夜想曲
寄せくる波のさざめきが 暗い浜辺に繰り返し
わたしは、ひとり天の川 流れる星を探します
月の浜辺の汀には
泡立つ波に遊ばれて 光を撥ねる細石が
はらりはらりと転びます
端には、梅雨の名残り雲
月の姿も朧げで
遠い小島の灯台の 光は、淡く滲みます
石に腰かけ、遠浅の 海に素足をひたしては
波に浚わる 白砂の 儚き様を 想います
波間を渉る風は、まだ
愛しき人の面影を さらうほどには吹きもせず
わたしは、いまも、わたしです
いつか、深海の暗闇の 光も果てる深淵を
描いて、そこで朽ち果てる 夢にも、しばし耽ります
わたしは、やはり、ひとりです
あなたのために生きた日の こころは欠けて、いまもなお
埋めるものなどありません
だから、「星へ」と願うより
うかがい知れぬ、夜の海に こころは、惹かれ揺らぎます
揺らいで、落ちてしまいます
波は、果てなく続きます
調べは、甘く、毒に似て ただ、ひと言を繰り返し
わたしを、闇に熔かします