廃工場での死闘
「何?人身売買をやめろだって?偉そうな事言ってんじゃねえ!!」
逆に開き直る連中。おそらく当然の反応かも知れない。
しかし人身売買は許される行為じゃない。
それは喚起しているユグドとゾノミがよく思っている事であった。
「やはり上手く取り合ってくれないものだね」
「そうね、でもここで引き下がる私達じゃないわ、そうでしょ?」
表情を崩さずに冷静にやり取りするユグドとゾノミ。
「二人とも可愛い顔してるじゃねえかてめぇらを人身売買してやるぜぐへへへ!」
イカれた連中は拳銃を構える。
「やれるものなら…」
ゾノミが挑発する。
「蜂の巣にしてやるぜ!!!撃て撃てぇ!!!」
連中は拳銃をぶっ放す。
狂乱しながら撃つ様子は見ている側からしても危ない。
流石人身売買をやっているだけに非合法な事にも平気に手を染める連中だ。
薬も普通にやっているだろう。
しかし不思議な現象が今その場で起こった。
なんと奴らの撃った弾は途中で動きを止め
、重力に従うようにボトリと地面に落ちたのだ。
それはゾノミの詠唱魔法の効果でゾノミはその間ものぞのぞと呪詛を唱えていた。
「残念だったな、拳銃は俺達には通用しない」
「このガキが…調子に乗るなよ!」
しかし彼らはそこで引き下がる筈がなく拳銃を収めて代わりにそれぞれの「武器」を持って二人に襲い掛かった。
ヌンチャク、ソード、カッターや三角定規に至るまでそれらを持って一斉に襲ってくる連中。
ユグドがゾノミを守るように前に出て自ら盾の役を一身に引き受ける。
「うおおおおっ!!」
ユグドの横薙ぎ、縦薙ぎの連続攻撃が炸裂する。
それは鎌鼬となって悪業を働く者達を斬り裂く。
しかしそんな彼らもこう言うシナリオは想定内で、それぞれが盾で防いでいた。
敵は信じられないスピードで間合いを詰め、そして一閃を放つ。
「ぐあっ!!」
「ユグド!!」
早速押されてしまうユグド。
ゾノミは何かあると周囲を張り巡らせる。
するとある者の姿が…。
やはり魔道士系の存在がサポートとしてついており、その者が魔法を唱える事によってならず者達の身体能力をブーストさせている。
「どりゃあ!!」
ガキイイィン!!
ユグドの剣が弾き飛ばされ、それは宙で回転し地面に突き刺さった。
手を抑えてもがくユグド。
早速危機一髪!
「へへへお前はさっきから何もして来ないな!!」
今度はゾノミに手を出してくるならず者。
「あらそれは勘違いというものですわ」
「何っ!?」
実はゾノミは魔力を溜めていた。
ユグドが懸命にゾノミを守っている間、ゾノミは魔力を溜める事が出来る。
それを放つには早すぎたが放つだけで充分威嚇の効果はあるだろう。
「ゾノミサンダー!!」
ゾノミは魔力を解放した。
敵は身を防ぐ。
しかしゾノミが狙ったのは彼らでない。
奥でブースト魔法をかけているローブの人物だ。
「キャアァッ!!」
ローブの人物は甲高い悲鳴をあげて落下した。
「女性だったの、可哀想な事しちゃったわね」
ゾノミは初めて女性と知り、氷弾にしとくんだったと反省した。
その隙にユグドは大地に突き刺さった剣を再び引き抜き、連中に斬りかかる。
「でやーーーっ!!」
「こなくそっ!!」
必死に殺しにかかる連中達。
正に鬼の姿である。
「こちとら経営している飲食店が破綻になって盗賊に落ちぶれたんだ!これをやらずして何をして食っていけば良いんだ!!」
(可哀想…飲食店をやっていたのにコロナのせいで続いていけなくなり盗賊に落ちぶれてしまうなんて……)
同情はするがここは心を鬼にしていかないといけない。
だってこれは戦争なのだから…。
ユグドが多勢の連中と戦っている間ゾノミは出来るだけ早く魔力を溜めようと汗をドバドバ出しながら詠唱しまくった。
結果いつでも巨大な魔力を解放出来るまでは溜める事が出来た。
「ユグドッ!下がって!!」
魔力をMAXまで溜めたゾノミはユグドに合図をかける。
ユグドはゾノミの言う通り後方に下がった。
「空気中爆発!!!」
チュドドーーーン!!!
「ぐわああああぁ!!!」
断末魔を上げて吹き飛んでいく武装連中。
ゾノミの魔力を解放した中心は灼熱の地獄と化し眩い閃光が走り熱がユグドやゾノミの肌にも伝った。
ゾノミは最高の攻撃魔法でならず者達を一掃した。
一方ゾノミの放った魔法の中心には3メートル弱のクレーターが出来ていた。
それを陰で見ていたヘルは「こいつらは正真正銘の勇者…まともに相手してはならない相手だ…なら奴を使うしかない!」
と廃工場の中へと入っていきある者を動かす準備をしていた。
一方、ユグドとゾノミは
「君のおかげで助かったよ」
「いいえ貴方が守ってくれたからこそ私は魔力を放つ事が出来たわ」
と労いあい廃工場の奥へと進んだ。
そこで彼らにとって脅威となるものが構えている事も知らずに…。
『なんだかわからないけど血が騒ぐ…一体何が起こってるんだ…?』
ノフィンはある禁断症状に襲われていた。
誰でも良いから襲いたい…暴れたい衝動が止まらない。
いっその事この少女を襲ってしまおうか?
野生の血と言うものだろうか?
理性が吹っ飛びそうになっているのだ。
200年前、ノフィンは人間だった。
いつもクールで滅多な事では怒らず、人柄も温厚だったのだが、転生後はマッドサイエンティストの薬の材料に使われ人ならざる姿になっている。
事もあろうに現在は少女の体内に寄生しているのだ。
そしてノフィンの理性が無くなりつつあるのはヘルが魔法でノフィンを暴れさせようとしているからだ。
「痩せ我慢するな儂の可愛い魔法生物よ、取り憑いている少女でも、誰でも襲えば良いではないか!」
ヘルはモニターを見ながらニヤけ、詠唱を続けていた。




