ノフィンの暴走
「うわあああん怖かったよお!!!」
奴隷として捕まっていた子供達を救出していくユグドとゾノミ。
「怖かったねもう大丈夫だよ!」
ゾノミは震える子供を抱きしめながら慰める。
「これで全員出たかな?」
ユグドは少し疲れたと言ったふうに額を撫でる。
「お姉ちゃんは?お姉ちゃんはいるの?」
「お姉ちゃん?」
子供達の言うお姉ちゃんはこの中にいないようだ。
助けに行ってあげたいと思うゾノミはお姉ちゃんと慕っていた少女について尋ねる。
「ねえ僕、お姉ちゃんってどんな子なの?」
「髪が青色で優しいし可愛いのに凄く強い人なんだ!」
「凄い事に王女様だったらしいよ!
王女様が奴隷になるなんて…きっと国を滅ぼされて…。
可哀想に…尚更助けに行ってあげなければ…。
きっとまだ中にいて今か今かと助けを待っている事だろう。
助けに行かないとバチが当たる。
「ねえユグド…」
「子供達の言う女の子を助けに行くんだろ?一緒に行くよ!」
流石ずっといるだけにゾノミの言いたい事を察してくれたユグド。
「私達が連れ出してくるからここで良い子にしててね!」
ゾノミは子供達の頭を撫でながらそう言い、ユグドと一緒にもう一度廃工場に潜っていった。
カツンカツン……。
私達の靴音しかしない廃工場の中。
しかし向こうから誰かが近づいてくるのを気配で感じた。
ビチャ……ビチャ……
何やら液体音のような音がおまけでついているけれど。
「モンスターかも知れない……ゾノミ…気をつけろよ!」
「うんっ!」
気配で只者では無いと感じたユグド達は身構えながら近づく。
…………あれ、この子………
正体が見えた。首輪をした女の子だった。
ただ子供達が言ってた少女に特徴が一致していたのでつい緊張を解いてしまった。
「大丈夫です、私達は貴女を助けに来ました!」
衰弱しているようで、おぼつかない足取りの少女をゾノミは肩を掴み、説得する。
でもこの子、何やら様子がおかしい。
「この子、背中に変なものを生やしていないか?」
「そういえば…」
確認すると、それは蠢いていてベタベタしており、少女の背中と尻から未知の生物が生えているような感じだった。
「………逃げ……て……」
その時少女の口からそのような言葉が出てきた。
「逃げるって…」
そう言った途端、少女に取り憑いたその物体は突然ゾノミ達にその触手を飛ばし、体を絡め取ってしまった。
ベタベタしたものが体をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
そして醜悪な臭いを放ち不快な気持ちにさせる。
「くそっ!なんだこれは!!」
ユグドが剣で触手を斬ろうとするも剣が錆びて使えなくなる。
うぐっ息が出来ない!!
口元を押さえられ、息を出来なくされる。
その上衣服を引き破られ、ゾノミとユグドは襲われる形となる。
そして少女も、その体は自分の体から生えた触手そのものに襲われているようにゾノミの目からは見えた。
「うぐっ!こいつ…俺達の息を止める気か……!」
しかしすぐに殺そうと言う魂胆は見えない。
逆に体を散々楽しんで、後で殺そうと言う魂胆が見え隠れしていた。
ゾノミはようやく手を突き出し、詠唱した。
「ゾノミファイア!!」
ゾノミの手から炎の弾がぶつけられる。
それは触手に当たり、触手は「ギャアァ!」と悲鳴を上げた。
しかし触手はゾノミの魔法の為に突き出した腕を固定する事で封印し、体を弄び出した。
『グフフ…次は外にいる子供達……』
なんと触手の声がゾノミの耳からは聞こえ、外にいる子供達を標的にするかのように仄めかす言葉が出てきた。
なんとか阻止しなければーーー!
ゾノミは触手から苦しめられる内に自分が経験した事の無い記憶がゾノミの中で駆け巡ってきた。
ーーー
『あれ、ここは…』
深い深い森の中にある廃墟をある亜人が住み家としており、この中に迷い込んだゾノミにそっくりな少女を捕らえ、肉体改造を施すシーンが。
それ以来体を作り替えられた少女はいやらしい欲望を持つようになりその上暴走時には体から触手が伸ばされて手当たり次第に獲物を襲うと言う習癖が現れてしまう。
ーーー
それをゾノミが受けついでしまっており、自分の中にある「触手としての自分」が今目覚めようとしていた。
ドクン!!
ゾノミの中の鼓動が鳴る。
そしてグングングングンと、人ならざる感情に支配されようとしていた。
「あれは……!」
ユグドがゾノミの姿を確認するとゾノミの体からも触手が生え出しているのに気づく。
そしてそれは、まさに少女の触手と触手(人ならざるゾノミ)のバトルへと発展するのだった。
『グギャーーーァ!!!』
ゾノミから生えた触手がノフィンに牙を向ける。
理性を失ったノフィンは報復せんかの如くゾノミと対抗する。
そして触手と触手は激しく撃ち合いを始め、どちらが勝つか負けるかの死闘が始まる。
ドカンドカンドカン!!!
壁の至る所が破壊され、自分らも身を投げられる。
「ぐあっ!」
地に放り出されるユグド。
しかしなおノフィンとゾノミは格闘を続けていた。
なお人としてのゾノミは気絶しているかのように見えた。
「ゾノミ…うっ、撃ち合いが激しくて近づく事が出来ない…!」
ゾノミに駆け寄ろうとするが触手と触手の激しいチャンバラに一歩も近づけず、足止めを食らう。
しかし行かなければ男が廃る!
ユグドは自身にバリアの魔法をかける。
「今助けに行くぞ、ゾノミーーー!!!」
ドオオオオォン!!!
そして周囲は眩い光に包まれた。
ユグドの決死の突撃は攻を奏すか?




