品薄の謎
「美味しそうな弁当やなー♪」
ノフィナの周りを生徒達が囲む。
しかしノフィナは彼らを見て背が凍りつくのを感じた。
目の前にゴキを見せつけられ、ノフィナの脳裏に戦慄が走った。
「これをデコレーションしたらもっと美味しくなるよ」
「やめて!」
ノフィナは抵抗するが三人の生徒に取り押さえられる。
「良いぞやれー!」
はやし立てる生徒達。
そしてそして、ノフィナのご飯とそれがかき混ぜられた後ノフィナはようやく解放される。
「さあこれを全部食べたら元の友達に戻ってやる、さあ食べろ」
「い…いや…」
ノフィナは抵抗するとまたもや取り押さえられ、ゴキ入りの飯を食わされる。
ノフィナは一気に戻す。
私……いつまでこんないじめに耐えなければならないの……!
ーーープレイ終わり
「お疲れ、良かったよラナエちゃん♪」
男が笑みを浮かべて肩をやる。
「あ…ありがとうございます……」
そしてそして、自室に戻りシャワーを浴びる。
(あぁ私の体がどんどん穢れていく……)
ノフィナは鏡に映る自分の姿を見ていた。
見た目は綺麗で傷一つ無いが仕事しているうちにノフィナの心身はそれに穢れていったのは事実。
王女になると言う夢を絶たれ行く場所の無いノフィナにはここに身を預けるしか無い事をまざまざと思い知らされた。
その途中にノフィナに呼び出しが入る。
「ラナエ!ママが呼んでるよ!!」
「は、はいっ!」
指名じゃなくてママが!?何かしら…?もしかしてお姉様から連絡が……。
急いでいる中、そんな淡い期待を今もなおどこかで抱いてしまうノフィナがいた。
ママは険悪な表情をしてノフィナが来るのを待っていた。
「遅かったじゃないかラナエ…」
「も、申し訳ありません…」
イライラした様子のママにノフィナは恭しく頭を下げる。
「まあ良いわ、ラナエ、この間先輩とやり合ったんだってね?」
「え?」
そしてノフィナは以前の先輩が使っていたスマホを見せつけられる。
そしてそして、その損害賠償金が書かれた紙付きで。
ノフィナは目の前が真っ暗になるような感覚に陥った。
そしてそして、明らかに表情が絶望色に染められる。
「損害賠償金15万払えって来てるよ?勿論払うわよね?」
ママは催促してくる。しかしあれは動画を流されないようにしたのであるから正当防衛な筈だ。
「あの時私とシャムちゃんは動画を流されてやむなくやった事です!私は悪くありません!!」
ノフィナは必死の思いで抗議した。あれは明らかに先輩が悪いのにその罪を背負わされるなんてこれは明らかにおかしい!
しかしママはタバコをノフィナに吹かして来た。ノフィナがタバコの煙に思わず咳き込むとママは表情を崩さずにこう言ってきた。
「アンタ、新人だから色々わかっていないみたいだから言っとくわ、こうした先輩の「シゴき」に耐える事で私達はお客様を喜ばせる技量を身につけたのよ、それをアンタはぶち壊した、おとなしく損害賠償金は払って貰うよ」
(そんな……ユグドさん達に仕送れる金が……)
ノフィナの顔は更に絶望色に覆われる。
その時、それを偶然見たシャムが割り込んで来た。
「ノフィナちゃんは悪くありませんっ!!!」
ママに気丈に向かいノフィナを庇うシャム。
「シャムちゃん…」
「気にしないで、私達友達でしょ♪」
泣きそうになるノフィナをシャムが元気付ける。
「そうかい、じゃあそれなりの誠意を示して貰おうか?」
「誠意?」
ママは意地悪な笑みを浮かべてノフィナ達を試すように条件を突きつけてきた。
「ウチらはお客様が帰る際サービスとして「マスク」を配るようにしてるのさ、このご時世、マスクが貴重なのに中々入らないのは知ってるわよね?」
マスク…コロナの対策で政府が声高々に叫んでいるマスク着用の義務。
しかし各店舗で品切れが相次ぎ、マスクが一大事なのに外出に着用出来ないと言う混乱が相次いでいるのだ。
そしてそして、ママが次に突きつける条件でノフィナ達は一気に背が凍りつく。
「そのマスクを一週間までに「一万」集めて来な!そうしたらこの賠償金はチャラにしてあげるよ!」
「マスク…品切れ続きで手に入らなくなっているのにそれを一万…」
「良いじゃない、それでチャラになるんなら安いもんだよ」
シャムが混乱するがノフィナはそれなら大丈夫と高を括っていた。
「ノフィナちゃん、マスクを一万がどう言う事だかわかってるの!??」
明らかに狼狽を見せるシャム。
「大丈夫、絶対マスク一万は手に入れて見せる!」
(私はこうして身が落ちぶれても元王女ラナエ・パトリシカ・ガーランド!元ガーランド城のお姫様なのだ!
