小さいハッピー見つけた日は。
LaLaLa~~~~~~~~~~~~~♪
「いや~、UTUMIは最高だなぁ、このハスキーボイス痺れるわぁ」
文化学園長野高等学校2年生 塩入美幸17歳 バスケットボール部
スマホにダウンロードしたUTUMIの曲をヘビロテして毎日聴いている、噂ではUTUMIはここ長野市の出身らしく何度か目撃情報がSNSに飛び交っている、どこかの高校の学園祭にも出たとか出ないとか、なんと羨ましい、私も会ってみたいな。
最初にミュージックセッションで見てから一発で彼女の大ファンになった、デビューした頃はあまりTVにも出なかったので残念だったけど、なぜか地元のワインのCMには出ていた、あの女神ってどう見てもUTUMIよね。
最近では色々な音楽番組に出演するようになってとても嬉しい。
最近流れるようになったコーヒーのCM、あれもデビュー曲と同じM-HOTOMIの作詞作曲でツインギターが凄いカッコいいんだよね、早く音源ダウンロード出来るようにならないかな。
部活帰りに、安いお弁当を求めてチャリを漕ぐ、運動系はどうしてもお腹が空くのよ、やはり値段で選ぶならデリシアよりラ・ムーか、あそこのお弁当は他と比べても安い、ちょっと味が落ちるのが難点だが、学生にとっては安さは正義だ。
あそこだったら余ったお金でデザートも買えちゃうから、ついつい足が向いてしまう。
あ、ラ・ムーと言っても菊池桃子じゃないからね、今の子は知らないか?お母さんの受け売りだから気にしないで。
ヴァボボ
出入り口横の駐輪場でチャリンコに鍵を掛けていると、ちょっと大きな音の白い車が駐車場に入って来た、最近はああ言う走り屋さんみたいな車も少なくなったよね。
バタン
何気に見ていると中から運転手さんが出て来た、わ、女の人だ、背ぇ高い。
「……綺麗な人だな、ん、ん、ンンン、えっ、あれ?」
自分の目を擦ってもう一度見直す、あれってもしかして。わ、当然だけどこっち来た。
「…………」
フンフンフ~ン♪
ハミング来ましたぁーーーっ!すれ違いざまに聞こえたハミング、あれ、キムタクの映画の主題歌だぁ、UTUMIご本人様確定!
ほ、本当に長野にいたんだ、わーわーわー!
でも、いざ本人を前にするとビビって声がかけられない気の弱い私、ジャージ姿だしどう見てもプライベートよね、白ジャージでちょっとヤンキーぽい姿なのに、あんなに綺麗なのって反則だわ!
「あ、もやし買ってる、やっぱ健康に気を使ってるのかな、今度はペヤング買ってる?ペヤング美味しいよね、私も好き、ついつい夜食に食べちゃう」
気づかれないように店内で後をつける、ふわぁ、買い物カゴ持って歩いていても様になってるな。
「ん、卵売り場の所でめっちゃ喜んでる、私は自分で買わないから分からないけど安いって呟いてる、198円って安いの?2パックも買ってるし」
今度はお弁当のコーナー、今日は唐揚げ弁当にしようかな、チラチラと横目で見ているとUTUMIはハンバーグ弁当を手に取って悩んでる、あ、戻した。え、100円のコロッケパン?あれ、安いけどチープな味するんだよね。
最後は本日特売のみりん、ホクホク顔でカゴには売り込む、お料理もするんだろうか?
レジの白髪混じりのおっちゃんと楽しげに話してる、あのおっちゃん自分が話しているのがUTUMIって知ってるのかな?
あ、頑張ってって応援されてる、やっぱり知ってるのか。
「次の方どうぞ~」
あ、次私か。やばっ!何も買わずにレジ並んでた、白髪のおっちゃんに首を傾げられる。
私は慌ててお弁当コーナーに戻って唐揚げ弁当を引っ掴む、急げ!せめて一声だけでもお話ししたい!
あぁ、こう言う時に限って前の人品数が多いのはなんでなの、あ~UTUMIが行っちゃう!
ヴァオン、ヴァボボ
外に出るとゆっくり走り去ってゆく白い車が視界に入る。
「あぁ~~~~~、行ってしまわれたぁ~」
駐輪場で膝をつく私に、知らないおばちゃんが大丈夫?と声をかけてくれた。大丈夫、ちょっとショックだっただけです、ご心配ありがとうございます。
「また、来るかな」
私はその日から、毎日ラ・ムーに寄るようになった。おかげで2kg太った。
毎度あり〜!
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