒歩3分の場所にあるライブ会場だ。
車を降りて、煌びやかな照明に照らされた建物を見上げるとZEP!ダイブシティと英語でデッカく書かれている。
個人的には東京ビックサイトに行きたかったがこの時間じゃしょうがない。
UTUMIが1歩踏み出せば途端に開場待ちの観客から歓声が上がる。
「UTUMIお姉様!」
「本当に来た!」
「マジでカッコいいな」
ギターケースを持ったUTUMIがここZEP!に本当に来た。
今週来日したアリアンティのご指名とは言え、急なオファーだっただろう、今日の観客は実に幸運だ、世界のアリアンティとUTUMIのセッションを体験できるのだから。
ワクワクしてきた!
カツカツカツ
「こっちです、UTUMIさん!」
中山さんの案内でアリアンティの控え室を訪ねる、あの後陽子ちゃんに見せてもらったスマホには確かに俺と一緒に演奏したいと書かれていた、嬉しいお誘いだが、俺にとってはエリック・クリプトンにお褒めの言葉をもらったのが何より嬉しかった、だってあのエリック・クリプトンだぞ、生きるレジェンドじゃねぇか!あんなコメントされたら世界中のギタリストが涙流すわ。
ギタークイーンとは言えあまり興味はなかったのだが、それでもどうしてもと中山さんに土下座されて、ここに連れてこられてしまった。(意外と失礼な奴である)
それにしても、なんか中山さんの鼻息荒いんだが、アリアンティのファンなのかな?もう歳なんだから血圧には注意してね。
コンコンコン
「ハイ♪どうぞ」
控え室には当然だがアリアンティがいた、金色のギターのチューニングをしている。
ステージ衣装なのか40歳とは思えない短いスカートにロングブーツ、赤い薔薇のジャケットに見事なプラチナブロンド、やっぱりスターは違うねぇ、これがスターのオーラってやつか。
部屋に入るや、彼女が立ち上がる、身長は俺よりちょっと低いかな。
「OH! UTUMI、儲かりまっか!」
「ぼ、ボチボチでんな」
あれ?似非関西人?
「やっぱり、ミーの挨拶あってるわよね?貴女だけよ、ちゃんと返してくれたの、知り合いの日本人にちゃんと教わったんだけどな」
手を叩いて喜ぶアリアンティ、それ、大阪だけしか通じないですよ、誰に教わったんですか。
「ソーリー、動画を見てどうしてもUTUMIとセッションしてみたかったの、今日は来てくれてありがとう」
「光栄です、貴女のような有名人にそう言って貰えるのは私も嬉しいです」
アリアンティが俺をマジマジと見てくる。
「貴女とってもクールだわ、若くてビューティフル、同じ女としてジェラシーしちゃう」
いや、貴女も十分美魔女ですよ、うちの母さんもジェラシーですわ。
「貴女、マイキージャクソンのホワイト&ブラックは弾ける?今日のセトリに入れようと思っているの」
あぁ、あの曲なら弾けるし歌える、藤崎に何度も一緒に弾かされた。何気にあいつ凄えな。
「大丈夫ですよ」
「そう、じゃあ貴女のCMでやってる曲もやりましょう、集まったオーディエンスもびっくり仰天よ」
アリアンティはそう言ってギターを構えると、HOTOMIさんの作ったメロディを奏で始めた。
〜〜〜♪
「うせやん、完璧やないかい」(思わず関西弁)
「サンキュー♪」
いやいや、正直女性ギタリストのトップの実力を舐めてましたわ、超絶上手い流石です。
なんかやる気出てきたかも。
オッオッオッオッ
ギャあぁーーーーーーーーーーーーーーーー〜!!!!!
スポットライトが当たる。
ライブの始まりだ。
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