ラルルを救い出せ!
『わ…ワイマ…食べ物を調達してきてくれ…』
『え?さっき食べたばっかりですよ?』
ノフィンが枯れ枯れの声でワイマに請う。
しかしワイマの言う通り、数分前に食べたばかりである。
液体系の粗末なものだが。
『君だって知ってるだろう、僕は寄生虫だから余分な栄養素がいるんだ、だから頼む…』
『そんな事言われても…』
その時ラナエがゴホゴホと咳き込みながらワイマを庇った。
「ノフィン…私は大丈夫…だから…ワイマをこき使わないで…あげて…」
グリグリ…。
「ひゃぁっ!」
『君が良くても僕が駄目なんだ』
(助けてあげたいけど今の私には体を動かす気力もない…歯痒いよ歯痒いよ…)
ラナエは元気さえあればノフィンの尻尾を掴んで応戦しようものだが残念ながら少し前から続く熱で動く力が残されていなかった。
そしてそして、栄養が欲しいのもある。
『でもオイラ…』
ワイマがマゴマゴしている内にラナエから生えたグロテスクな尻尾がワイマを狙おうとした。
『じゃあ仕方がない、君を食うか…』
『わ、わかりましたよぉ調達しますします!!』
蛇のように付け狙う尻尾にビビり震え上がって弁ずる。
「わ、ワイマ…ごめんね…こんな事に…なって…」
ラナエのなんとも言えない表情を見て思わずキュンとなるワイマ。
『良いって事だよ、ご主人様の為なら2食分でも3食分でも調達しようじゃないの!!』
「ごめん一食分だけにして…」
そしてそして、やむなくノフィンの食糧を調達しに向かうワイマ。
しかし外に出ればそこは世紀末の街。
病院もあるが治安は悪くちょっと出て数秒すれば絡まれて狙われる。
あくまでワイマの抱いた印象だが前にいた街とは明らかに違っていた。
(ああラルルちゃんでもいたら……いや駄目だ!オイラだって立派な男の子!ご主人様があんなになってるのにオイラがしっかりしなくてなんになるんだ!!)
ワイマは勇んで食糧袋を引っさげて歩いた。
そしてそしてそうした後数秒でやっぱり絡まれる。
後ろから影が現れたかと思うと突然抱きつかれる。
『ぐへへへ兄ちゃん金持ってるかぁ〜い?』
謎の大型犬が絡んできた。
『もも持ってません持ってません持ってません!!』
ガタガタしながら否定するワイマ。
しかししかし、その大型犬はワイマの体を触りだした。
(うぇっ、この犬臭い…絶対風呂入ってないな!!)
野良犬だから当然と言えば当然で、その犬は見た目もボロボロでとにかく毛並みが荒いので野良と一発でわかるような見た目だ。
その犬はワイマの体を触って楽しむ。
『ぶへへへ、いい匂いじゃねぇか毛並みも良いし目もつぶらだしきっと飼い主に大事にされてんだろぅなぁ♪』
こうなったら脅してみるか。
『その飼い主はコロナなんだぞ!コロナにかかったらお前もタダじゃ済まないぞ!』
『コロナってなんだぁ?美味いのか?ぐへへ!!』
脅しもコロナがなんなのかわからない野良犬には通用しなかった。
『うわあぁラルルさん助けてぇ!!』
ジタバタするも大型犬には力で叶わず、思いきり体を締め上げられるワイマ。
「何をしているんだ野良犬!」
そこに見覚えのある青年が現れた。
『マイトさん!』
「君はワイマ君!?」
感動の再会!世間は狭いと言うのか、この間ラルルの相棒とされる青年に再会した。
『なんだてめえは!?この俺様が野良犬ベロスと知っての狼藉か!!?』
ベロスはガルルと吠える。
「ワイマは俺の知り合いだ、その子を離したら何もしないよ!」
『偉そうに、人間なんて嫌いだいつも偉ぶって自分を動物界で一番頭が良いとふんぞり返りやがって、血の海に沈めてくれる!!』
ベロスは猛獣となり強大な怒りのオーラを沸き立たせる。
するとベロスは二倍強の大きさになりマイトを食らいつかんとする。
「はっ!」
マイトはそれを華麗に躱す。
『まぐれが二度も通用すると思うな!!』
またもベロスが襲いかかる。
そしてそして、ベロスは大口を開けてまたも一思いにマイトを喰らいつかんとする。
オーラのせいかベロスの顔一個だけでマイトの背丈がすっぽりと入り、マイトをひと呑み出来てしまうくらいの大きさに見える。
『うへぇおっかねぇ…オイラだったらあれ一つで呑まれちまってたよ……』
ワイマはベロスの迫力にチビってしまった。
しかしマイトの方は冷静だ。
そこは人間としての威厳だろうか?
『グオオオオォォォォ!!!』
ベロスは大口を開けて襲って来る。
マイトは跳躍して避ける。
『ちょこざいな!!』
何度も何度も襲うがマイトは何度も何度も避けた。
(参ったな、俺は動物に暴力は振るわない主義だ…あっそうだ!)
