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友情と優しい恋

「ところで、君はどうして変装しているの?」



「こっちが本当の私です」


「昨日の姿を知っているのに、こっちが本当だと言われても納得できない」


「・・どちらも私なの」


「どうして2つの君が必要なんだ?」


あれこれ嘘を重ねて誤魔化すより、頭がおかしいと思われても素直に話して味方になってくれたほうがいいのかもしれない。


ルチアノが川で魚を捕まえたいと言うので、先に歩かせる。


「頭がおかしいと思われるのを覚悟して言うと」


ジュストの中身と縁が濃く、今回はどうしてもジュストと結ばれる人生は避けたい。だけど、関わらないというのもダメで振られるためにも何かしなければならない。ジュストの中身は私の中身に執着しているので、普通にしていたらたぶん好かれる。なので、傲慢に聞こえるだろうけれど、モサい自分でいることも大事。できることなら、ジュストが誰かを愛した後に告白すれば玉砕できるんじゃないかと目論んでいる。


ということを説明した。


「理解できなくても、協力してもらえなくてもいいの。ただ、もし私の言っていることが気持ち悪くても、ジュストだけにはバラさないでもらえると助かります」


そう言い終えた時、川に着いた。


考え込んでいる様子なので、ルチアノと一緒に川に入る。スカートが濡れないように捲くりあげて手で持ってから、貴族の世界じゃ脚を見せるのはタブーだったかしら?と思ったけれど、ランベルトは思考の世界から戻ってきていないようだったので気にしないことにした。


ルチアノが小さい魚を見つけて網で追いかける。まだ冷たい水温が歩いて来た足に気持ちいい。


捕まえては逃し、捕まえては逃して遊んでいると、思考の世界から戻ってきたランベルトも川に入ってくる。


「貴族さまは川になんて入らないと思っていたわ」


「僕はここと同じように伸び伸びとした土地で育ったから、ひと通りの遊びを知ってるよ」


そう言って笑った。


少年から青年へと差し掛かる時期独特の骨っぽさと微かに残るあどけなさが不安定に見えないのがランベルトの魅力なのかもしれない。


「決めた」


「どう決めたの?」


「僕はマリレーヌの全ての味方になるよ」


「ありがとう!」


そうなってくれたらいいなと思ったけれど、無理だろうなという気持ちが大きかったので、嬉しさのあまり気安くランベルトに抱きついてしまった。


「しまった!スカートから手を離しちゃった」と言おうとしたら、ランベルトが傾いてつられて二人で川に座り込む。


「なにやってるの」と引っ張ろうとしたルチアノをぐいっと引っ張ると、私達のように川に座り込んで、


「三人でずぶ濡れならお父様もお母様も怒らないわよね」と笑った。


家に戻り、それぞれ服を着替えて居間でランベルトの服が乾くのを待つ。


ルチアノは友達のところへ遊びに行ってしまったので、私とランベルトの二人きりだ。


「さっそく教えてほしいことがあるの」


「ジュストのことだね?」


「ええ。フィオレ様と上手く行きそうだった?」


「話も弾んだようだし、このまま行けば婚約するんじゃないかな」


「ほんと!?」


「君は寂しくないの?」


「全く」


「本当に?」


「ええ!」


「それならいいけど」


「私達、もう友達でしょう?」


「え、うん。もう友達ってことでいいのかな」


「いいのいいの。これから一緒に作戦考えたりしてね」


「わかった」


「約束ね」


二人でお互いを知るために色んなことを話している内に、ランベルトの服が乾いて帰る時間になった。


「いつでも遊びに来てね」


「ありがとう。またすぐ来る」


「楽しみにしてる!」


ニコニコと見送ったら、待ち受けていた両親に根掘り葉掘り訊かれたので、ジュストのことだけ誤魔化して後は正直に話した。


□  □


「大体半々ぐらいだな」


「何が?」


「マリレーヌがモサくなってる割合」


「今日はモサくないのよね。こっちのほうがいい?」


「それが、最近はモサい君も可愛いって思うようになった」


「あはは。ありがとう」


あれから1年が経った。時々ジュストがフィオレに会いに来るらしく、その様子を私に教えに来てくれる。


「ジュストは恋をしてる?」


「気に入ってはいるみたいだけど、恋をしているのかと言われるとちょっと微妙かな」


「そう・・・じゃあまだまだね。そういえばジュストっていくつなの?」


「14歳だ」


「ランベルトも?」


「ああ。誕生日も1日しか違わない」


「いつから仲がいいんだっけ?」


「3歳頃にはもうよく一緒に遊んでいたよ」


「そんなに小さい頃から・・・。失礼なことを承知で尋ねるけれど、血が繋がってたり・・?」


「いや、それはない。ただ、貴族と王族はなんだかんだ血縁関係だとは思う」


「まあ・・それもそうね」


「僕とジュスト、似てる?」


「顔や姿は似てないんだけどね」


「そんなことを言われたのは初めてだな」


「まあいいわ」



「王族が婚約するなら何歳以上なの?」


「決まっていない。本人同士が希望するなら3歳だってできるだろうし、30過ぎても婚約しなかった王族もいるらしいよ」


「ジュストが婚約するなら?」


「・・・結婚したいと思ったときか結婚しなきゃならないときじゃないか?」


「そう・・。ジュストの結婚をコントロールすることなんてできないものね」


「今できることは特に無いと思うよ」


「わかった!じゃあ遊びましょう?何して遊ぶ?」


「カードゲームでマリレーヌをこてんぱんにやっつけて遊びたい」


「言ったわね」


□  □


「ふふん」


「くそ!いつになったら勝てるんだ」


「お貴族さまのおくちが悪いわ」


「なんでそんなに強いんだ」


「だから記憶を持ってるって言ったじゃない」


「必ず君に全勝できるようになってみせる」


「私、負けず嫌いなの」


「負けてあげたくなる・・」


「あげたく?」


「勝てるようになってから言え、だろ?」


「ふふん」


一年の付き合いでわかったけれど、ランベルトは口では悔しがる割に本当に悔しそうな感じがしない。懐が深いのか、わざと私に負けているのか・・それとも両方か。


まあ、勝たせてもらえる間は存分に威張らせてもらおう。


公爵家とはいえ次男だからか、全てにおいて遊びの余裕が見える。1人の魅力的な男性として大好きになっていた。



□  □



「今年は歌うことにした」


「本当に!?」


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