Op.10『今は、これが精一杯』……
翌朝。
学校に行く道の途中、私は前を歩く『敦くんの背中』に気付いた。
朝の通学路は、同じような黒い学生服の後ろ姿が溢れているというのに、敦くんの背中には私はすぐ気が付く。……どうしてだろう。
声をかけようかどうしようか迷っていると、敦くんの方がすぐ後ろを歩いている私に気付き、挨拶してきた。
「オス彩ノ」
「……おはよう敦くん。ていうか、なんで分かったの?」
「……なにが?」
「なんでもない別に」
「……なんかオレ、『皆の中でお前のことだけ』分かるんだよな昔から。『オレのスタンド能力』なのかも」
「……いや、普通にキモいって!」
「そうか?……そうだな、キモいよな普通に。でも仕方ないじゃん分かるんだから」
「……昨日『牛人』読んだよ。でも私は『悟浄出世』の方が好き」
「そうか、オレも好きだな」
「うん。好き」
それからしばらく。
私と敦くんは二人共黙ったままで並んで歩いた。
まっすぐ前を向いたままで、私は敦くんの顔を見ずに歩く。
……見えないけど、多分敦くんもそうしているのが何故か私には分かる。
私達は黙ったままで、もうすぐ学校の正門に辿り着く。二人だけの時間がもうすぐ終わる。
でも、
なんか知らないけど。
……私は、『もう大丈夫』。
………