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MISSION17 邂逅

2015年 7月17日 午前7時30分


秒針がこの時を刻んだ刹那、作戦は始まった。


『ホークアイ132より各機へ、作戦開始時刻をまわった。これからは各機の判断での攻撃が許される。風の導きがあらんことを』


航空管制機のE-2ホークアイは指示を大編隊に出した。


空を覆う大編隊。その言葉は、ポイント201を通過した彼らには的確の比喩だった。その大編隊は敵の艦列と放火を交えるために散開する


氷山の一角とも呼べる編隊の一つでもあるイーグル小隊は最終確認のために通信を行っていた。


『イーグル1より各機へ、フランクと翔の組で敵艦を叩け。俺と2は上空援護を行う』


『2了解』


「……3了解」


『4了解』


高い精度の火器官制システムが備わったD型を対艦にまわすのは的確な指令だが、イーグル3の風宮翔には不服な指令だった。


彼の本領は空中戦にあるのだが、対艦対地攻撃はそれほどに得意わけではない。


それに対してイーグル4のフランク・ウィルディは対艦攻撃などは、攻撃機のパイロットに匹敵する実力を持つ。


『イーグルは左から5番目の敵艦をやれ』


『3了解』


「4了解」


航空管制の命令を承諾した翔とフランクは左下方に旋回した。


「翔、高度70で反転しろ」


『わーってる。ミスって死ぬなよ』


「お前こそ」


2機のワイバーンは高度を下げ、敵艦隊が展開されている空域に入った途端に濃厚な対空砲火が打ち上げられた。


「なんだよこれ!?」


これまでに経験の無いような弾幕の濃厚さにフランクは声を上げるほどに驚愕した。


『隅田川の花火大会かよ!?』


翔の喩えはあながち間違えでは無かった。


空中で無数に炸裂する対空砲の砲弾。くぐれるかどうかも解らない対空機銃の弾幕。そして、それらに火球にされた友軍のF-28。


そして地獄へのダイブの生還者は翔達含め12機中5機だけだった。


『フランク、生きてるか?』


「なんとかな」


高度70メートルの低空を二機の火竜は水しぶきを上げ飛行している。


対空砲火も低空かつ高速の戦闘機に照準を合わすこともできず、デタラメに砲弾を浪費する羽目となる。


「エド、レールガンのチャージ頼む」


「了解」


後部座席に座るエドはフランクの指示通りにコンソールを叩きレールガンの充電チャージを開始した。


急回転するエンジン。徐々に高まる電力と飛び散る電荷の火花。


F-28Dの下部、左右エンジンの間に搭載されているレールガンは雷を放たんと40秒の時を過ごす。


「充填率100パーセントだ」


「了解」


フランクはラダーペダルを駆使して、照準を敵艦の舳先に合わす。早く正確に。


舳先を狙わなければ敵の艦砲の餌食になってしまう。それは百も承知。


「ファイア!!」


照準が合った瞬間にフランクは引き金を絞る。


相反する電磁力によって放たれた40ミリ弾は音速の7倍ものスピードで目標に飛翔する。


刹那と呼べる時間に着弾。


敵艦は船底に風穴を開け、多くの船員とともに海の底へと沈んだ。


「す……すげぇ」


フランクは自分の放ったレールガンの威力に唖然を通り越した何かを感じぜずにはいられなかった。


「フランク、威力に驚くのは良いが味方の航空隊が不利のようだ、援護はどうする?」


追撃を加えるために反転する機内でエドはフランクに問う。


「バカ野郎、こっちもこっちで辛いんだ。援護なんて出来るわけないだろ」


「そうは言うがな、実はこっちに5機ぐらい来てるんだよ敵機が」


「は!?」


『フランク、俺だ。お前は敵艦に集中しろ。俺が敵機を叩く』


翔はフランクに告げた。


「お前一人じゃ……」


「任せろ。実際、対艦よりこっちのほうが性に合ってる」


翔のF-28はレールガンを投棄パージし、上空へと舞い上がった。


「かっこつけたけどさ、勝機は?」


敵の編隊へ向かう翔に隼人は尋ねる。


「特には、でもやるしかないだろ」


「もう、引っ張り回される僕のことも考えてよ」


「わーった。次から気をつける」


「次があればね」


皮肉の余韻が残ったまま、翔は敵のSu35が構成する高速でV字編隊に突入する。


高速ですれ違う編隊と単体。


上昇反転インメルマンターン


そして、鈍い反応の一機にミサイル攻撃。


放たれたミサイルは真っ直ぐにSu35のエンジンノズルあたりに直撃。その本懐とげた。


だが、敵は4機がかりで翔のF-28を袋叩きにする魂胆で襲いかかる。翔は上等だと言わんばかりに翔は翼を翻らせ、ドッグファイトに応じた。


