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少年と空-EAGLE KNIGHT-  作者: マーベリック
第1章 天かける問題児
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MISSION2 火竜の翼 

便利?な用語解説付になりました。


もし良かったら使ってください。


なお、分からない部分がある場合はググって下さい

同日 午後9時45分 空母J・グラフトン 飛行甲板


世界で一番危険な場所。それは、空母の飛行甲板だろう。


人の断末魔をも消すエンジンの咆哮。射出機カタパルトで高速で撃ち出され、猫の額ほども無い甲板に着艦をする艦載機。


そして、甲板はいつにもまして慌しかった。最新鋭の戦闘機、F-28ワイバーンが迫り来る敵機を迎撃すべく緊急発進スクランブルを行おうとしているからだ。


赤いウェアを着た甲板作業員達は、空対空の武装をF-28に搭載させていた。そして、その慌しい甲板を翔は駆け足で自分の愛機、複座型のF-28Bの216号機へ向かっていた。


複座機とは、パイロットとその補助を行うRIO、いわゆる策敵士が搭乗する機体のことである。基本、少年兵はこの複座機に乗る。理由は、パイロットに操縦に集中させるためである。


十代の子供に難解なレーダー操作と機体操作を同時に行え。と言うのは困難。いや、不可能だ。


故に作業を分担し、負担を削減させる事が一番望ましい。


「ごめん!!遅れた」


翔は愛機の後部座席に座る少年、宮島竜也みやじまりゅうや少尉に一言わびた。


「急げよ。敵さんすぐ近くまで来てるらしいからな」


そう竜也は返す。翔は足早に機体に付けられた搭乗用の梯子ラダーを駆け上がり、コックピットに滑り込む様に入った。


「那琥、機体の状況は?」


翔は愛機の整備を担当している、弥生那琥やよいなこ准尉に近接無線で問う。


『エンジン出力も問題なし。フラップ、エルロンとも油圧は正常。ローレンスはいつも通り最高よ』


「そのローレンスってやめろよ!!気持ちわりぃな」


ローレンスとは、那琥が翔の216号機に勝手に付けた名前である。


『良いじゃない。早くエンジン点火して』


彼女は人差指を立てた。これは第一エンジン、右エンジンの始動を指示するためのサインだ。


あらゆる音がエンジン音にかき消される飛行甲板上では、このようなハンドシグナルが音に変わるコミュニケーション手段となる。


「了解」


翔は慣れた手付でエンジンを点火。刹那、機内に車のエンジンスタートに似た振動が走った。


回り始めたエンジンのエアインテイク。甲高くなるジェットエンジンの咆哮。


翔はエンジンの回転数が均等になった事を確認して那琥に告げた。


「チョークを外せ」


翔は、ギア、いわゆるタイヤに敷かれているドアストッパーに似たチョークと呼ばれる止め具を外すよう指示を出す。


作業員レインボーチームたちがそれらを外し終えると、次は赤い誘導灯を持った誘導員が翔の機体の前に現れた。


黄色いウェアを着た、彼らは機体を射出機カタパルトへと誘導する事が仕事のカタパルトオフィサーと呼ばれる兵員だ。


「イーグル3よりデビルへ、発艦を許可されたし」


『デビル了解。第三カタパルトに行きなさい。とういか、急行しろ』


と、少女というより幼女の声が翔に指令を出した。オペレーターの北条神海ほうじょうこうみ少尉だ。ちなみに、デビルとはこの空母の管制名である。


『復唱は?イーグル3』


「了解。あと……俺に指図できるのは、Bカップからだ」


『なっ!!おぼえてなさいよ!!このバカ』


翔は無線を切り、そのまま、誘導灯の明かりに従い左舷、第三カタパルトへ機を微速前進させた。


そんなこんなをしている内に、カタパルト誘導員は停止のサインを出した。機のギア、いわゆるタイヤの先にあるランチバーと呼ばれる金属製の棒とカタパルトとの連結作業をするためだ。


