バックアップ体制
「ダァ〜、藤崎そっちのハードディスクに残ってるか調べて」
「ああぁ!あったぁ、残ってるぅ〜」
「とにかくこっちのMacのOS入れ替えるからパスワードのリストちょうだい」
「じゃあ私はフォントをまとめておくね」
今のデザイン会社は基本的に全てデータで仕事を管理している、大昔のように版下があるわけじゃないからパソコンが飛んじゃうとシャレにならない、当然バックアップソフトは使っているが、どこまで綺麗な状態で残ってるかはもう祈るしかない、おぉ!神よ私は何か罪を犯したのでしょうか!
(昔の印刷物は版下と言う紙に写植を貼った原稿をフイルムにして4色にして印刷したのです、20年くらい前からはもうそう言う作業は無くなってきてますね)
「ごめんね内海くん、今日は映画の試写会だったのに」
「丸ちゃん先輩、こう言う時は助け合いですよ」ニコリ
「内海く〜ん!好きぃ!!」
「コラ!イチャイチャしてないで再起動かけろや!終わらねぇだろ!」
昨日のお昼過ぎ、丸ちゃん先輩の使うパソコンのモニターに突然?マークが点滅した。それを見た俺達は顔を青ざめさせた。それくらいのショックを与えるのだ、?マークは悪魔の紋章。
無事を祈りながら電源ボタンを長押しして再起動。
ジャーーーーーーーーン
「駄目かぁ、けどハードディスクは認識してるな、OSの上書きでいけるかな」
結局丸ちゃん先輩のパソコン内のデータは綺麗に消えてしまった、今日は休みを返上してデータの復旧作業に追われている、バックアップが残ってて助かったぁ。
これが有ると無いとでは雲泥の差だからな。
一段落して3人でコーヒータイムをしていると俺のスマホが震える。
ブーブーブゥー!
「あ、春夏からのラインだ、試写会終わったかな」
ポチッ
怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒!
「えっ、何、なんで怒りマークばっか送ってくるの!もしかして俺の歌評判悪かった?ブーイング?」
藤崎テメェ、優しく肩叩くなよ、哀れんでんじゃね。
丸ちゃん先輩も頭よしよししないで!泣きたくなる。
後日。
「えっ、主題歌は評判良かったんですか?」
そりゃなぁ、菅野の作った曲だしね。
「?、妹さんから聞いてないんですか?大好評のスタンディングオベーションの嵐でしたよ、妹さんロビーで内海さんに知らせるってメール打ってましたけど」
「なんか怒りマークがいっぱい送られて来て、帰ってきてからも睨まれるだけで何も言わないんですよ…」
「あれま?」
中山さんからの電話で主題歌は好評だったと聞いて、胸を撫で下ろす、この2日間責任感から胃の痛い思いをしてたから気が抜けた。
じゃあ、あの春夏のあのラインは一体何だったのか。
「で、上映館も決まり始めまして、つきましては舞台挨拶を内海さんに是非ともお願いしたいんですよ、いや全部とは言いません、行けるとこだけで」
「えぇ〜、私ちょっとお休みしたいんですけどぉ、最近ずっと仕事しっぱなしなんですけど、ここは菅野さんに行ってもらって」
「東京では天ぷら、大阪ではてっちり、九州では前に言ってた本場のちゃんぽんをご用意しましょう」
「うぐっ、て、てっちりですか」
「では、北海道では毛蟹もつけましょう、本場のサッポロビールは格別ですよ」
「わかりました、4箇所だけですよ、スケジュールは会社のアドレスに送っといてください、仕事の調整してもらいますから」
「大丈夫、初日の2日ぐらいで終わらせますよ」
そんなこんなで北から南、計4箇所の弾丸ツアー舞台挨拶を無事終えた、どこも熱狂的に迎えてくれてちょっとびびった、何あれ怖い。
長野に帰ったら俺を見たお母さんに、一緒に走り込みをさせられた、ふ、太ってねえよ!
福山さんに勧められたチャンポンがちょっと大盛りだっただけで、おかわりしたのが原因じゃないぞ。
春夏、お前も一緒に走る?って何怒ってんだよ、長野でなんか舞台挨拶なんかねぇよ!拗ねるなよ。
「なんか出演者が、皆んなして母さんを褒めちぎるんだが何なの?」
お母さんのドヤ顔がウザいんですけど。
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