Su35は翔のワイバーンを前後から包囲するという基本的な戦術にでた。


前の一機は巧みに翔を誘導し、後方の一機は翔をほふらんと30ミリ機関砲の牙をぎらつかせる。


「やるな……」


翔はサンドウィッチの具のような状況からの脱出を操縦桿を操作するの

と同時に模索していた。


翔の脳内に閃きがほとばしったのは敵が王手をかけようと水平飛行に移行した瞬間だった。


後方の敵機が翔に照準を合わさんと慎重になった瞬間を見計らって、翔は操縦桿を手前に引くのと同時に機銃を発砲する。


翔のアイディアは高度を変えずに行うループ機動の「クルピット」の間に発砲し、前方と後方の敵機に攻撃を仕掛けるという事であった。


それは狙い通りに行き、二機の敵機を一気に火の玉へ変えたのであった。


「3機撃墜」


そして、残る二機は勝ち目がないと判断し、その空域から撤退したのであった。





すでに4機撃墜した明は、呼吸が荒くなる自分に腹を立てていた。


「もう年か」


「まだ若いですよ大尉」


隣を飛ぶアリスは励ましの言葉を彼に投げかけた。


「ちげぇねぇ」


自虐的に笑い明はアリスに言う。その言葉にくすくすとアリスは愛想の良い笑い声で応答した。


そんなジョークも、最前線では命取りになる。アリスのレーダーサイトに一個小隊分の点が浮かび上がる。


「隊長、2時方向から敵が来ます。交戦しますか?」


「もちろんだ」


「大尉。無茶は禁物です」


「俺を若いって言ったのは誰だ?」


「あぅう。わりました」


「よろしい。行くぞ!!」


そう言って明とアリスのFー28Cは右旋回。敵編隊に接近する。


距離2000。


3機編隊だが機形は不明。


アリスと明の腕ならやってのけられる数。


「遠距離ミサイルは無い使い果たしたか……アリスそっちは?」


「私もです。格闘戦しかないです」


「同感だ」


相手編隊との距離は縮み、明は機体の種類が判明できた。Su36戦闘攻撃機を隊長機とするSu47の混成編隊だ。


Su36はサイドバイサイドの複座席を持つ大型戦闘攻撃機のSu32の発展型である。その横に広い機首故に連合側の兵士からは「ペリカン」などと呼ばれている。


隊長機のカラーリングは赤と黒を基調とする迷彩カラーだ。端から見れば滑稽極まり無いが、明はその姿を見て背筋に悪寒を走らせた。


「まずい……」


「どうしたのですか?大尉」


「奴は……奴は……」


「人喰いペペリヤノフだ」


『え!!』


人喰いペペリヤノフ。それはシベリヤの雌豹と並ぶ連合側の恐怖の対象である。明はそんな彼の編隊に喧嘩を売ってしまったのだ。


『逃げましょう!!』


「逃げきれねぇよ。やるしかない」


明は腹を据え、闘志に火をつけた。



「ほぉ。逃げずに戦うとは良い度胸だ」


ペペリヤノフは勇敢な敵機の姿を好感的に捉えた。


サイドバイサイドの複座を無理矢理に単席に改造したのはひとえに彼の持つ巨体がコックピットに収まらないからだ。


だが、そんな大型機で彼は多くの敵機を葬ってきた。故に連合軍は彼を恐れるのだ。


「さて、紳士諸君。敵を血祭りに上げよう」


『2了解』


『3了解』


スホーイの混成編隊は2機の最新鋭の敵機をしとめんとアフターバーナーを点火、ミサイル発射準備をした。



「四機撃墜」


彼方で爆散する連合の攻撃機を面白くなさそうにクローベル小隊長のリジーナ・カリヤスキーは一瞥した。


「クローベル4、生きてる?」


「はい、何とか?」


後方で飛ぶSu47のパイロットであるクララ・ハリヤスキー少尉は呼吸を乱しながら応答した。


「何機撃墜した?」


「二機です」


「上出来だよ、クララ。アタシの初陣と同じだね」


予想外のほめ言葉にクララは頬を赤くした。


「ん?あれは……」


右下方で交戦している味方の小隊が一機のF-28に苦戦している光景を見たリジーナは、しばらくそれを観戦することにした。


「どうしたのですか?大尉」


「いや、何か強そうな奴がいるなぁって」


クララも右下へ視線を移す。一機のFー28がSu35の群の中で獅子奮迅の戦いを繰り広げていた。


そして数分後、敵機は味方のスホーイを三機撃墜し、残る二機を撤退させた。


「クララ、アタシは奴とやるから上空で待機してて」


「え……戦うんですか?」


「もちろん。奴は絶対に鷲の騎士だ」


翔君!?


「いくよ……」


漆黒の羽をはためかせ、獲物に急降下する雌豹リジーナは瞳に捕食者の猛禽さを宿していた。


狙うは、鷲の騎士。


亜音速でリジーナは敵機めがけ急降下し始めた。



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