動く機体と小さなシャフトを連結させるのは非常に難易度が高く、故にこの場面は彼ら、レインボーチームが最も精神をすり減らす場面の一つである。


ガチャリ、と低い連結音がした。その次には、機体の背後にJBDジェット・ブラスト・ディフレクターと呼ばれる防熱版が平らだった甲板からそり立つ。


これは、ジェットブラストと呼ばれる排気の際に発生する熱風及び、暴風から作業員を防護するための装置である。


翔は最終点検で、エルロン、フラップ、垂直尾翼ラダー水平尾翼エレベーターを動かす。


「油圧良好。というか、最高だな」


そう言って、翔はスラストレバーを前に押し機体のエンジンの回転数を上げる。


耳がおかしくなりそうな轟音が響き渡る。


アフターバーナーの業炎がエンジンノズルから燃え上がる。


ドクンドクンと翔の鼓動は早鐘のごとく波打つ。


高鳴るエンジン音。


空の男は危険だが楽しい大空に翼がいざなってくれることを待ち焦がれる。


離陸を待つ翼。翼が羽ばたくのを待つパイロット。


これほどじれったくも楽しい瞬間を味わえるのはここだけだ。


カタパルト士官が船首の誰もいない虚空に剣を刺すようなサイン。カタパルト始動サインをした。


一瞬にも近い時間だった。銀翼の火竜が風を切り、空高く舞ったのは。




同日 午後9時45分 太平洋


高度6000メートルの星が瞬く暗い空を、銀翼は切り裂き翔けていた。


F-28ワイバーンの作り出す統制の取れたV字の大編隊は、渡り鳥の大移動のようだった。


しかし、鳥達との大きな違いが一つある。それは、鳥は暖かい安住の場所を目指して飛ぶ。しかし彼等は死地へ向かっているのだ、戦場と呼ばれる。


『デビルより各機へ、敵は本艦から南東へ200キロの所を飛行している。数は11。迎撃に移れ』


デジタル暗号化されている神海の無線が戦闘機の二個大隊に告げた。


編隊は波状迎撃で、第一陣はヘルハウンズのイーグル小隊。そのカバーを他のフォックス、ハーピィーが行う。


『イーグル1了解。これより、迎撃を開始する』


一度明は広範囲用の無線を切り、編隊用の無線で後続の編隊に告げた。


『イーグル1より各機へ、安全装置を解除。全機、長距離アウトレンジミサイルを用意しろ』


その指令を待っていたと言わんばかりに翔は安全装置を解除。そして操縦桿にある、武装選択ボタンを操作。AIMー125キラービー長距離ミサイルを選択した。


翔のHUDヘッドアップディスプレイには、敵機を補足した際に現れるシンボルが浮かび上がる。


『攻撃開始』


一条隊長の掛け声と共にヘルハウンズの編隊は目標へミサイルを一斉発射した。


雲の尾を引き、ミサイルは目標へ我先に飛翔。ミサイルの何発かは、虚空へと飛び去ったが何発かは直撃。爆散した。


『イーグル1より各機へ。散会して迎撃を始めるぞ』


一条隊長の掛け声と共に銀翼の竜はその翼を優雅に翻し、散会した。


そして、始まる。音速の空中戦ドッグファイトが。





<空母>


航空機を海上で運用するための船舶。翔達の所属するJ・グラフトンはニミッツ級と呼ばれる300メートル級の空母で、その火力(航空機による)は一隻で第二次世界大戦のアメリカ海軍の火力を越しているらしい。


<第184航空隊>


ヘルハウンズ航空隊、翔の所属する戦闘機部隊。12機のF-28戦闘機を所持し、イーグル、ハーピィー、フォックスの4機編成の小隊で構成されている。


<HUD>


Head Up Displayの略称。ヘッドアップディスプレイとは、簡単に言うなら照準器と基本的な計器が合体した装置。


パイロットの目線上にあり、高度、速度、水平状況、迎え角(機体の上下の傾き具合)そして、照準器をまとめた、近代戦闘機にとっての必需品。


<AAM>


空対空ミサイルの事。


エルロン

飛行機を横転やロールさせるのに使う動翼です。


フラップ


高揚力装置とも呼ばれ、飛ぶ時に必要な力、『揚力』を高める際に使う動翼の事。離陸時や着陸時に翼の一部が下を向いている。これがフラップです。



垂直尾翼ラダー


機体の二次元的な左右の動きを司る部品です。飛行機の後ろに垂直に立っているあれです。


水平尾翼エレベーター


機体の上下の動きを行う部品です。




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