闇に囚われても
「ぐうぅ…この儂をここまで苦しめるとは…勇者もここまで成長したって事か……」
ヘルは勇者達に破れかぶれの攻撃を仕掛けたものの追い詰められていく。
「ここまでだヘル!!」
ユグドが剣でヘルにトドメを刺そうとする。
「そうは行くか!!」
ヘルは手綱を引く。すると上から魔物が沢山降ってきた。
「ユグドさん危ないにゃん!!」
「おっと!!」
ミケーネが咄嗟にユグドに危険を知らせ、反応したユグドが飛び退くとその数コンマしない間に魔物がその場にのしかかり、大地にクレーターを作った。
「魔物が!このお!!」
パーティー達が狼狽えているうちに、グリンは杖を翳して降ってくる魔物達を攻撃魔法で応戦する。
しかししかし、魔物もこれまでに無いほど強力で、魔物達は雄叫びを挙げて炎をユグド達に降らせにかかった。
「油断ならないにゃん!サイコアーマー!!」
ミケーネが魔法で膜を張り、魔物からの攻撃魔法によるダメージを軽減させる。
「くそお!このっ!!フレナさん!俺の側から離れないで!!」
「はいっ!」
ユグドは魔物の群れを次々と斬り裂き、フレナを魔物から守る。
「キシャーーーー!!!」
ミケーネは雄叫びを挙げて魔物を格闘でバッタバッタと倒していく。
「グオオオオォォ!!!」
「ブワアアアァァ!!!」
魔物の数匹が火や吹雪などを降らせ、パーティーを弱らせる。
「私の回復魔法が持ちません!!」
フレナの魔力が回復魔法を次々と重ねて減っていく。
「それなら僕にお任せくださいにゃん!!」
そこでミケーネがフレナの手助けを。
ミケーネにはフレナの魔力が無くなりかけた時の奥の手があった。
ミケーネが沢山の苺をパーティーの口に放り込んだ。
「そしてそして、ミケーネもいただきますにゃん♪」
ミケーネも苺を頬張る。
苺の甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がる。
「こ、これは……!」
「美味しい美味しい!」
パーティーはその美味しさに感動を覚える。
それだけでは無い。
パーティーの体力がみるみるうちに回復し、力がみなぎって来るような不思議な感覚になった。
ミケーネが持ち出したのはただの苺では無い。
魔法百一五と言って作り手の魔力で丹精に作られた苺なのだ。
「ミケーネいつの間にそんな特技を…?」
「考えたって仕方ない!だがこれで魔物達と戦える!!」
「私の回復魔法の手助け、ありがたいです!」
パーティーはそれぞれの反応をするが気を取り直して魔物達とバンバン戦った。
しかししかし、彼らのドサクサに紛れてヘルがそこから逃げ出し、何かをしようとしている事をパーティー達は忘れていたのだった。
ヘルはその戦場から逃げてある事を講じようとしていた。
「ふふふ、こうなったらあの女を利用してやる!あの女のせいで儂の計画がパーになったからな!ふふふ見ておれ見ておれ!!」
ヘルの計画とはこれまたとんでもないものだった。
ーーーそしてそして、ノフィナとタリアの感動の場。
「リアナイ・パトリシカ・ガーランド…貴女の成長、目覚しいものがありましたよ…」
「お姉様…ずっとお慕い、そして気にかけておりました。ガーランド陥落後も…今何をしているんだろう…て…」
ノフィナはタリアの胸に顔を埋めて嗚咽を上げている。
タリアはそんなノフィナの頭をヨシヨシと撫でる。
「リアナイ…いえノフィナ、私がこんなガーランドの姫君の風上にも置けない情け無い姉でも…貴女は許してくれるのですか?」
「違います!お姉様はいつまで経っても私のお姉様です!弱くたって、情けなくたって良い!タリアお姉様が私のお姉様でいて続けてくれれば…!」
そしてそして、シャムも二人から貰い泣きしている。
「良かった…ノフィナちゃんもタリア様も一緒になれて…えっ!」
シャムはギョッとした。
何故ならタリアのすぐ背後に不気味な男の影があったからだ。
「感動のイベントは満喫したかな?」
そしてそして、その男は低い声でこう吐き捨てる。
「ヘル!くっ、ノフィナ!その子と一緒に逃げて、早く!」
ヘルの存在に気づいたタリアはすぐさま血相を変え、ノフィナをシャムに押しやり、こう怒鳴った。
「あ、あいつはヘル…!」
ノフィナもヘルの顔を見た途端悪寒が走った。
ノフィナもヘルから散々な目に遭わされたからだ。
「貴様はもう用済みだ、この場で死ね!!」
ヘルは手を上に突き翳す。
するとタリアの頭上に黒い渦が出現し、そこから稲妻が落とされた。
タリアは寸手の所で躱した。
「ふん、やるな、姉妹愛の力か!」
「アンタの思い通りにはもうならないわ!」
タリアとヘルが睨み合う。
バチバチと火花が散り、僅かに重力が上に向く。
その影響でパラパラと砂や石が浮かび上がる。
ドオオオオォン
二人の間に闘気で出来た結界が出来てしまう。
二人の強大な闘気でその結界の中には誰も、虫すらも入れなくされているのだ。
「お姉ちゃん!きゃっ!」
ノフィナが駆け寄るがその結界が少女の体を弾いてしまった。
「無駄じゃ、このバトルフィールドは闘気弱き者は入れぬ!」
「ノフィナ!シャムを連れて早く逃げなさい、でやーー!!」
タリアはヘルめがけて矢継ぎ早に魔法弾を撃ち込む。
「ははは効かぬなあ!!」
「そんなっ!」
ヘルを包む闘気は鎧となり、タリアの魔法を撃ち返してしまった。
「勇者はこの儂の闘気も簡単にぶち破ったわ、所詮勇者で無き者の力とはこの程度!!」
ヘルは手を突きかざし、そこから黒い波動がタリアに向けて放たれた。
ドォン!!
タリアは弾き飛ばされる。
「お姉ちゃん!!」
「くくく、恐怖は挑む者の戦力を大幅に削る!」
ヘルの予告通り、タリアはブルブルと震えだし、「いやあぁ!!」と身を震わせていた。
「そしてそして、光栄に思え、この儂の温情で貴様には苦を与えず一瞬で殺してやるわ!!」
ヘルが今度は上に向けて手を突き伸ばす。
すると黒い雲が頭上に出来上がる。
そしてそれをヘルが腕を下に降ろすと雲から稲光が落とされた。
「キャアアアァ!!!」
バリバリバリ!!!
タリアはその稲妻を落とされ、黒焦げになってうつ伏せに倒れる。
そんな中、「リアナイ…早く…逃げて…」とノフィナを気遣いながら言い残し、そこから動かなくなった。
「お姉様!嫌ああぁ!!」
ノフィナは泣き叫び、タリアに駆け出す。
「酷い…なんて事を…」とシャム。
ノフィナの周囲に青いオーラが炎のように淡い光を放ち渦巻いた。
「お前は…お前は絶対に許さない!!」
ノフィナは羅刹の如く怒りの目線をヘルに向ける。
彼はフンッとほくそ笑んでいた。




