Op.11『……「成長」したんや』……
一週間後。
鈴森家の朝食の席で納豆ごはんをかきこむミカン。
しかも、私の『箸』と『茶碗』を使っている。
……こいつ!『舐り箸』するタイプかっ!!
「…ッ!?……なんでッ!?」
怒りよりも先に疑問が湧いてきた私は、思わずミカンと同じ食卓を囲んで朝食を摂っている『お父さん』を見た。ミカンって、私のスタンドだから『他人には見えない』んじゃなかったの?
お父さんは手のひらでミカンを指し示しながら、私に言った。
「昨日ゴルフの三次会で『愛媛さん』とたまたまご一緒してな!父さんすっかり意気投合しちゃって、家に連れてきちゃった!」
テヘっ…と赤い舌を出す父。それを見て舌打ちする私。
……ていうか『愛媛』っていうの?ミカンの本名!?
「……いや何で連れてくんのよ!『黄色いミカン』じゃんどう見ても!!」
「……彩ノ。いつも父さん言ってるよな。『人を見かけで判断するな!』って」
「そうよ、彩ノ!……お母さんも愛媛さんと『歌舞伎』の話で盛り上がっちゃって。『野晒悟助』がわかる人なんてあんまりいないから……」
「イヤイヤ『名作』ですって奥さん!むしろワイなんかよりも奥さんの方が……」
「ハッハッハ愛媛さんは色々お詳しいですな!」
「はい!ワイ『遠隔自動操縦型』なモンで、『調べる』のは得意なんですわ!……お父さん宜しかったらワイが知ってるゴルフの『穴場』教えましょか?」
私は、仲良さげに私の両親と談笑し始めたミカンと無理矢理に肩を組んで、ミカンに耳打ちをした。
……頭そのものが『黄色いミカン』なので、どこが『耳』なのか分からないけど。
「アンタ、『他の人には視えない』んじゃなかったの!?」
「……『成長』したんや。『おまえ自身』がな彩ノ!『愛媛ACT II』や!!」
だからワイ他人にも見えるんや!と、まるで眩しいものでも見るかのように私の顔を見て目を細めるミカン。
『成長』ッ……!
こいつ成長すんの!?『黄色いミカンのおじさん』なのに!?
「これからもヨロシク頼むで!彩ノ!」
そう言ってミカンは、『ポンッ…!』と口の中で黄色い舌先を鳴らしながら、三本の指先を伸ばした右手の手首から先を『シュ…!』と振り、私の目を見ながら片目をつぶり『ウィンク』をした。
ミカンの言葉と仕草に私は激昂し、私の椅子の上にふんぞり返って座っているミカンの黄色い顔面に『右正拳』を叩き込む。
私に殴られたミカンは座っていた私の椅子ごともんどり打って倒れ、口からアワをふき手足をピクピクさせながら台所の床の上に大の字になって気絶した。
……自分のスタンドを殴っても、私の方の顔面には痛みは無かった。
どうやら『私が成長』したことで、ミカンと本体は完全に切り離され、『別個の存在』になってしまったらしい。
それが『いいことなのか、どうなのか』。
……それは、私には分からなかった。
………
うちの蜜柑は色々うるさい
終
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