王女は夢を見る
ーーー再び戻って廃工場の中。
ズキーーーーーン!!
耳鳴りがしたかと思うと突然少女に頭痛が襲いだした。
「がっ!あ、頭が痛い………!」
少女は頭痛にもがき表情を歪める。
「反応が現れおったな!頭が痛いのか!」
ヘルの声も少女には聞こえていない。
少女は吐き気が襲う程の頭痛に襲われ身体中からドバドバと脂汗が出る。
しかししかし、少女は頭痛を少しでも軽くしようと体を捻ってみせたり体を揺さぶるが頭痛は治らず「ああぁ!」ともがき苦しむ。
そして少女は襲ってくる頭痛に耐えきれずリバースする。
「この小娘!誰がリバースして良いと言った!!」
「ぐぶっ!」
少女はこの時点で気を失ってしまう。
そのあと少女は走馬灯のような風景を目の前にするのだ。
ーーー少女の思い出。
夢のような世界、立派な服を身に纏った王と綺麗なドレスを纏ったお妃が友達と遊んでいる少女を目を細めて見守る。
少女は今の少女よりも一回り小さく、幼女であった。
「ぱぱーままーいいものみつけた!」
その幼女は綺麗なものを見つけて拙い足取りで嬉しそうに王とお妃に見せに行った。
「ヨシヨシ良い子だ♪」
「ウフフ子供は可愛いわねー♪」
そしてそして、少女もある程度成長し教育係から色々知識を学ばされ剣術とかも叩き込まれていた。
「ま、参った!」
「やったあ!」
少女は勝利を飾った。
「本当に王女には敵いませんな!」
教育をつけていた本人も少女の強さに舌を巻いた。
「お上手ね本気出していないのに…」
「私もお姫様みたいに強くなりたい!」
「僕も!」
少年少女が少女もとい元王女に駆け寄る。
「押さないで今教えるからね!」
「「わーい!!」」
………あの時は幸せだった。
運命の歯車が狂いだしたのはこの国が滅ぼされた直後だった。
滅ぼされた故郷の国の名前はなんだったっけ…。
それすら思い出せない…幸せだった幼少の日々は覚えているのに…。
その時の事だった。
ある若者の声が少女を呼びかけていた。
「どうなっているんだ?そこの君!返事をしてくれ!!」
「誰ですか?ここにはあのいやらしい親父と私しかいません…」
「良かった!人がいた!僕はノフィン、確か魔王と戦いに行く途中で何者かに捕まったまでは覚えているんだが…」
ノフィンと名乗った青年は少女の声を聞いて安心したのか話しだす。
「貴方も奴隷として連れて来られたのですか?」
「奴隷?違う僕は勇者だ!」
少しムキになるように青年は言った。
ただ互いの姿はわからない。
少女の前はモヤがかかったように見えず、繋がれた感覚も失い、かと言って身動きも出来ないからだ。
口を動かす(つもりになって)話す事によって意思疎通が出来ていると言うところだ。
「勇者……聞いたことがありますわ…魔王コロナの時代を終わらせる為に若い人達が武装してコロナに立ち向かいに言っていると……」
「良かった、それより君は……」
!!!
ノフィンが言いかけた所で少女の意識が戻った。
(な、なによこれ……どうなってるの!!?)
意識を取り戻したは良いが少女はとんでもない目に遭っていた。
果たしてどんな目に遭っているのか……!?
(不快な臭いとグフグフ言う低い声。
それと、体のあちこちを触られているような…。
うっ!痛い…!)
少女は意識を取り戻したが、よりにもよって取り戻してはならない所であった。
数人の醜い男達が薄気味悪い笑みを浮かべながら少女のあちこちを触っている。
「やっとお目覚めだな、元王女様♪」
そしてそして、不敵な笑みを浮かべながらヘルがタバコを咥えて仰向けの少女を見下ろしていた。
「う…ヘル…こんな事をして…タダで…ぎいぃ!!」
黙れと言わんばかりに痛覚を与えられる少女。
(体に力が入らない…これはさっきの薬の効果なの…?)
抵抗するにも体に全く力が入らない…それなのに痛くて、不快でどうしようもない感情ばかりが蠢く。
しかしヘルはそんな少女の気持ちもつゆ知らずこんな事を言い出した。
「まだ王女様気分が抜けないみたいだな、お前達、元王女だからと言って遠慮はいらん、思う存分痛い目に遭わせてやれ!!」
「本当か?ラッキー♪」
男達の手がどんどん激しくなっていく。
「う、う、嫌……ああぁ……!」
悲鳴すら上げづらくなっている。
私どうなるんだろう。
その時少女の脳裏にノフィンの声が響いてきた。
先程話してたのと違う、体の内部から発せられているような違和感がある。
『君!さっきから変な臭いするし痛いけど襲われているのかいっ!?』
ノフィンが聞いてきた。
(ノフィンさん…助けて…)
少女は声を振り絞ってノフィンに伝えた。
『助けたいのは山々だが僕も本調子が出ない…君がプラス思考になればなんとかなるんだが…』
(プラス思考?なによそれ?こんな目に遭ってプラス思考になれって言うのが無理じゃないの!)
『すまない…ここで不本意だが君に夢を見させてあげよう、チイさんに出会う夢だ!』
ノフィンは少女に夢を見させた。
少女がチイさんの家に来てご馳走になり、一緒にゲームをしたり駄弁ったりする夢。
チイさんは可愛かった。
一緒にいるとパワーが貰えるような、そんな不思議なオーラをチイさんから感じた。
それにしてもノフィンさんがチイさんチイさんと名前を出すけどよっぽどお気に入りの人なんだなと思ったが成る程と思った。
一方で、ノフィンさんの様子に変化が見られたのはこの後すぐの事だった。
少女の背中から謎の物体が生えだす。
「な、なんだガキの体から変なものが生えやがった!?」
「うへぇ気持ち悪い!!」
(よくわからないけど気持ち悪いのはアンタ達よ…)
声を出す元気もない少女は代わりに心内でそう突っ込んだ。
その直後の事であった。
少女の背から生えた翼のようなケロイドと尻尾のようなケロイドがあたかも刃の如く高速の速さで回転をした。
「!!?」
男達はフウッと風が吹くのを感じたが、その後首がはね飛んだ。
「な、何が起こった!?」
ヘルもさすがに慌てる。
返り血は浴びるが起き上がる力もない少女。
ノフィンは内心思った。
(栄養取りすぎたようだ…後でエネルギーを返してあげよう…)
先ずはこのいけすかないオヤジを撥ねてか、だ。
「ちっ!!」
ヘルは煙玉を発しそのまま姿を消した。
『逃がしちゃったか…起きれるかい?』
ノフィンは少女に聞いた。
「起き上がれない…」
やはりか、ノフィンは少女にエネルギーを返す事にした。
その直後、チュドーーーンと爆音が響いた。
二人の勇者、ユグドとゾノミが廃工場を守る兵士と戦っている最中だった。




