表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/53

憧れは理解するには一番邪魔な感情と愛染隊長が言ってなかったっけ?

兄が作ったワイナリーのCMが早くも先週から放映されている、予定では来年から流すはずだったのだが、あれやこれやと色々な所から圧力がかかって早まったらしい。

だからってあんな1日に何回も流さなくっても良いだろ、良い加減飽きたぞ。

何やらクラスの男子どもが、そのCMを見て毎日のように私に話しかけてきやがる、実に鬱陶しい。


「なぁ、春夏のお姉さんってマジに女神だよなぁ」

「そうそう、しかもあのミュージックセッションのUTUMIだろ、超エロくて歌上手い!」


はいはい、エロいエロい、そこは認めてやるよ。


「俺この前、学園祭で本人に会ったんだぞって妹に言ったら、めっちゃ悔しがってた」

「あぁ、学祭の時、お姉さんのギター凄かったよな!」

「完璧超人かよ」


「オホホホ、あんた達、お姉様の良さはそんな表面だけのもんじゃないわ、魂が澄んでいてお綺麗なのよ!そう北欧神話の愛と美の女神フレイヤのように!」

「「「「おぉ~っ!!」」」」


陽子、お前の目は腐ってるぞ、あれのどこが澄んでいるんだ、魂は性欲にまみれれとったわ。

それと愛の女神フレイヤ、あいつは父ちゃんや兄ちゃんともやっちゃうビッチだぞ。

こうして真実は別として兄の名前は広まりつつある、UTUMIとしてはアレからもう一度だけミュージックセッションに出演した、M-HOTOMIとのセッションは意外と、いや結構カッコ良かった、あれは絶対HOTOMIさんがカッコ良かったせいだな。

しかし、その時は学校で行けなかった私の代わりにお母さんが収録について行きやがった、オープニングでカメラに抜かれたお母さんは、ヤモリさんに美人親子とおだてられて鼻高々だった、今のお兄ぃとお母さんなら破壊力は抜群だろう。

あれ?私の時は美人姉妹だって言われたっけ?記憶にないぞ。

くそっ!なにわ男子が一緒に出演しただと!私も好きだったのに会い損なった。大橋和也くんはファンなのに。





「ねぇ、内海さん、ナイトジャムにも出演しましょうよ、初動が大事ですよ、それにあの番組のプロデューサーがUTUMIを出せってうるさいんですよ、ギャラも良いですよ」


「ええ、それ収録いつですか?」


「明後日の木曜日」


「行けるわけないでしょ、今やってるパンフレットのデータ締切、明後日なんですから」


「そこをなんとか!」


まったく、デザインの仕事を舐めるな、土下座したって無駄ですよ、大体が週末に何回も東京に行ってお仕事してるでしょうが。

その努力のおかげで、M-HOTOMI監修でデビュー曲のレコーディングが完成したのだ。

だからラジオでも曲がかかるようになったよ。


「無理です!藤崎からも中山さんに言ってやってよ、無理だって」


「確かに最近誰かさんのせいで仕事が増えてるからな、従業員増やさんとなんともなりませんね」


藤崎がマウスをカチカチさせながら低い声で答える、あまり余裕なさそうだな。あ、悪い、この写真の切り抜きもお願い出来る、そこをなんとか!。


「私の知り合い紹介しましょうか?」


中山さん、ウチは東京のデザイン事務所より絶対給料低いですよ、ウチは小規模でやってますから。

20人くらいいればもっと分業で色々と大きな仕事を回せるけど、そういう事じゃないんだよな。

人数多い所はコロナ禍の時に潰れた会社あったしな。


「多分、新入りはすぐに使い物にはならないし、うちの会社どっちかって言えばブラックですよ」


「藤崎くん!お仕事に必要なのは情熱だよ!お金じゃないよ!」


後ろで別の作業をしていた丸ちゃん先輩がビクリと声を上げる、一応経営者だからね。藤崎が丸ちゃん先輩の言葉にため息をついた。

確かに最近お仕事は増えているから会社として儲けは出ている、でもお金だけじゃ続かない者が多いのもデザイン業界だ、丸ちゃん先輩の言葉じゃないが、この仕事が好きじゃないとやってられないのだ。


しかし中高生でも無いのに週末しか活動しないアーティストなんてすぐに世間様からは忘れられるだろ。

週末アーティストうつ~み~Z!なんつって。






「内海さん、YouTubeに上げたCM動画の再生数凄いですよ、こんな田舎の企業CMなのに下手すりゃ億行きそうだよ!」


桐山部長がちょっと興奮しながら力説している、やっぱりM-HOTOMIのネームバリューは絶大だな。

ワイナリーも全国から注文がジャンジャン入って大満足らしい。


「ネット怖えですね、今はTVだけが映像見れる媒体じゃ無くなってますよね」


「いや~、早めにCM流して正解だったね、広告は旬の時期の見極めが大事だからね」


誰の旬かな?そのおかげで納期早まって、作る側は大変だったんですけど。


「ウチの社にも映画の主題歌をUTUMIにお願いしたいと問い合わせが来てますが、それはもうアミュズさんの方が管理してるんですよね、一応正式デビューしたんですものね」


デビュー曲のレコーディングを終えた時点で俺はアミュズと契約社員として登録した。

その所為でこのCMの時のように個人で出演することはもう出来なくなったのだ。結果、今回はワイナリーと桐山部長の会社が随分と得をしたらしい。まぁ、ウチも普段の仕事と比べれば桁が一つ違う儲けが出て、丸ちゃん先輩はウハウハだったけど。



「う〜ん、映画の主題歌ですか」


それは週末アーティストの仕事の範疇を超えてるだろ、また中山さんがやって来そうだな。

感想や★★★は作者のモチベーションの向上に繋がります。是非お願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