永遠の恋人
ズバーーーーン!!!
ユグドの横薙ぎの剣が炸裂する。
数体の魔物が真っ二つとなった。
「ユグドさんっ!」
「フレナ!側を離れるな!!」
ユグドは治術師のフレナを守りながら魔物達を一網打尽にしていく。
ここは仁義なき戦場。
魔物共は勇者達を根絶やしにせんとばかりに凄まじい殺気を沸き立たせて襲いかかる。
そんな中呑気に陰口なんか言ってる魔女が一人。
「お熱いねえお熱いねえそれを奥さんのゾノミが見たらどう思うかねえ♪」
魔法使いのグリンはいやらしい物言いでユグドにヤジを入れるがその間にも沢山の魔物が襲いかかってくる。
『そうしてる間にも魔物が襲ってくるニャン!!』
武闘家のミケーネ(獣人)がグリンに注意を呼びかける。
「わかってますよっと!!」
グリンはド派手な極大魔法を放つ、それは大火炎を巻き起こし、魔物の群れを黒焦げにする。
そして一旦は魔物の群れはいなくなった。
緊張が解けて残り少ない体力を温存させるパーティー達。
「お怪我はありませんか?」
治術師のフレナは負傷した勇者を手当する。
勇者達は束の間の休憩。
「流石、第二の四天王の拠点だけに手強いモンスターがいっぱいいるな…」
「俺達のレベル不足を痛感するよ、日頃の鍛錬は怠っていないのだが…」
『やる気を出しますニャン!ミケーネは転がってもタダでは起きませんにゃん!』
そしてそして、身支度を整えると再び勇者一行は第二の四天王、バイヤーとの戦闘に挑みに行った。
一方バイヤー…。
(これが嵐の前の静けさ……というやつか…)
バイヤーはこの静かな空間の中でただ独り、戦士達が来るのを待ち構えていた。
そしてバイヤーは首にぶら下げているロケットを見つめる。
(シャム……君のおかげで俺は強くなった…と言うのも…)
ーーー
バイヤーは確かに強かった。
しかし優し過ぎた故にルギャと言う女に利用され、悪事を働かされていた。
『良いかいバイヤー、私の言う事に逆らったらアンタとの婚約は破棄にするからね!』
『それだけは止めてくれ!』
『わかったらマスクを転売してきな!』
バイヤーはルギャとどうしても結ばれたくて転売を繰り返し、四天王から遠ざかざるを得なくなった。
そこでノフィナとシャムが現れ、そのうちのシャムと言う少女に自分に似た何かを感じ取った。
そしてそして、シャムを見てビビビっと何かが働きかけたのだ。
シャムも何か事情があって遊郭に身を預けるしかなくなっていた…と。
ーー
しかし、その二人が合わさった時、束縛されていたものが解き放たれ、一緒になれるのでは無いか。
そうバイヤーは悟った。
そしてバイヤーの狙い通り、バイヤーは転売ヤーをやめ、四天王に返り咲く事が出来たし、シャムは遊郭から長年夢を見ていた研究員となる事が出来た。
四天王として死ねるならそれも本望。
そしてそして、このバイヤーの死をシャムにも見届けて欲しい。
バイヤーの熱い思いはこの静かな空間で揺らめいていた。
やがてやがて、ユグド達が現れそこで激しい死闘が始まる。
ーーー
ノフィナ少女は相変わらず独りの空間を耐え忍んでいる。
いやいや、正確には独りでは無い。
ワイマもいるし、少し癖のある奴だがノフィンもいる。
それでも周りからの冷たい目線故に少女の心は押しつぶされそうになり、そして黒い感情がまたモヤモヤと暗雲のように立ち込めてきた。
しかしそうする事により、ノフィナは姉の気持ちが痛いほどにわかってくるのであった。
そして少女ノフィナはまた為すべき事を一つ見出した。
「私、お姉ちゃんを更生させてみせる!!」
『何だワン!?』
『なんだ!?』
突然の決意の言葉にワイマとノフィンはたじろぐ。
