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こ、これが私ぃ

「なぁ、やっぱパンティってやつはぴっちりしてて落ち着かないな、ブラはおっぱい揺れなくていいけど」


この馬鹿兄は何で朝っぱらから鏡の前で下着姿でポーズを取ってるんだ、ハイハイ脚長くて良いですね、頭痛いわ~。


「トランクスでスカート履くわけにはいかないでしょ、ほら、髪の毛セットしてあげるから座って」


ヘアミストをかけてブラシを入れる、おお、髪質良いなぁ、サラッサラのストレートヘアじゃんか。

腰の辺まで長くてキューティクルツヤツヤ、でも兄は男の時にはこんなに髪長くなかったよね、性別変わると伸びるものなの?

これだったらどんな髪型も似合うだろうな、ショートヘアの私には無理ね。


「会社行くんだよね、後ろで纏めとく?」


「ん、任せる」


「メイクは?」


「メイク?」


「まさか、すっぴんで行くつもりじゃないでしょうね」


「メイクって何すんの?」


そっか、男だった時は顔洗って、歯磨きくらいしかやってないか。


「乳液と化粧水で下地作って、ファンデーションつけたり、眉描いたり、ってこの顔ならナチュラルメイクが良いか?」


「えぇ~、簡単な奴でいいよ~」


「これだけ素材が良いんだからちゃんとしないともったないでしょ、とりあえず私の化粧品貸してあげる」


最後に薄いピンクのグロスを塗って仕上げ。


「よし出来た!」


う~ん、これ私の兄ぃなんだよね、思わず見惚れる、こうも美人だと女として自信無くすわぁ~。


「こ、これが私ぃ」


手鏡見ながらお約束の言葉をおどけながら吐く残念美人が居る、私の兄だった奴だけど。本当にバカだな。


昨日ドンキーで買ったばかりのリクルートスーツを着てる兄?を最終チェック。

うん、女性としては長身の部類に入る170cmの身長、ちっちゃいお顔にDカップのお胸にくびれたウエスト、ふっくらとしたヒップにスラリと長いおみ足。

私が施したメイクのおかげもあって…、


凄えかっこいい美人OLさんじゃねぇか!!

思わず手にしていたブラシを床に叩きつけた。


「くそ~っ、私本物の女なのに、こんなポッと出に負けた」


「そう?春夏の方がちっちゃくて可愛いぞ」


膝をつく私に上から目線でトドメを刺して来やがった。グサリ








ブブブブブブブブヴォヴォ


「兄ぃ、本当に一人で大丈夫、私も一緒に会社行こうか?」


マンションの駐車場で車の座席位置ポジションを直してる兄に話しかける。免許は昨日お医者さんでもらった証明書があればとりあえずは良いらしい。


「大丈夫だって、俺だってもう25だぞ、子供じゃないんだ一人で行けるよ」


「でも兄ぃは抜けてる所があるからなぁ~」


「大丈夫だって、じゃ、行ってくるな」


ヴァオン!


「あ~行っちゃった……」


兄ぃの中古スポーツカーが小さくなるまで見送る、ちょっと不安もあるけど仕方ない。

私も学校に向けて歩き出した。








下駄箱で靴を履き替えてるとさっそく竜太がやって来た。

昨日ぶりだね。


「よぉ、本当に来たな、お兄さん?今朝はちゃんと会社行けた?」


「すっげえ、美人にして会社に送り出してやったわ!ワハハハ!」


自虐を込めて高笑いしてやった。


「お~確かにお兄さんめっちゃ綺麗だったもんな」


「あんた鼻の下伸ばして胸ばっか見てたじゃん」


「ぐふっ!」


私の言葉にダメージを受けた竜太はほっといて教室に向かう。


「おい、ちょっと待てよ、先に行くなヨォ」




ガラ


「あ、春夏来た来たぁ、元気だったぁ!」


「大丈夫大丈夫、ただの風邪だから、もう全然平気」


「マジでぇ、ライン送っても返って来ないし、昨日なんか竜太がずっとソワソワしてたんだよ、愛されてんなぁ」


教室に入れば親友の陽子がもう来てた、昨日は急に休んじゃったから陽子達には心配かけちゃったよね。


「ごめん、医者に行ってたからマナーモードにしたまんまだった」


「あ~」




「は~い、席着けぇホームルーム始めるぞ~」


あ、担任来た。


「あ、陽子、昼休みにちょっと話あんだけど、生徒会室でいいかな?」


「ん?了解」









一方兄の方は。


ガチャ


「どうも~、昨日はご心配おかけしました!」



「「はぁ?誰ぇ!!」」

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