私の家族
「お金もそろそろ底をついてきたな…」
良い子は寝静まっている深夜、ユグドとゾノミが話し合っている。
机の上には現在の全財産を記した紙が…。
電気代、光熱費、水道代がそろそろ尽きかけているのだ。
と言うのも、コロナによってユグドの勇者としての活動を政府から制限されたのが大きい。
勇者の目的は大魔王コロナを倒す事。
コロナにとって勇者の行動を制限させる必要があったし、勇者が行動を制限されるのは重大なリスクであった。
コロナは政府に関与はしていないが、間接的に政府、国の代表である首相をマインドコントロールをさせ、恐怖を煽り、自粛ムードを蔓延させているのだ。
そしてそして、ノフィナはトイレに目が覚め、階段を降りている時、こうした二人の話を聞いてふとした罪悪感に苛まれる事になった。
(私がこのままお世話になっていても良いのだろうか…私は一体どうすれば…)
ノフィナは偶然二人の話を聞いてしまい、暫しここにずっといて良いのか迷う事になった。
ーーーいっぽう、とある暗闇の街にて、コロナにかかってしまい、隔離療養を余儀なくされ、周囲からも白い目で見られる事になったある女が呪詛を唱えていた。
「ラナエ・パトリシカ・ガーランド…私の可愛い妹…貴女は絶対に許さない……貴女さえ生まれなければ私は王位を剥奪される事もなく、体を売る必要もなく、こんな惨めな思いをしなくて済んだんだ……ラナエ・パトリシカ・ガーランドよ…私の可愛い妹…今度は私が貴女の全てを奪う番よ……く…ふふふふ…ぐふふふふふ………」
ラナエと言う何処かの姫を恨みながら一人の女は人里から隔離されたある場所で寝る間も惜しみ、呪詛を唱え続けていた。
暗い部屋に蝋燭が一本立てられ、頼りない灯火を灯している。
そしてそして、机の上にはとある立派な城の映った写真と、城のマークの入った封筒がある。
そして手紙をその封筒に入れて一羽のフクロウの足に繋げる。
「さあ私の可愛いアイリス(フクロウの名前)この手紙をにっくきラナエに送っておやり!」
女はそう言うと窓を開けてそのフクロウを解き放った。
「ラナエ…今復讐してやるわ…ぐふふふ…」
コロナにかかった惨めな女の復讐劇ははじまったばかりだ…。
ーーー
ノフィナにとって知りたく無い事実を知ってしまった。
ユグド家はノフィナの知らない所で切り詰めながら生活を送っている事に。
ノフィナは胸がきゅっと痛む感覚を覚えた。
遊んでばかりではいけない。
(私も考えなくてはいけないな…)
ノフィナは思った。
『君にはこれまで大変な日々を過ごした分だけ幸せになって欲しいんだ!』
『大丈夫よ、貴女の幸せが私達の幸せなんだから!』
二人の言葉が重くノフィナの気持ちにのしかかる。
でも、甘えてばかりじゃいけないよね?
そうだ!バイトをしよう!
ノフィナは思いついた。
そうだ!バイトをすれば少しでも家に金を入れられるしユグドさん達の負担も少しは減らせるかも知れない!
それにゾノミさんはお腹の中に赤ちゃんがいるし。
何かしていなかったらもし赤ちゃんが産まれてきたら赤ちゃんに良い顔出来ないもん!
よし、バイトをしよう!
ノフィナは意志を固め両手をぎゅっと握った。
「え?募集してないんですか?」
しかしこの自粛ムードが続き、所々が休業しているのにバイトを見つける事そのものが容易な筈が無い。
『ノフィナちゃん、肩の力を抜いたら?』
ワイマがこう言ってくれる。
それもそうかな?
ワイマは何もわかってなさそうだけど、逆にわかられても困る。
何も考えて無さそうなのがワイマの良いところだからだ。
ひょっとしてユグドさんやゾノミさんも私に対して同じような気持ちなのかな?
でも私は私のできる事は精一杯したいよ。
携帯を見てみると一応募集している所は沢山ある。
でもずっと遠い所ばかり。
遠くまで行ってまで働く気になれないと言う事は私の助けたいと言う意志や気持ちはここまでなのかな?
チイさんはどう思う?
「ハッハッハッハ……きゅうんきゅうん…♪」
ワイマが勢いよく可愛らしい尻尾を振って餌を強請ってくる。
(子供と同じで、すぐにあげてはいけないんだよね?)
