頭悪いのって治せますか?
お兄ぃの付き添いで長野赤十字病院の定期検診をしに行く、何回か来ると病院の雰囲気にも慣れてくる。
相変わらず、ここは辛気臭いな、まぁ、皆んな病気だから来てるんだから仕方ないけど。
そんな雰囲気の中、お兄ぃとこの担当の月岡先生はのほほんとしてるな、こいつらだけ良い意味でも悪い意味でも雰囲気が違うわ。
「内海さん、最近は調子よさそうですね。TVなんか出ちゃって、すっかり有名人じゃないですか」
「あ、見てくれました。おかげさまで、でも掛け持ちでやってるから結構疲れるんですよ」
「大丈夫大丈夫、人間30歳までは結構無理ききますから、頑張ってください。何でしたら凄く元気が出るお薬処方しますよ」
「それってムラムラしません?変な気分になってまた弄ったりしたら、春夏に怒られるんですけど、この前なんか…」
「何を先生達はアホな雑談してるんですか、診察しないんですか?」ギロ
「あぁ~、じゃあ内海さん、心音聞きますので前開いて胸出してください」
月岡先生がピンク色の聴診器を構える。
「相変わらず良い形してますね〜、ぱっと見だけど乳がんの心配はないかな」
「あ、先生、先っちょは触らないでくださいね、感じちゃうから」
「やかましいわ!真面目に出来んのか!」
全くこの兄は、月岡先生は最後に血液検査の結果を見ながら普通に告げる。
「はい、健康です。どこも問題ありませんね、またのお越しをお待ちしていますね」
ヴァボボ
「なんか健康なのに検査って、面倒臭くなって来たな」
「しょうがないでしょ、一応難病指定されてる病気なんだから、あ、今度から付き添いにお父さんとか連れて行けば、暇そうだし」
身体の具合が悪なってから行けばいいと一瞬考えるが、病気というのはそうじゃない、普段からの生活が大事なんだ、そうじゃなくてもお兄ぃのかかったTS病は、いつどうなるか誰もわかっていないのだから。
「お前、もう行くのやだくなってるだろ」
「そんなことないよ、でもねこう言うのは家族全員で立ち向かうモンだと思うのよ」
目が白々しい?やだなお兄ぃの目が悪いんじゃないの、月岡先生に眼科を紹介して貰えば。
「この歳で母さんとは病院行きたくねぇな、月岡先生とやらしい事言えないし」
「私ならいいんかい!!」
ガラッ
「ただいま~、お父さんいるぅ」
「あら、おかえり。お父さんなら今日はゴルフで居ないわよ」
「「じゃあ、帰るわ」」
ガシィ
「待ちなさい、お兄ちゃんも春夏もそれはないんじゃない、お母さん泣くわよ」
「イテテテ、ちょっ母さん痛いって、爪食い込んでる!」
結局、お母さんに強引に家に連れ込まれた。
ついでなので実家に寄って、お父さんに次の診察の付き添いを押し付けようと思っただけなのに、全くお父さんはこう言う時に限って居ないんだから、で、お母さんは今日パート休みなの?
「春夏、何ガッカリした目してるのよ、でも、ちょうど良かったわ、お隣さんからお葡萄いただいたのよ、帰りに持って行きなさい、正真正銘、須坂産のシャインマスカットよ、産地偽装はされてないわよ」
「わ、やった!」
「えぇ、ぶどうぅ~」
もう、お兄ぃはワインは喜んで飲むくせに、葡萄自体は食べるの面倒くさがって嫌いなんだから。
美味しいじゃんシャインマスカット。
ちなみにブドウは房から外して保存した方が長持ちするらしいよ、でも手でちぎっちゃ皮に穴が空くからダメだからね、ちゃんとハサミを使って根本からチョキチョキとね。
「あら、お兄ちゃん、こう言う時は何て言うのかしら~」
返事の仕方が気に入らなかったのか、お母さんがお兄ぃに圧をかけて聞いてくる、あぁ~あ。
「あ、とっても嬉しいです。WA~嬉しいなぁ、葡萄大好きぃなんですぅ」
「40点、良い女たるもの人前で嫌な顔をしない、いつも笑顔で応答しなさい、でも卑屈な笑顔ではダメよ」
「はひっ!」
「そうだ、今度レコーディングで東京に行くんでしょ、来て行く服を用意してるから私の部屋にいらっしゃい」
何でお母さんがレコーディングの事を知ってるんだろう。中山さんと仲良いからって情報ダダ漏れじゃん。
「えぇ~、いつもの服でいい…」
ギロリ
「WA~嬉しいなぁ。お母さん、ありがとぉごじゃります」
ズルズル
「うわぁ~ん、春夏ぁ!」
母に連れ去られて行くお兄ぃに健闘を祈ってヒラヒラと手を振る、これも親孝行だ頑張れよ~、骨は拾ってやるぞ~。
それに、お兄ぃはデビュー曲の時レコーディングだからってジャージで行こうとした前科があるから、丁度良かったよ。
「さ~て、お母さんの隠してるスイーツは冷蔵庫の一番上だったな」
ガチャ
パク
「う〜ん、やっぱりお布施クリの木テラスのモンブランは美味し〜い!」
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