『しかししかし、君の姉タリアは君を落とし込めた張本人だ!そんな義理は無いはず!』
『行っても危険な目に遭うだけ!あの人には関わらない方が良いよ!!』
「…そうかも知れない、でもこうして独りでいる時わかったんだ……きっとお姉ちゃんも同じ気持ちで、耐えられない気持ちだったんだろうって…」
ノフィナは考え込むように紡いだ。
ノフィナはまだワイマやユグド、ゾノミ、そして二人の間で生まれたばかりの赤ちゃんがいた。
しかししかし、姉タリアは自分と違い心の支えとなるものが無く、自分のように心が押しつぶされそうになる感覚どころでは無いと思う。
それをずっと耐えざるを得なかったのだ。
きっとはち切れないほどの憎悪が渦巻き、ノフィナを落とし込もうとしていたのだろう。
こうした心の闇を持つ事はとても耐え難い事。
それをノフィナは知った。
そして心優しいノフィナはなんとしてと姉タリアを更生させようと意志を立てたのだった。
しかし問題はいつコロナの検査で陰性が出るかだ。
体の症状はすっかり良くなっているのだが未だ陽性である。
陰性にならないと先ず病院からは出してもらえない。
(検査のアレ嫌なんだよねー)
しかも、毎度ながら検査の鼻の奥まで検査棒を突っ込まれるのは拷問である。
もっと簡単な調べ方は無かったのか。
徳島と言う田舎だから仕方ないのかも知れないが。
ーーー
そしてそしてその頃、お待ちかねの勇者パーティーとバイヤーの対峙。
バイヤーは「最初の四天王を倒したからと良い気になるな、なんたって奴は四天王になれたのが不思議な位弱い奴だからな!」と低い声で脅しをかける。
「そのようだな、皆心してかかれ!」
「「おう!!」」
勇者ユグドが他パーティーを木舞する。
「威勢だけは良い奴らだ!しかし私の機械仕掛けの体の前では虫けらも同然!」
ウイーンと言う機械音と共にバイヤーの体は鋼鉄と化し、兵器と化す。
「この砲弾の前に木っ端微塵になるが良い!!」
そしてバイヤーの無数の砲弾からミサイルが放たれた。
チュドドドーーーーン!!!
「「うわああぁ!!!」」
ユグド達はバイヤーのミサイルの爆発に巻き込まれ吹き飛ぶ。
しかしミケーネがバリアを張り、一行は軽傷で済んだ。
『大丈夫ですかにゃん!?』
「だ、大丈夫だ…しかしなんて強力な攻撃だ…」
「こんなロボット!サイコフレア!!」
グリンが攻撃魔法を撃ち放つ。
「バイヤーウィング!!」
バイヤーは両手をグライダーの羽のような形に変化させ、足からは火炎を放射させて羽ばたく形でグリンの魔法攻撃を瞬時に避けた。
そしてそして、バイヤーはそのグライダーの羽の前側から鋭利な刃物を出現させる。
その鋭利な刃物は光に反射し、勇者達を狙うようにギラギラと光っている。
ヴイイイィン!!!
「!!!」
バイヤーがこちらめがけて飛んできた。
駄目だ、速度が速すぎて避けられない。
「危ないにゃん!!」
とその時ミケーネが咄嗟にユグドを突き飛ばし、斬破は免れた。
一方地上には切傷のような穴がぽっこりと開く。
バイヤーは旋回したかと思うとまた勇者めがけて斬りにかかった。
「柱に隠れるんだよ!!」
グリンはフレナの手を引き石柱に隠れる。
しかし石柱はばっくりと割れ二人を潰そうとした。
「グリン!フレナ!危ない!!」
ユグドが叫ぶ。
「畜生!」
ドガガン!!
ミケーネが飛び蹴りで石柱を粉々にする。
「ミケーネ!奴を一気に畳みかけるぞ!!」
「板挟み戦略にゃんね!!」
そしてユグドは剣を構えて、ミケーネは究極の姿勢で構え、バイヤーに臨む。
「どりゃあああぁ!!!」
ズバアアアァ!!
「キシャーーーー!!!」
ドドオオオォ!!
