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じれったいなもう!

「アルバムですか、無理でしょ、私まだ2曲しか持ち歌が無いんですよ、とてもとても」


「UTUMIに歌って欲しいと、結構な数のオファーが来てるから大丈夫ですよ」


そう言って中山さんはスマホの画面を見せてくる、そこには何人かの名前が並んでいたけどピンとこなかった。


「そんなポンポン、マスター出来ますかい!」


「もう、しょうがないな、それじゃフェスなんてどうです、それなら3曲もあればそれなりに形になりますよ」


「えぇ~、私だったらお姉様には5曲は歌って欲しいな」


「わかりました、追加であと3曲ですね、厳選して明日にはデモ音源をお持ちします!」


「うぉぉい!ちょっと待った!まだ出るなんて私言ってないでしょ」


陽子ちゃんと中山さんの組み合わせはとても危険だ、俺の仕事が増える未来しか見えない。


コトッ


「はい、中山さん。お茶です」


「すみませんね春夏ちゃん、おっ、玉露ですか、歓迎されてますね嬉しいなぁ」




お兄ぃをどう売り出して行くかの会議が、ウチのアパートで行われている、助っ人として陽子も呼んだが、こいつはもう役には立たなそうだな。チッ

私はついでに自分の分も淹れた玉露に口をつけた、おっ、美味い、やっぱ粉末のインスタント茶とは違うな。

玉露は試写会で一応は福山様に会わせてもらったお礼だ、勘違いしないでよね。ツン


中山さんとしてはUTUMIをとにかく色々と露出させて売り出したいが、肝心のお兄ぃはデザイン会社との兼業なのでそれほど時間は取れない、何とも焦ったい状況なのだ。


「でも、お姉様、中山さんの言う事にも一理ありますよ、顔が売れるまではとにかく色々やらないと」


「そうそう、陽子ちゃん良い事言いますね、音楽の世界はまず知名度を上げないと、盛り上がる良いライブは出来ませんよ」


あれ?でもお兄ぃが出たミュージックセッションとか、結構盛り上がってたような。


「う~ん、そうは言っても私もデザインの仕事色々受けちゃってるからね」


そんなの藤崎さんに頼めばと思ったが、お兄ぃの会社3人しかいないしなぁ。まわんないよなぁ


「では手っ取り早く知名度を上げるために、週末収録のTV出演を増やしましょう、CMなんかも効果が高いから良いですね、それならどうです!」


「そうですね、それくらいなら」


お兄ぃ、それは中山さんの罠だよ、最初に無理そうなの言って妥協したふりしてやって欲しい事を言う、恐らくこれが今日の本命だね。

週末のたびに東京へ出稼ぎに行くお兄ぃの姿が見えるようだ、だから稼げる時に稼いでもらおうか。

お金は有るに越した事はないしね。



そしてこの日から、本当にお兄ぃは土日になると東京に出掛けて行くようになった、休みなく働く兄を見かねた丸山さんが月一で平日に休みをくれるようになった、デザイン事務所の方も仕事が増えちゃってるからね、労働基準法ってどうなってるんだろうね、過労死とかしないでね。


CMもデッカい飲料メーカーの出演が決まって、タイアップ曲はまたもやM-HOTOMIさんが書き下ろしてくれた、そのおかげでお兄ぃの知名度は鰻登りだ、とうとう地元の長野でも街を歩いてるだけでサインを求められるようになった。







「ただいま~。春夏、今日ラ・ムーに寄ったら卵が198円だったから2パック買ってきちゃった!夕飯は卵丼にしよう」


「へえ、安かったじゃん、西友では238円だったよ」


卵もこの辺の値段が当たり前になったものだヤダねぇ物価高、新総裁になった高市のおばちゃん頑張れよ、ってそうじゃない!


「お兄ぃ、スーパーで顔バレしなかった?」


「ん、レジの田中さんには頑張ってねって言われたけど、他は別に、あ、ネギはまだあったよね」


「そっか、やっぱ客層が違うのかな、この前はドンキーで思いっきりバレたもんね」


「あぁ、あの時は店長さんまで出てきて大変だったなぁ、けどビール1ケース貰ったから得したよな、黒ラベルだもんな」


そう言ってカラカラ笑うお兄ぃ、知ってる、お兄ぃの通帳凄い事になってるよ、卵だって値段気にせずに高いの買えちゃうんだよ。

全く変わらないお兄ぃに、私の方が心配になって来たよ。

そうだ!確定申告!中山さんに税理士さんとか紹介してもらわなきゃ。


ピンポ~ン♪


「ん、誰か来た。いいよ私が出るから」


カチャ


「あれ?中山さん?」


「どうも~」


「ちょうど良かった、良い税理士さんいません?」


「はい?」

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