サスペンス系かな。
ピンポ〜ン♪
「は〜い、あれ」
先日桐山部長が言ってたらしい、映画の主題歌のお仕事が本当にやって来た。
「映画の主題歌ですか?」
「で、誰が出るんですかその映画?あ、コーヒーどうぞ、フレッシュいります?あぁ、ブラックで」
お兄ぃが聞き返すのを横目に、私はコーヒーを机に置きながら中山さんに尋ねる、映画は好きなのだ。
なんで私が一緒に話を聞いてるかと言えば、中山さんが夜になってアパートを訪ねて来たからだ。
もう7時過ぎだぞ、そんなに忙しいなら長野に来ないで電話で済ませば良いのに、作戦かな。
「木村拓哉と浜辺南、あと、福山雅春も出ますね」
「!!、お受けします!!喜んでぇ!!」
「うおおぃ!!」
即答する私に兄がすかさずツッコミを入れる。良いツッコミだったよお兄ぃ、60点をやろう。
「だってお姉ちゃん、福山だよ、福山雅春だよ、カッコいいんだよ!あとついでにお母さんも木村拓哉が出るなら賛成すると思うな」
あ、お兄ぃが主題歌歌ったら地元の長野のグランドシネマでも舞台挨拶やるかな、そうなれば絶対に観に行く、中山さんのコネを使ってでも福山を観に行く!
もし福山がお父さんだったら、私一生結婚しないで家に居る自信がある、で、あの甘い声でよしよししてもらうんだ。
そうなると今のお父さんがちょっと邪魔だな。
「いや〜、即答ありがとうございます、わざわざ忙しい仕事の合間を縫って長野まで新幹線を使ってまで来た甲斐がありましたよ!これで色々計画出来ます、本当にありがとうございます」
「最後の色々が気になるんですけど」
速攻でお兄ぃが断りづらくする、中山さんってどこか腹黒さを感じるから、この展開を狙って会社じゃなくてアパートに直で来たんじゃ。
やはりメールや電話と違って、面と向かってだと断りずらいもんな、営業の鏡だな。
「それに、春夏が早まってOKしただけで、私はまだ返事を…」
「内海さん、松茸にはぬる燗の純米酒が良く合うと私は思うのですよ」
中山さんが、ゴトリと机の上に持ってきていた荷物を置いた。
木箱に入った松茸、その横には緑色に輝く一升瓶。
「く、久保田の純米大吟醸山廃仕込み、碧寿……」ゴクリ
「松茸を炙って、こいつのぬる燗をクイっと一献、たまりませんよ。これ以上の秋の贅沢はないんじゃないかな、いえこれはこの前のTV出演のお礼です、決して他意はありませんよ」
お兄ぃの反応を見てとどめを刺しに来る中山さん、この人本当に交渉が上手い、的確に弱いところをついてくる。
ん、お兄ぃが食べ物とお酒に弱いのはわかりやすいか、前回のでパターンが決まったね。
と言うか松茸ってどんな味だっけ?あまりに長く食べてないから忘れちゃったよ、最後に食べたのいつだっけ。
でも良い匂い、国産だね。ヤッホー!
シャク!
「うまっ!!松茸うまっ!!、このシャッキリとした歯ごたえ、この香り、なんで私はこの味を忘れていたんでしょう!こんなに美味しいのに!」
グビリ
「くぅ〜〜〜っ、このぬる燗がまた松茸にバッチリ合う!」
「ささっ、もう1杯。すみませんね、また私までご相伴になっちゃって」
「いや〜、美味いものは分け合わないと、バチが当たりますからね」
「「「ハハハハ」」」
中山さんの持ってきた箱には松茸が10本入っていた、今5本焼いたから残りは炊き込みご飯かな、実家にも持ってた方が良いかなお父さん達拗ねるし。
もう、この松茸の美味しさに免じてお仕事受けてやりなよ、お兄ぃ。福山の映画だし。
「今度の作曲は、菅野洋子さんからオファーが来てます」
「ヘッ、あのビーバップやアクロスで有名な菅野(62仙台出身)さんですか」
私はアニメは好きなので菅野洋子は知ってる、大人気の作曲家だ。
下手すればM-HOTOMIのおっちゃんより、私的には大物だ、凄い。
「はい、その菅野さんです、是非ともUTUMIと一緒に仕事をしたいと打診されてまして」
HOTOMIさんも63歳だしお兄ぃはその辺の年代の人を惹きつけるフェロモンとか出てるのかな。
「あぁ、私、アクロスFのミシェルの歌好き!カッコいいよね」
ところで、何の映画だっけ?
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