ユグドは剣で縦薙ぎの一閃によりバイヤーの頭めがけて振り下ろし、ミケーネは手を突き出して衝撃波を放つ。
剣の閃光と拳の閃光が眩く目を散らす。
バイヤーは瞬時にグライダーの羽の如く無機質な両手を変幻自在に盾の形を変え、ユグドとミケーネの板挟みの攻撃を受け止める。
ガシイィ!!!
衝撃は走るがバイヤーは涼しい顔をし、動じない。
逆に動じているのは勇者達であった。
「無駄だ!」
「何っ!?」「にゃん!?」
その時バイヤーの受け止めた両手が光りだし、そこから高圧の熱風が噴き出し、ユグドとミケーネは吹き飛ばされた。
「うわああぁ!!」
「ふぎゃあぁっ!!」
ユグドとミケーネは豪快に地滑りする。
「大丈夫ですか!?」
「姫様危ないよ!!」
フレナが駆け寄ろうとするがグリンがフレナの体を後ろから引く。
「チェックメイトだ!!!」
そしてバイヤーは無数の砲弾を出現させて凄まじい砲弾の雨を降らせた。
「くっ!バリアだにゃん!!」
ミケーネはバリアを貼るが砲弾の威力はそれでも防ぎきらず、パーティーは瀕死の傷を負う。
「ぐああああぁ!!!」
「きゃあああぁ!!!」
勇者達の断末魔がその場に響き渡った。
「大地の精霊よ、私達に治癒の力を…」
フレナは詠唱を唱え全員に回復魔法をかける。
淡い緑色の光が勇者達を優しく包み込む。
パーティーの怪我は治療されていくがその間にも思いっきり砲撃が降りかかる。
「もう私の魔力も尽きかけです!!」
「一体どうすれば…!」
そうしている間にもバイヤーは次の攻撃を仕掛けようとしていた。
「くっ!させるかぁ!!!」
ユグドは剣を振りかぶり横薙ぎにバイヤーを斬りにかかる。
(さっきと同じやり方だがこうでもすれば時間稼ぎが出来る!その内に…!)
しかしバイヤーは腕を鋼鉄の盾に変化させ、ユグドの剣を受け止めた。
「時間稼ぎのつもりか?立派な事だ!」
バイヤーは隙を突いてもう片方の腕を突き出す。
ドドーーン!!
バイヤーの手のひらがユグドの腹に突き当てられ、そこから衝撃波が放たれた。
「あがあああぁ!!!」
まともに食らったユグドは腹を打ち破られて地にのたうち回った。
「よくもやりやがったにゃん!!」
ミケーネが黄色の闘気を沸き立たせ飛びかかる。
「往生際が悪い!!」
バイヤーは砲をまた構えて攻撃に転じようとした。
(このままでは勇者パーティー全滅だにゃん!何か策は何か策は………!)
ドガガガガガン!!!
バイヤーと死闘を繰り広げながら弱点を探るミケーネ。
そしてミケーネはバイヤーの弱点を見つける。
(これだにゃん!)
ミケーネは閃き、後方に飛んだ。
「我に敵わぬ事をようやく悟ったか!死ねい!!」
バイヤーは砲を前に向ける。
「グリン!砲全部にサイコボールを撃ち放つにゃん!!」
ミケーネが戦略を与える。
「よし来た!サイコボール!!」
魔法の玉が次々とバイヤーに装填してある砲穴にぶち込まれた。
「これでとどめだ…あ、ウギャーーい!!」
バイヤーは詰まった砲弾を打とうとした為に暴発し、自爆した。
ドドオオオオオォン!!!
「こんなところで………シャ………ム………」
バイヤーは最後に思い人の名を言い残し、天に召された。
その時、シャムの脳に虫の知らせが入る。
そしてそれによって悟った。
バイヤーが倒れた事を……。
「バイヤー………復讐を果たした後すぐにそっちに行くから……」
シャムはツツーッと涙を滝のように流しながら復讐の誓いを立てる。
そして武器の詰まったケースを手に、彼女もまた戦場に足を踏み入れる事になるのだった。




