ずっと陰陽師のたまごだと思っていた幼馴染みが女の子だった。
「お前……ッッ! 陰陽師じゃなかったのか!?」
小学校以来の再会に懐かしさを迎えた直後、彼女から放たれた一言は俺を酷く驚かせた。
「だから、家が神社なだけで陰陽師でもなんでもないってば。ずっと前から説明してるのにまだそんな事思ってたの!?」
「いやいやいや、だってお前の家で『待ち人東より来たり』とか──」
「それはただのおみくじ」
「式神の紙切れとか」
「ただのおふだ!」
「お前んち『阿部』だし」
「字が違う!」
「親父『セイメイ』だし」
「正明! これも字が違う!」
「まあ、いいや。久々に会ったんだから、昔みたいに陰陽師ごっこしようぜ」
「しないってば!」
「だよな、俺達もう高校生なんだしな……」
懐かしさと寂しさが入り混じり、苦笑いで返してみるも、あの頃にはもう戻れないのだとすぐに冷静になった。
「君は随分と格好良くなったね」
「おう。あの頃のハナ垂れ小僧じゃないぜ?」
「背も高くなったね」
「180あるぜ」
「勉強は大丈夫? あの頃は先生だいぶ困ってたみたいだけど」
「全国模試で三位だったぜ」
「すごーい」
「だろ」
「趣味は?」
「陰陽師ごっこ」
「しないって。……でも、まあ。すっかり素敵になっちゃって……さぞかしモテるんじゃない?」
「それが……」
「えっ、ウソ!?」
「随時募集中です」
「ほんとにー? なら立候補しようかな。私、昔から君のことちょっと良いなぁって思ってたんだよ?」
「マ?」
「ホントにホント。ねぇ? これから何処か行かない? 立ち話もなんだしさ」
「陰陽師ごっこ出来る所?」
「ないない。……う~ん、でもここから東にあるカフェが吉とみた。さ、いこいこ♪」
そう言うと、彼女は俺の腕を掴み、嬉しそうに歩き出した。
「閉まってるし!」
「西のハンバーガーショップが吉とみた」
ただ嬉しそうに隣を歩く彼女は、ずっと今でも昔のまま、可愛い陰陽師だった。