表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フリージア王国備忘録<第一部>  作者: 天壱
冒瀆王女と戦争
304/877

255.冒瀆王女は呼ぶ。


「ップライド様!ステイル様はお一人でサーシス王国に戻られて本当に宜しかったのですか⁈」


私の前方で馬を走らせながら、アラン隊長が声を上げてくれる。カラム隊長も馬上で私の背後を守りながら同意の声を上げた。

今、私達はサーシス王国の城へ向かい馬を走らせている。

ステイルに瞬間移動して貰った方が早いのはわかっていたけれど、敢えて馬を選んだ。早くサーシス王国に着くのも大事だけど、戦況も自分の目で確認したかったし、サーシス王国の城下の人達がちゃんと避難できているかも心配だった。

確か、チャイネンシス王国と違ってサーシス王国の人達は城下から離れずに避難所だけで賄っている人達も多いと聞いた。むしろ、チャイネンシス王国よりも人的被害が多い可能性すらある。サーシス王国の守りを任されたからには、民の安全も私達が護る義務がある。


「大丈夫です!サーシス王国にはジルベール宰相がいるもの‼︎」


私も二人に負けず、聞こえるようにと声を張る。

護衛の騎士を一人も連れて行かずに、と最初にステイルに言われた時は少し戸惑ったけれど、瞬間移動なら道中の危険はないし、ちゃんと城にも護衛の騎士はいる筈だ。策士のステイル、謀略家のジルベール宰相がいればきっと何があっても安心だと思えた。

それにステイルが自ら、先に城に行ってきますと言ってくれたのだから。「ジルベールと話しておきたいことがあります。何かあればいつでも合図で呼んで下さい」と、そう言って先にサーシス王国の城まで向かってくれた。

私もステイルにはできれば先行して、もし向こうが緊急事態になったらすぐ教えて欲しかったから正直助かった。馬で高速移動中では通信兵での連絡も難しいし、ステイルなら私が何処にいても何かあったら確実に伝えにきてくれるから。

本当はセドリックも動ければもっと心強いのだけれど。…少なくともまだ難しいだろう。


「もうすぐサーシス国内に入ります‼︎そうすればすぐに城下です‼︎敵の攻撃に注意して下さい‼︎」

カラム隊長がそう叫ぶと共に騎士達へ合図が放たれ、陣形が変わった。高速移動から、私を更に守るような陣形になる。


「チャイネンシス王国はハリソン達が居りゃあ平気だろうけど‼︎サーシス王国の城入ったらとうとう俺らの出番ですかね⁈」

「アラン!お前はただ戦闘をしたいだけだろう‼︎場を弁えろ!」


走りながらもアラン隊長をカラム隊長が叱咤した。二人の様子に思わず私が笑ってしまう。

確かに私の近衛騎士だからとはいえ、特攻や前衛が得意分野の一番隊の隊長に護衛だけさせるのは申し訳ないと思っていた。それに、何より…


「恐らく、入城の際にはお二人の力をお借りすることになると思います!戦闘も、護衛も…ですからっ…」


私が思い切って声を上げると、アラン隊長が馬を走らせたまま思い切りこちらを振り向いた。私に向けてくれたその目は凄く輝いていた。

また背後のカラム隊長が怒らないか心配になったけれど、今度は何も言わなかった。アラン隊長も私の話をちゃんと聞くためにわざわざ振り返ってくれたのだろうとカラム隊長も判断したのかもしれない。私からも早く話を言い切らねばと、思い切り息を吸いあげ二人に言い放つ。


「ですからっ…その時は頼りにしています‼︎よろしくお願いしますっ‼︎」


私の言葉に二人から同時に「はい‼︎」と心強い声が揃って前後から返ってきた。


馬を走らせ、サーシス王国国内に入る。

丁度爆発音が聞こえてきて、また敵の投爆かと思い振り向けばレオンに任せたサーシス王国の国門の方角からだった。

最初の投爆と比べて音の規模は小さかったけれど、立て続けに起こる爆発に何故かレオンの心配よりも、アネモネの彼らが引いていった武器の荷車を思い出す。


『僕のアネモネ王国は強いよ?』


あの言葉には、不思議と凄い説得力があった。

ゲームでも、ティアラに心を癒されて元の完璧王子に戻ったレオンは非の打ち所がない完璧な王子様だった。

戦闘だって、久々に剣を握ったにもかかわらず最終局面では行く手を阻む攻略対象者と剣で良い勝負をし、ラスボスプライドには剣と己が肉体で押し勝ち、最後は弟を撃ったプライドの銃で見事彼女の心臓を撃ち抜いてしまうのだから。

王族が銃に触れる機会なんて滅多にないし、更に言えばレオンは二年間も引き篭もり期間まであったのに。


国内から更に南下して城下に入る。

騎士達が頑張ってくれているお陰であまり被害は無いようにも見えたけれど、避難し損ねた民や避難所を敵に見つけられた民達を守る為にその場から動けない騎士や兵士達も所々に見かけた。

見つける度にアラン隊長達が助力して敵兵を無力化してくれたけれど、避難の誘導や一度見つかってしまった避難所の隠蔽などがその度に難航した。


「…避難所にこのまま残していくのも危険ですね。」

馬を止めながらカラム隊長が顎に手を当てる。周囲を見回し、どこか避難できる場所がないか考えてくれていた。


「城も今は攻められてるし、他に逃げ場…って言ったら城下から離れた田舎町まで連れていくしかねぇんじゃねぇか?」

戦火はチャイネンシス王国まで広がっているしよ、と続けるアラン隊長は騎士を何人か誘導に任じるべきか後続の騎士達へ振り返った。比較王都に近いここから農村までは、確か歩いて何時間もかかる。その間に敵に見つかる可能性だって大きい。…それなら。


「とにかく遠方に避難させれば問題ありませんね?」


え?とカラム隊長達が聞き返してくれる中、私は一度手の鎧を外した。人影の無い避難所の裏側に近衛騎士と共に身を隠す。そのまま外した鎧部分を脇に挟み、剥き出しになった自分の指を口に運んだ。そのまま思い切り息を吸い込み、…放つ。









ピィィィィィィイイイイイイッッッ‼︎‼︎


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