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封印

「ん?」


これは私が囲まれているのかしら?わけがわからずキョトンとしていると、


「受け取って下さい!」と花束を次々に渡される。


「え?え?」抱えきれないほどの花束で身動きが取れず、お父様とお母様も花束を持ってくれる。


「これは1度誰かに家に運んでもらわないといけないわね」お母様がニコニコと嬉しそう。


「見て、どれもお手紙が入ってるわ」


歩きながらいくつか手紙を取り出してお母様がバッグに入れた。


「すごいな」驚いた様子のランベルトが合流し、レストランの席についた途端。


「マリレーヌ、本当に素敵な歌だった!」


瞳をキラキラさせてランベルトが褒めてくる。


「ありがとう」


「マリレーヌ、これを見て!」


差し出された手紙の封筒に書かれた名前に見覚えがあった。


「エディ商会の息子さんよ!」


嬉しそうに笑うお母様が不思議。


「なんて書いてあるのかしら!?」


そのまま私宛の手紙を開封して読み出しそうな勢いだったので、


「家に着いてから一人で読んでみます」と答えた。


「そーお?」残念そうにシュンとするお母様が可愛いけれど、頂いた手紙をみんなの前で読むなんてとんでもない。ご馳走をみんなで食べてから家に戻り、部屋でモサくて動きやすい服装に着替えて、もらった手紙にざっと目を通す。


ランベルトたちと出かける前にお母様に報告しようと思い、ティールームに行くと両親だけがいたので報告する。


「全て、交際して欲しいという内容でした」


「あらまあ!」少女のように瞳をキラキラさせて喜ぶ母に、苦いものでも食べたかのような顔のお父様。


「また帰宅してからちゃんと読みます。一応目を通したのでお母様も見ておいてください」


「わくわくするわ!」


「で、ランベルトとルチアノは?」


「そろそろ降りてくるんじゃないかしら」


ドアが開いて二人が入ってきた。街を歩くのでランベルトもラフな平民の服を着ている。


「行きましょう!」そう声をかけて街へ繰り出す。


色んなお店と音楽と花で溢れ返る通りを三人でおしゃべりしながら歩いて、気になるものを見たり買ったり楽しんでいると、ルチアノの友達に出会い、しばらく遊んでくると言って離れてしまった。

ランベルトと二人きりになったので、あちこちに置いてあるベンチのひとつに座る。


「なんか大人しいね」


「あ、ごめん。色々と考えてた」


「ふうん」


「マリレーヌがもらった手紙にはどんなことが書いてあった?」


「全てラブレターみたいなものだったわ」


「そっか・・」


「私、まだまだ恋愛しないから」


「そう・・だよね」


「ジュストにちゃんと振られるまではね」


「ジュストのことが成功したら・・・」


「うん?」


「僕のことを恋愛対象の1番目の候補にしてくれないか」


「わかった」


「え?」


「いいわよ。大歓迎、大光栄、大感激、大・・歓喜?」


「色々大きい気持ちを作ったな」くっくっと下を向いて笑う。


「私、ランベルトに相応しいとは思えないけど、でもランベルトのことは好き・・・にならないように耐えてる。変な言い方だけど、ふふ」


「僕はもうずっと・・」


「うん、わかってるよ」


「まだ言っちゃダメだよな」


「そうね。言ってるようなものだけどね。でもまだ私達の年齢で一生好きでいられるほどの気持ちかどうかなんてわからないし、先の楽しみにとっておく」


「うん」


「いつでも他に好きな子ができたらそっちにどうぞ」


「それは・・キツいな」


「今はね」


「ちゃんと証明してみせるよ」


「証明してみせなくていい。そんな宣言は自分に呪いをかけているようなものだわ。私みたいにね」


「マリレーヌみたいに?」


「ジュストと恋愛をしないという誓い」


「・・うん」


「今日からモサくない私を封印する」


「うん。でもこの姿も本当に可愛いよ」


「ありがとう」



□  □


もらった手紙には全て返事をした。


「まだまだ子供なのでよくわかりません、うふ」


というニュアンスでお母様の言う通り書いた。


「完全に断ってしまう必要はないと思うのよ。だってあなたはまだ恋愛をしたくないだけで、この中の誰かのことを未来で好きになるかもしれないんだし」


散々モテ生活を楽しんだ後に父と結婚した母の手腕に任せることにして、可愛いを封印してしまえば目立たず生きて行ける。


この前なんてカフェでルチアノとお茶をしていて、隣の席でラブレターをくれた1人がお茶をしていたのに気づかれなかった。ルチアノといるのだからわかりそうなものなのに。

学校には行かず、家庭教師に教わっているので、他の子との接点も少ない。

必要なのはジュストと出会ってみることだけだ。王子様と会える機会なんてそうそうないけれど。


そろそろ帰国する時期。決まればランベルトが教えてくれることになっている。

ランベルトはしょっちゅう遊びに来ている。最近はお父様と二人で話していることも増えた。


「ねえ、お父様と何を話しているの?」


「仕事についてかな」


「ふうん」


「何か不満?」


「うーん・・・」


「ん?」


「もう少しだけ・・私とも遊んで」


「うん!!」


「え、いいの?」


「嬉しいよ!もっとこっちに来る時間を増やすから」


「う、うん。ありがとう」


甘えてしまってから気がついた。これじゃあランベルトに恋してるみたいじゃない。いや、もうしてるのかも。でも!私はジュストに振られなきゃいけないわけで。

ほんの少し悶々と考えていると、


「あ、ジュストが2週間後に帰ってくる」唐突にランベルトが言った。


「フィオレ様に会いに来るかしら?」


「どうだろうね。会えたら色々尋ねてみるよ」


「いつもありがとう」


「どういたしまして」


そういって笑うランベルトの笑顔にキュンとしたけれど、心の中の恋の部屋の扉にしっかり鍵をかける。


□  □


帰国したと聞いてから3ヶ月も経った。

誤字脱字指摘ありがとうございますm(__)m

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