復讐のヘル
ーーー数年前…。
ヘルは11人の家族と仲睦まじく暮らしていた。
暮らしそのものは質素だったが、皆で助け合い、病気の時も身をより寄せ合い、食事も皆で分け合って食べ、幸せに過ごしてきた。
「やあヘルさん!今日も仕事に精が出るねえ!」
「やあコダイクさん!11人の家族を養うのは大変ですよ!」
街の人達と挨拶を交わしあい、ヘルは仕事場に向かう。
その時蹲っているお婆さんに出会う。
「お婆さん、大丈夫かい?」
「痛た、腰がやられてしもうた!」
「しっかりして!」
ヘルは老婆を励ましながら病院に送った。
「ありがとうよ、お前さんのお陰で助かった、それより仕事のほうは大丈夫かい?」
「あ、いけね!」
こんな調子の日々だが、ヘルは満ち足りていた。家族がいたから。
そして仕事場についた。
「15分遅刻だぞ!」
「すみません!」
「まあ良い、今日もモンスター退治、頑張ろう!」
儂は当時はモンスター退治で生計を立てておった。
トロッコで移動し、地下に潜むモンスターを退治してそれを肉にし、家族全員でそいつを食べた。
「美味しいね!!」
「あ、サアリ俺の分取ったー!」
「こらこら喧嘩しないの!!」
「子供達の喜ぶ表情が儂の楽しみじゃった。
しかしそれを奪い去る出来事がある日起こったのじゃ!」
ヘルは目を大きく見開き、咆えた。
儂のこうした日々は長くは続かなかった。
ある日の事…。
「うわーん!うわーん!!」
女の子の泣き声が聞こえてきた。
それは大変大きく、鼓膜が裂けそうな騒音に街の人達は恐怖した。
その為大地にも微振動が起こる。
そしてその少女は大粒の涙を噴き出しながら喚く。
ドドドドオオォ!!!
少女の流した涙は濁流となり、街の住人を次々と飲み込んでいく。
「津波だ逃げろ!!!」
ヘルは慌てて高台に駆けていく。
そのいっぽう、波は凄まじいスピードを上げてヘルを飲み込もうとする。
次々と破壊されていく建物。
建物は全て少女の涙から出た「怪物」によって飲み込まれていった。
「うわああぁ!!!」
「きゃああぁ!!!」
そして阿鼻叫喚を上げながら怪物に丸呑みにされていく人々をいくつか見るが、ヘルは助けに行くことが出来なかった。
そして命からがらヘルは山の上に登り詰める。
「ゼェハァゼェハァ…」
ヘルは登り詰めた時、既に足はガクガクだった。
「家族は無事だろうか…?」
高台には何人かの人だかりがいた。
ヘルは必死に家族を探す。
「おおーいタキ!!オド!!シール!!」
がむしゃらに家族の名前を呼んで探しまくる。
しかし結局ヘルの家族は見つからなかった。
その時、少女とその姉らしい少女が語り合っていた。
互いに身なりは綺麗で、何処かの城の姫君ではないかと思わせる佇まいであった。
「もう、貴女はガーランド城の王女でしょラナエ・パトリシカ・ガーランド!!そしてそして、王女になるのなら簡単に泣くのはやめなさい!!」
「う…うん、私は泣かない!劇で見たチイのように強い子になる!」
「よしよし、良い子ね♪」
少女達の会話を聞いていたその時、目の前が真っ黒になっていくのと同時に激しい憎しみの感情がヘルの中で渦巻いた。
「ガーランド城の姫君か誰かわからぬが儂の家族の奪い去ったあの小娘、許すまじ…!」
ヘルは復讐を誓った。
しかしその時のヘルにはどうすれば良いのかわからなかった。
墓を立て、冥福を祈るも独り身となったヘルの心境はどんどん闇に侵されていく。
そしてそして、数年後の月日が流れた。
ヘルは家族の墓の前で悔しがる。
「あの少女のせいで儂の家族は皆津波に流され命を落とした。あの少女に一矢を報いるまでは儂は死んでも死にきれぬ!!」
ヘルは墓参りを終え、気も晴れぬまま帰路に向かおうとする。
そんな時の事だった。
神、いや魔王コロナがヘルに語りかけたのだ。
『ヘルよ、何をそんなに憎しんでいるのです?』
「憎まずにいられますか!儂は10人いた家族をあの少女によって奪われたのです!!」
ヘルは魔王からの声に言葉を荒げてしまう。
周りは「なんだ?」と言う表情でヘルを見ている。
『そうですか…ならその力を解放しなさい!そしてそして、私の「気《菌》」を貴方に送り届けましょう!』
ヘルは空を飛んでいるような感覚に襲われた。
人々、そして街がどんどん小さくなっていく。
更に更に、小さくなっていった人々と街が影に覆われていく。
「な、なんだなんだ!?」
人達はびっくりしたようにヘルを見上げる。
そしてそして、ヘルはある事に気づいた。
ヘルは空を飛んでいるわけでは無い事に。
ヘルと地上からの距離はみるみるうちに離される。
そして人達はまるで蟻の如く小さくなり、パッと見では見えなくなる。
そしてヘルは気付いた。
ヘルは巨人となっている事に。
そして、ヘルは「コロナ」を浴びる事により巨大化したと。
そして、ヘルは力が大変みなぎる感覚を覚えると同時に、家族を殺されたノフィナと言う少女に対する憎悪をぶり返す。
「ふふふ、これで儂はあの小娘と同等、いやそれを越える存在と化した!今なら復讐が出来るわ!!」
そしてヘルはノフィナに復讐する為、ノフィナを絶望に突き落とす為に手始めにガーランド城を襲った。
ガーランド城はコロナが蔓延し、大多数が亡くなっていった。
そしてそしてヘルは生き残った人達を攻め、城を滅ぼした。
そしてノフィナの姉、タリアは城、そして居場所を失って奴隷商人に捕まり、身を売る仕事をさせられる。
後はノフィナである。
ヘルは可哀想なノフィナを見逃せる程温厚では無かった。
そして復讐の第二弾を開始する。
人間への復讐に燃えるヘルは廃工場にて少年少女を奴隷にする為の機関を立ち上げ、マッドサイエンティストを名乗る。
そして部下達に告げた。
「あのノフィナと言う元ガーランド城の姫がいる!彼女をここに連れて来い!そうしたらあの少女を好きにして構わん!!」
「ヒヒヒあの王族の可愛い姫さんを襲えるとはこれ以上無い喜び!喜んで受けましょう!!」
部下達は二つ返事で承諾した。
そしてノフィナは逃げるも最終的には捕まり、奴隷、そしてモルモットとならざるを得なくなったのだ。
ーーー
ノフィナは衝撃の事実を聞かされた。
「私が…ヘルの家族を殺した…?」
「そう言う事だ!そしてそして、儂の憎しみのオーラを喰らえ!!」
「きゃあぁ!!」
ノフィナはヘルの先程よりも更に強いオーラを喰らい、弾き飛ばされた。
そしてノフィナにその瘴気が回り、ノフィナは戦意を喪失する事になる。
「ノフィナちゃあぁん!!」
助ける事も出来ないシャムはこう叫ぶ事しか出来なかった。




