175.非道王女は知らされ、
「プライド!…プライド‼︎ティアラ‼︎大変ですっ‼︎」
十六歳になったステイルが、珍しく慌てた様子でプライドの部屋の扉を叩き、部屋に入ってきた。そのままプライドの部屋で一緒に勉強をしていたティアラにも声を掛ける。
「!ステイル、どうしたのそんなに慌てて。」
「兄様。何かあったの⁇」
十七歳となったプライドと、ティアラが突然のステイルの登場に目を丸くする。
ヴェスト摂政付きになってからも、ステイルは業務の合間の休息時間になると必ずプライドとティアラの元まで会いに来ていた。
だが、いつものように侍女や衛兵を連れてのんびり歩いて来たのではなく、息を切らした様子からみても走ってきたことがわかる。プライドの背後にいる専属侍女達以外にも近衛兵のジャック、そして近衛騎士のアランとカラムも驚いたようにステイルの方を振り返っていた。
「…あ…、…っ、…ーが…。」
城の人間に容易に瞬間移動を見せない為とはいえ、ヴェストの仕事部屋からプライドの部屋まで全速力で走ってきたせいで息が切れた。はぁはぁと息を整えながら、それでも今度こそ言葉にとステイルは一気に顔を上げた。
「…アーサーがっ…‼︎」
顔を上げたステイルの表情に、その場にいる誰もが驚愕し、どよめいた。
……
騎士団演習場。
「アーサー‼︎」
アランに「多分アレです」と指を指され、プライドが一番に彼へ声を上げた。
ステイルの話を聞いて真っ先に馬車を走らせたプライド達は、騎士団演習場についてすぐにアーサーのもとへと駆け出していた。
見つけるのは、予想以上に簡単だった。演習場に入ってすぐのところに、彼はいた。
エリックや他の騎士達に肩や背を叩かれ、その周りにだけ人垣ができていた。
「プライド様!ステイル…様、ティアラ様、アラン隊長、カラム隊長…。」
プライドの声に肩を揺らし、瞬時に振り返ったアーサーが、騎士達の前だからとステイルやティアラに様付けをしながら名を呼んだ。周りの騎士達も王族三人と隊長格二人の登場に驚き、アーサーから一歩引くようにして跪き、プライド達に道を開けた。
「さっき、ステイルから、聞いてっ…!その、…本当…なの?」
自分のところに報告に来てくれたステイルのようにプライドも、そしてティアラも息を切らせていた。
既に知られていたことにアーサーが驚き、目を見開いだ。そのまま返事よりも先にステイルへ視線を投げる。そしてプライドの目を真っ直ぐに捉え直し、…頷いた。
「…はい。この度、正式に騎士団長より八番隊副隊長を任されることになりました…‼︎」
アーサーの言葉に三人の目が輝き、一気に興奮で赤みを帯びた。心拍が早まり、気がつけば足が駆け出し、プライドとティアラが同時にアーサーへと飛びついた。
「ッおめでとうアーサー‼︎」