閉じられた世界
バシャーーーーーン!!
バケツの水をぶっかけられる。
水が一気に体の温度を冷やす。
少女は冷たい床に正座していて水に冷やされた裸体をぶるぶると震わせて寒さに耐えている。
「ラナエお前は本当に駄目な女だ!俺の妻と何一つ変わらん!」
「ご主人様……頑張りますからどうか私を捨てないでくださいっ!」
「ラナエお前は愛想を尽かされたんだよ諦めな!」
そしてプレイは終わる。
因みに「ラナエ」はノフィナが源氏名として使っている名前だ。正確にはノフィナの本名だが、姫はなれないものとなったし、ラナエと言う名前はこの世界では割と在る名前だからだ。
「お客様終了です」
チリンチリンと鈴を鳴らして女性が出てきて合図する。
「もう終わりか、もっと楽しみたかったんだけどな」
男は服を着替えようとするのでノフィナも手伝おうとする。
しかし体が冷えてたのでついバランスを崩す。
「ラナエちゃん大丈夫かい?」
「す、すみませんお客様…」
上手く体を支えられながら愛想笑いで謝るノフィナ。
そしてそして、男を出迎えた後ノフィナは影でこう言われる。
「なんだかんだで好きなんじゃない?こう言うの…」
「体のバランスを崩すフリだなんてあざといわね…」
ノフィナはチクリと胸が痛んだ。
『大分この仕事が板についてきたんじゃない?』
ノフィナが身を整えている間ノフィンがそう茶々を入れてくる。
「違うわ、この仕事を続けていくにはこうするしかないのよ!」
グリグリ…。
「やめて…!」
グリグリしながらノフィンは続ける。
『この仕事は捨てようと思えばいつでも捨てられる筈だ!捨てないと言うことはここが好きだしこうされるのを望んでいると言うことじゃないのかな?』
ノフィナがやられているのを見たワイマが身を乗り出し、吼えた。
『ノフィンさん!これ以上ノフィナさんで遊ばないでください!!』
『出たな正義の味方、わかったよ』
ノフィンはノフィナを解放する。
『大丈夫?』
「私は大丈夫…」
ワイマに慰められ、ノフィナは上体を起こす。
(ノフィンの言うとおり、私の体は変な方向に向かっている…あの人がもしこんな私を見たら……)
そしてそして、この遊郭にユグドが訪れる事を想像してみるがすぐさまそれを打ち消すように頭を振る。
いや、あの男に限ってそれは無い。
しかしきて欲しいかもとノフィナ的には思ってしまったりした。
(ありえないわ、そうしたらゾノミさんが怒る筈だし…とにかく兎に角…あの人達には見られたくないかもな……)
男に穢されたこの体…知っている人にいつ見られてもおかしくないのだ。
ーーーそしてそして、場所は病院に変わる。
そこにはタリアと言う、ノフィナ、もといラナエの姉がいたがノフィナがラナエと言う源氏名を使用している事や一部始終を見て不気味な笑みを浮かべながら水晶玉を覗いていた。
「まさかあの娘、ラナエと言う名前を源氏名として使用しているとはねぇ、見上げた根性だよ、それにそれに、あの全てを諦めた表情を見るのは楽しいねえ、だがこれで終わりじゃないよ、お前にはもっと生き地獄を味合わせてやる!この私のようにね!!」
ビカーーン!!
タリアの周囲に稲妻が走り、タリアの顔の半分は光と闇に分けられる。
タリアは身を売っていたがコロナにかかっている事が判明され、隔離病棟に入れられる。熱は下がり、体調は戻ったのだがいつまで経っても外に出してもらえない。
それどころか外ではタリアに対する誹謗中傷で溢れ、ネット上でも散々悪い事を書かれている。
(私はもう外には出られないし彼らに顔を見せる事も出来ない!)
失望感に苛まれるタリア。
そしてその病室で孤独な日々を過ごしているうちに妹、ラナエの事を思い返し、やがては逆恨みするようになる。
妹を突き落としたい!