「後であげるから今は我慢してねー♪」
それとそれと、前回は出番作れなくてごめんね、これからうんと活躍させるからねってどこ向かって言ってるんだ。
「一人暮らしって私にも出来る?」
ノフィナはノフィンに聞いてみた。
彼も一人暮らしは経験がある。
『出来ないでも無いけどしんどいよ?光熱費とか馬鹿にならないし…後ゴキブリや蜂は出てくるからゴキブリホイホイとか蜂の巣をとり除いたりはする必要があるね、それとそれと、君は女の子だから鍵は厳重に閉めないとね!』
(そうなんだ大変そうだなぁ、ゾノミさんから今のうちに料理とか学んでおこう)
とか色々考えてはいるが決心は中々定まらない。
大人になるのは大変だ。
それとワイマを養っていけるのかもわからない。
いやワイマはここに置いていても良いが、ノフィナとしてはワイマはいつの間にかかけがえの無い存在になっていたので離れ難かった。
しかしそんなノフィナに人生の転機が訪れる。
ノフィナの元に一通の手紙が届いたのだ。
(あの鳥は伝書フクロウね、今どこにいるかわからない人も魔力を伝って送る事の出来ると言う…あれ?こっちに向かって来てる?)
案の定、フクロウはこちらに飛んで来て立ち止まった。
「クッククック♪」
と首をキョロキョロさせながら鳴いているのが可愛らしい。
足に封筒が貼り付けられているのでそれを取ってあげるとそのフクロウは元の持ち主の元へと飛び立っていった。
さてさて、ノフィナはその封筒を見てみるのだがなんとその封筒の写真の城を見た途端突然
ノフィナの脳裏に電気の糸が走る。
すると今まで忘れていた事が次々とインスピレーションされていったのだ。
なんとその写真には魔力が込められており、なんらかの作用を起こすように出来ているらしい。
(思い出したわ…この城はかつて私の住んでいたガーランド城と言うお城で私の本当の名前は…
"ラナエ・パトリシカ・ガーランド"!)
そう、亡国の王女ノフィナの正体は「ラナエ」と言う「ガーランド城」のお姫様だったのだ。
勿論ガーランド城は突如魔王の猛攻に遭い、滅んでしまったが………。
そしてそして、その手紙にノフィナ、いやラナエの姉の名前が書かれていた。
「タリアお姉様…」
そして、手紙にはこう書かれていた。
『親愛なる妹ラナエよ、覚えていますか?私はタリア・イシュメル・ガーランド、貴女の姉です。
現在、私は亡国の民と共に城を再建する計画を打ち立てています。
なので貴女には是非、私達の元に戻って来て欲しいのです。
戻って来た暁にはありとあらゆる保証を致しましょう。
私達は貴女が戻られる日を心待ちにしております』
(タリアお姉様…城が嫌で逃げたとお父様とお母様からは聞いていたけど…
ともあれ、もしガーランド国を再建し自身がお姫様にまた戻れたらお金も入り、ユグドさん達に恩返しが出来るかも知れない!
さいあく、ユグドさん達も城に招き入れてずっと一緒に暮らし続けていけば良い♪)
ノフィナはそう考えるとワクワクと頬の緩みが治らなかった。
そうだ、ガーランドに戻れば良いんだ。
幸い、手紙にはマップがあり、目印も付けられていた。
それが姉、タリアのいる所だ。
これを逃す手は無い!と考えたノフィナは早速ユグドとゾノミにその事を伝える。
「どうしたのノフィナ、とても嬉しそうだけど?」
ノフィナの心の踊りようは表情にもモロに出ていたようだ。
「わかる?私が亡国の姫だったって事は知ってるでしょ?それでお姉様から一緒に城を再建しないかって誘われたの!」
爛々とした声で伝える。
「そう、良かったじゃない!でも会えなくなると思うと寂しいわ…」
とゾノミは自分の事のように喜ぶが後に少し声のトーンが下がる。
それを聞いてノフィナは少し目が潤むが、そう付け加えた。
「そう思ってくれて嬉しい♪もし城が再建出来たらユグドさん達も呼ぶよ、そしてまた一緒に暮らそ?」
明るい声で机に乗り出し誘いを入れる。
「それもそうだな、でも君をこれからは恭しく振舞わないといけなくなるな」
「ユグドさん達はいつも通り接してくれたらそれで良いよ!」
「あらもう、それ言ったら皆から嫉妬買っちゃうじゃない♪」
「「あっはっは♪」」
家にはかつて無いほど笑いに溢れた。
しかししかし、その後ノフィナに更なる波乱が待ち受ける事になろうとは誰が想像出来ただろうか………。