王女に出来ない事なんてなーい!!)
しかししかし、こうしたノフィナの自信も早速打ち砕かれる。
ーーー
「ほら、手に入らないと言ったでしょう?」
「本当だね、ありそうなものなのに…」
店から出て来た際、シャムが突っ込み、ノフィナは肩を落とす。
「マスク見つからないね…」
「どうしようどうしよう…」
暫くシャムと街を歩きながらもノフィナは両目から出た涙をコンコンと叩かせていたがパッと表情が戻りグッと握り拳を入れた。
「そうだ!こうなったらあの子を使うしかない!」
「え?あの子?」
何言ってるんだろうとシャムは思うがそれはすぐにわかった。
なんとノフィナはここで飼っている帽子犬であるワイマを頭に乗っけたのだ。
「なるほどね」
ワイマは人の頭に乗っかる事で人にパワーを与える能力がある。身体能力の他に、何かを閃かせる力、そしてそして、犬の特性で鼻が効き、見つからないものを見つけてくれるのだ。
「じゃあ私はアレを用意するわ!」
「アレって?」
「ふふっ♪ついてくればわかるわ♪」
シャムはそう言って自分の部屋に向かう。
その部屋はかつて先輩に占領されたり隣でガンガン音を鳴らされてシャムも落ち着けない日々が続いていたがノフィナの活躍で今は大人しくなっている。
そしてそして、その部屋に入ると本が立ち並び、デスクの上には小さなノートパソコンがあった。
「シャムってこんな難しそうな本読んでるんだね……」
読んでもノフィナにはわからなかった。
勿論ワイマにも…。
「うん、私はこれでも研究員を目指して勉強をしていたの」
本当に人生何があるかわからないものだ。
シャムもあんな事が無かったらきっと研究員として活躍していたに違いない。
シャムがノートパソコンを手に取った途端シャムの脳裏にインスピレーションが働く。
それは電流としてシャムの体を微振動させた。
「シャムさん?」
その時シャムの目の色は明らかに変わる。
眼鏡の奥の普段のオドオドした感じの目は闘志に燃えてギラギラとした目に変わっていた。
そしてそして、シャムはパソコンを手に取った為か脳が冴え冴えとなり、ワイマを見て何か閃めき「あ、この子は…」と言ってきた。
「ワイマが……どうかしたの?」
「うん、ちょっと待って?」
そしてシャムは手慣れた手つきでノートパソコンを
睨んで文字を打ち込む。
(タイピング早いし文字も正確…そして凄く手慣れてる……)
ノフィナはシャムの凄まじいタイピングと正確なスプリクト技量に唯々感心を覚えた。
「どうやらこの子にターリン液を注入する事で一時的にパワーアップ出来るらしいわ」
「ターリン液?」
初めて聞く名前である。
そしてそして、シャムは冷蔵庫に足を進め、たかと思うとそれを開く。
「えっ!?」
ノフィナ達は驚愕した。
なんとその冷蔵庫の中には注射器や怪我の治療に使う用具まで、びっしりと敷き詰められていたのだ。
そして緑色の液体の入っている注射器を取り出し、眼鏡を光らせるシャム。
それを見たワイマは大慌てでノフィナの頭から飛び降り、ピューッと物陰に隠れ、ブルブルと震えまくった。
『やめてやめて、お注射怖いお注射怖いお注射怖い!!!』
「大丈夫だよ今やる訳じゃ無いし」