孤独な姉タリアの心はコロナと孤独によって悪魔に身を売り渡す形となったのだ。
ーーーそのいっぽう。
「ルンルンルン♪」
ユグド家ではゾノミが家に飾られてある様々なドレスを着せ替えしては楽しんでいた。
「お、ゾノミ何をやっているんだ?」
ユグドが聞いてくる。
「あら貴方♪何ってノフィナちゃんが城を再建して私達を呼んでくれた時には出来るなら綺麗なドレスで行きたいじゃない?」
女の人は男が思うより遥かに見た目を気にする生き物だ。
とはいえゾノミの表情はとても嬉しそうである。
「でもまだ気が早いんじゃないか?まだ城は再建途中と言う話だったし…」
「あら、城は再建出来ないとでも言いたいの?」
「いやそうじゃ無いんだけどさ…」
ユグドは頭を掻く。
「あー城再建のパーティー出席したいわぁそしてノフィナちゃんの王女になった綺麗な姿見をいの一番にこの目で拝みたいわぁ♪」
舞い上がるゾノミ。
(僕以上にゾノミはノフィナちゃん可愛がってたからなこうなるのも無理はないな♪)
ユグドはゾノミの嬉しそうな表情を微笑ましく眺めていた。
それがこの先あり得ない夢だったと言う事も知らずに…。
ノフィナのいる所は寮であり、食堂ではご飯がついてくる。
少し離れた距離を歩くのだが。
ノフィナはそこである人物と出会う。
「貴女一人?」
「はい」
ある若い女性がノフィナに話しかけてきた。
ここで働いている割に随分地味な感じの女性だ。
とノフィナは思った。
この寮に住む女性は大抵派手な格好で、近寄り難い印象がノフィナにはあった。
その中では大人しいのでこの子となら仲良くやれそうと思った。
「良かった、私はシャム、新参なの、貴女も新参?」
「はい、色々あって…」
理由は言わないでおこう、とノフィナは考えた。
「そう、私は元カレに脅されてね、言う通りにしないとお前の家を狙うぞって…」
ここでカミングアウトかい!ノフィナは驚愕。
「ここはね、大体の皆が訳ありの子ばかりなの、話やすそうな子貴女くらいだし」
シャムはこう言う話題でも笑顔を向けていた。
はてさて、向こうが話してくれた事だしこちらも話すべきだろうか?と根の律儀なノフィナに考えがよぎる。
自分が元王女で、姉から国を再建しようと勧められて来たもののそれが罠で、強制的にここで働かせられる事になったとか言ったらどう思うだろう?
おかしな子に思われるならまだ良いが間に受けられるとそれはそれで騒ぎになるのでやめておきたい。
自身で源氏名を王女の時の本名である「ラナエ」と名付けて置いて何だが。
「あ、言いたくない事情があるなら言わなくても良いから、慣れてからいつ話してもいいし」
シャムは固くなるノフィナを宥めるように肯定した。
「ありがとう」
と笑顔でノフィナは返す。
「そろそろ時間だし行こう!ママに怒られちゃう!」
「そうだね!」
話しているうちに随分時間が過ぎた。
色々聞きたい事はあるがここまでにしておこう。
尚、ここで働く女性達は切り盛りする店主的な存在の女性の事を「ママ」と呼んでいる。
男性なら「マスター」だ。
今度はノフィナがS役に転ずる。
「ほらほら、ここが良いの!?」
「いいけど…ちょっと違うなあ…」
あれ?引かれた?
「何やってんだい!こうするんだよ!!」
先輩がノフィナから鞭を取り上げ、バシィッと男を叩く。
「あぁおう♪もっとお願いします!お願いします!」
男はハマる。
「ほらやってみな!」
そしてそして、ノフィナが鞭で叩く。
「えいっ!えいっ!」
「ああおぅ!!」
(どうしよう…段々私が私で無くなってきてる…)
段々いけない方向に向かっていくノフィナ。
こうした業界に身を落とした今、もう王女にはなれない。
でもノフィナには一人友達が出来た。
彼女も同じような思いを毎日してるのだろう。
そしてそして仕事終了時、部屋に戻るノフィナ。
『おかえりノフィナ!お客さんが来てるよ?』
ワイマが尻尾を振りながら出迎える。
お客さん?と思ったがその正体は少し行った所で判明された。




