舞台挨拶
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木村拓哉、福山雅春共演という話題の新作サスペンス映画を見に行った、前評判も結構良かったし、CMも毎日のように流れているので興味が湧いて観に来てみれば、初日の今日は舞台挨拶まであるらしい、おかげで劇場は満席状態だ。
始まるのを待っている観客がザワザワとうるさいが、開始のアナウンスが流れてくると、シーンと静まり返る。
しばらくすると舞台袖から次々と役者が出て来た、先頭を主演の木村拓哉その次にヒロインである浜辺南、そして犯人役である福山雅春、そして監督の中江省吾、ん、もう一人奥に居る?
「キャアーーーーーーーーーーッ!!」
「キムタクーーーゥ!」「まさはるぅ!!」
やはり女性客が多いのか、出演者が舞台に登場すると黄色い声援が勢いよく飛び交う。
コツッ
えっ。
「………………」
一番奥にいた最後の女性が舞台に上がると、劇場は再度静まり返るが。
「UTUMI」
「UTUMIだわ」
「本物だ」
衝撃のインパクトを与えたデビュー以来あまりメディアに登場しないアーティストUTUMI、それなのにこの映画の主題歌に抜擢されたと言う、その手にはすでにトレードマークとも言える白いストラトキャスター、その姿に劇場が再び騒めく。
「綺麗」「顔ちっさ!」
「えっ、ギター持ってる、弾いてくれるの?」
ザワザワ
「今日はこの映画を見に来てくれてありがとう!」
「浜辺さん頑張ってたよね、結構危険なシーンにも挑戦してたし」
「そうそう、僕にやられそうになる場面もあったよね」
「福山さん、あれ、結構痛かったんですよ~」
舞台の上では出演者同士のトークが楽しげに行われている、けど私の視線はずっと端に立つUTUMIに向いていた。
会話に混じるでもなくただ立って微笑んでいるだけなのに、強烈な違和感を感じて私は目が離せなかった。
「今日は特別に映画の最後にUTUMIさんと、福山さんのお二人による主題歌の特別セッションを行います。上映後は席を立たずにお待ちください」
「え、マジ」
「主題歌ってあの予告編の最後で1フレーズだけ流れた奴」
「マシャとUTUMIの共演」
その司会者の言葉にUTUMIはニコリと微笑み、会場に一礼すると舞台袖に他の出演者と共に消えていった。
ざわめきを残して開演のブザーが鳴り響いた。
1時間50分の本編が終わろうとしている、正直映画は面白かった。だが私はこの後のUTUMIの生歌に興味を惹かれていて、真剣に鑑賞出来ていなかった。
そして待ちに待った瞬間、舞台の左からUTUMI、右側からは福山雅春がそれぞれギターを持って登場した。
二人にピンスポットが当たるとUTUMIのピックを持った右腕が振り下ろされる。
ガッキャーーーーーーーーーーーーン!!
ジャガ、ジャガ、ジャルリラ♪
UTUMIがイントロを弾き始めると福山雅春もそれに合わせてギターを弾き始める、特別ライブに劇場が沸く。
LaLaLa~~~~~~~~~~~~~♪
「………………」
UTUMIが歌い始めた瞬間、この劇場の時間が止まった気がした、どこまでも伸びてゆく独特の歌声、新しいのに懐かしさを感じさせるメロディ。
「本物だ」
今流行りのアイドルグループじゃ出せない、個人の圧倒的な歌唱力にカリスマ、そのギターソロはまさに圧巻の一言。
最初は福山の方を見ていた観客も中盤には全員の視線を集めていた。
LaLaLa~~~~~~~~~~~~~♪
ギャギャリン!!
ドワッーーーーーーーーーーー!!!!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!
スタンディンオベーション、劇場が熱狂の渦に包まれる、UTUMIと福山が手を振って応えればそれは火に油を加える行為だ。
UTUMIと福山が中央に来ると、UTUMIがマイクを持った。
「すみません、最後歌詞間違えました」
ドッ!ザワザワ
照れくさそうに頭を下げるUTUMIだったが、観客は誰もスクリーンのテロップを見ていなかったので気づいていない。
それほどUTUMIだけを見ていた、隣に立つ福山は苦笑いしているので歌詞が違ったことに気づいていたのかもしれない。
福山もマイクを持つ。
「いや、UTUMIさん、そんな事誰も気づいてませんよ、それほど圧倒的な演奏でした、僕も無理を言って共演させてもらった甲斐がありましたよ、試写会でこの歌聴いて、是非とも一緒に演奏したくて猛練習したんですよ」
「あ、ありがとうございます。私の妹が福山さんのファンなので、この事を話したら喜ぶと思います」
「はは、そうなんだ。UTUMIさんのお母さんと妹さんは、この前の試写会で会ってるんだけど、そんな事言ってなかったんだけどな、あぁ、皆さん、UTUMIさんのお母さんは娘さんに負けず凄く綺麗な方なんですよ」
ドワッーー!
「ふ、福山さん、そ、それは」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるUTUMIを観客が囃し立てる。
「今度お母さんと一緒に出てぇ」
「恥ずかしがらないで!」
「お姉様可愛いぃ!」
「「今日は観に来てくれて、ありがとう」」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!
二人が壇上を去っても拍手は鳴り止まなかった、何とも言えない余韻を皆が感じていたのだろう、誰も席を立とうとしなかった。
後日、この映画のホームページを見たら、生演奏があったのは長崎会場のあの1館の1回だけだったらしい。その奇跡のようなライブを体感できた事は本当に喜ばしい。
やはり福山の影響は大きかったのだろう、アミュズの後輩であるUTUMIとの共演を熱望したと自身のブログで語っていた。地元長崎出身なのもあってUTUMIと一緒にチャンポンを美味しそうに食べてる写真はインスタで思いっきりバズっていた。
大阪では木村拓哉とふぐ鍋を囲み、北海道では浜辺南と仲良く毛蟹を頬張る写真がアップされていたが、もしかして食いしん坊?