ノフィナが呼びかけてようやくおずおずと出てきたワイマ。
内心シャムがチッと舌打ちしてたように見えたのは気のせいか…、ともあれワイマの進化は見送られた。
「ところでところで、それを人に打ったらどうなるの?」
「勿論、即死よ!モンスターにしか効かない特殊な化学物質が使われているから」
(筋肉増強剤みたいなものか…使用しない方が良さそうだ…)
ノフィナは身を震わせた。
「そんなに悪い物質じゃないから、ただ寿命は縮まるけどね♪」
いや使用する事はないだろう。
寿命が縮まると言うリスクも冒したくは無い。
しかししかし、シャムはノートパソコンを得意武器としていると見た。
そしてそして、色々な薬剤とか器具を入れたケースを詰めて「さあ行きましょう!」と紡ぐ。
こうしてこうして、ノフィナとシャムはマスク一万枚を求めて奔走した。
「ここにも無いんですか?」
「申し訳ございません」
店員に頭を下げられる。
何件何件回っても同じ結果なだけにノフィナの心も折れそうだった。
(だからってあんな奴らに賠償なんてしたくない…)
携帯を壊したからなのであるがやった彼女らに非があるはずだ。
何故自分が払わなければならないのか。
こうなったら必ずマスク一万枚は手に入れてやる!とシャムも協力させているが現状、三日目でも一枚も手に入れられていないのだ。
(どうしようどうしようどうしよう!!)
うずくまるノフィナ。
今、図書館でシャムがノートパソコンを打ちながら調べごとをしているから図書館に行ってシャムと合流しよう。
そしてシャムのいる図書館に行こうとするとシャムもノフィナに会おうとしていたのか入り口付近でばったりと出会ってしまう。
シャムは何かがわかったようで少しだけ表情に笑みが含まれていた。
そしてそして、シャムの持っているケースの他に、用意周到な事に手下げバッグも持っているが何冊か、本が入れられていた。
きっとノフィナが読んでもわからないような難しい本なのだろう。
「シャム!!」
「ノフィナ、やっぱりここにも無かったのね?」
予想していただろう事を先ず述べてくる。
「うん、シャムは何かわかった?」
「うん、やっぱりこれは「転売ヤー」が絡んでいるみたいね!」
「テンバイヤー!?」
シャムの口からは、ノフィナからすると聞き慣れない言葉が出てきた。
「今やマスクや消毒関連の商品が次々と品切れになっている事はこれまでの結果から明らか、だとすれば原因は彼らに起因していると思うの!」
シャムはこう言うとノートパソコンを取り出し、目にも止まらぬタイピングで次々と文字を打ち込む。
するとパソコンの画面に入庫したばかりの店舗に帽子を被った転売ヤーなる男が現れて、商品を丸ごと買い漁る映像が現れ、
それを通常価格よりも何割か値上げさせて更に人に売り渡している姿が見られたのだ。
「なんてせこい!許せないわ!」
憤るノフィナ。
「これが転売ヤー、このコロナの時期、小狡くて偏った正義に駆られてどんどん人を陥れたりそれを言い訳にして悪質な事をする人に溢れている」
「シャム、この付近にも転売ヤーがいるって事よね?」
「そうね、その人達を私達二人で捕まえるしかない!」
そしてそして、二人はまた犯人探しに出た。