そしてマイトはレジ袋に手を突っ込みあるものを取り出した。
「お前が欲しいのはこれか?」
それは骨つき肉だった。
マイトは骨つき肉をベロスに差し出してきた。
『欲しいーーーー!!!』
ベロスが骨つき肉に夢中になる。
「ならば取って来ーーーーい!!!」
マイトは骨つき肉を力一杯放り投げた。
『うおおぉ骨つき肉ーーー!!!』
ベロスは骨つき肉を必死に追いまくった。
「大丈夫かわんころ?」
マイトがワイマを介抱する。
『オイラは平気だい!それよりラルルは?』
いつも一緒にいるんじゃと言う風に思いワイマは聞いてみた。
「あぁそうなんだけどそのラルルがいないんだ、大変な目に遭ってなきゃ良いけど…」
『それは大変だ!一緒に探そう!!』
マイトとワイマは一緒にラルルを探す事にした。
そしていっぽうのラルルは……。
「いひひひこれは珍しい妖精だぜ!」
「奴隷商人に売っぱらえば高く売れるぜ!!」
なんと悪党に捕まっていた。
体は縄に縛りつけられていて身動きが取れない。
(くっそー私の魔法さえ使ったらコイツらなどちょちょいのちょいなのにふと油断しちゃってこれだわ!悔しい悔しい!マイト私はここよ早く助けに来て……!)
ラルルは対抗し疲れぐったりとしつつ自分の不甲斐なさに涙さえ零した。
ラルルは車に乗せられていて研究所まで走らされている所だった。
ーーー
『マイトさん!オイラを頭に被せて!』
「えっと、こうかい?」
するとマイトの脳が活性化される。
ドーパミンが分泌され思いっきり身体能力が跳ね上がる。
そしてそして、聴覚と嗅覚が犬のそれになる。
「見えた!ラルルの気配だ!!」
マイトの脳内にラルルの様子が映し出された。
「こうしちゃいられない!ラルルー!!」
頭にワイマを乗っけたまま目にも止まらぬ速さでラルルを追った。
ブーーーン!!!
マイトが通った後は強烈な風が吹く。
そしてそして女の子のスカートも捲れる。
「きゃーっ今のなになに?」
「今美青年が走っていたような…」
「あー美青年見たかったなー!」
一方マイトは相手が車だけに脚では追いつけない事を悟っていた。
「くそっ!体じゃ追いつけない…!」
『マイトさん!あそこにバイクが!』
マイトは男がバイクに乗ろうとしているのを目撃した。
そこでそこで、バイクに乗ろうとしている男をなんと突き倒し、「ちょっと借りるぞ!」と言いバイクを走らせた。
いっぽう男は「ば、バイク泥棒ーーー!!」と叫び必死に追いかけた。
ラルルが連れ去られようとしている時に綺麗事とか言ってられない。
なんだかんだでマイトとラルルの距離はみるみる内に詰まって行った。
『マイトさん!奴の車は高速道路の上にいる!』
「そうか!じゃあここから登ってみるか!!」
ワイマを帽子にして被ると身体能力が格段にアップする。
そしてそして、マイトは幸いな事に身体能力が元々高い方だったのでワイマを被った事により更にアップし、空高くジャンプさえ出来るようにもなっていた。
一方ラルルを乗せて盗賊が車を走らせている。
「俺達も元は旅行会社に勤めてたんだ、しかししかしコロナのせいでクビになっちまった!恨むならコロナを恨めよ!!」
盗賊はそうラルルと持ち主に詫びるが…。
(アンタ達の事なんて知ったこっちゃ無いわよ!盗賊なんてやらずにまともに働け!)
と当の本人はそうとしか思えなかった。
なんと帽子犬を被せた男が前方から現れる。
「何だあれはああアァ!!」
男達は驚く。
(あれはマイト…それと…!)
縛られていたラルルが男の悲鳴に目を見開くと前にマイトがワイマを被せて立っているのを確認した。
「この野郎この野郎!!」
男達は次々と拳銃をぶっ放つ。
しかしマイトは鉄パイプでそれを次々と打ち返す。
普通なら蜂の巣になって終わり、しかしマイトは帽子犬ワイマを被っていて身体能力がアップしエンドルフィンが激しく分泌されていて向かう所敵なしと言った状態だった。
「降参降参この妖精は返します〜!!」
男達は降参してラルルをマイトの手元に返した。
「勤めていた旅行会社がコロナのせいで運営出来なくなってこうなったんだよぉ!」
男達はわんわんと泣く。
「だからって盗賊になっちゃダメだ!このご時世職なんて簡単に見つからないと思うが人身売買はダメだぞ!」
そしてそして、マイトとラルルは再会し、ワイマは沢山の食糧を渡してもらう事が出来た。
「俺達これから元いた国に帰るよ、君も看病は大変だと思うけど頑張るんだ!」
「挫けちゃダメだよ!WNIの精神をいつも持ってね!ばいびー!」
『うんっ!これでご主人様も助かるよ!じゃあねー!!』
ブオーーー!
船出発の合図が鳴り、段々と距離が離れていく。
ワイマと二人は手を振りあった。
サヨナラは言わない。
いつか絶対また会えるそう信じて…。




