飲食店を救え!
ユグド達はかつてお世話になった事のある夫婦に出会う。
「ケリーさんにサマーンさん、どうしたんですか?」
「あ、ノフィナちゃん…ユグドとゾノミも…」
ノフィナから話しかけ、二人も挨拶をする。
ケリーとサマーンはユグドの知り合いで先輩にあたる。
しかしケリー達はやっとかつての後輩の存在に気がついたと言った具合だ。
それにかつてのような覇気が無い。
こないだ出会った時はいつの昭和のラーメン屋かよと言った具合に元気があったと言うのに。
「調子は…良くなさそうですね…」
ノフィナが言う。
「あぁ、ここもいつまで持ち堪えられるか…」
せっかくパティシエの夢が叶って店を開いたのにという悔しさと失望が雰囲気から感じられる。
「何処の飲食店も短時間ならともかく強制休業にされていますね…」
「ユグドさんにゾノミさん、ケリーさん達が可哀想だよ、何か食べて行こうよ!」
「そうだな、この店の味はお気に入りだしな!」
「そうね、いつもお世話になった先輩が困ってるんだもの、助け合わなきゃ!」
そしてそして、レストランに入りメニューを開き注文をする
「どれにしようかな〜♪」
「ゆっくりで良いわよ」
「どれにしようか迷うよね、とりあえず俺は日替わりにしたけど」
「んーじゃあ私も日替わりで!」
料理を待っている間ノフィナはキョロキョロと見渡す。
ガラ〜ン…………。
客は自分達だけのようだ。
今日は休日で昼過ぎ、客でごった返しても良いくらいなのに…。
「誰もいないね……」
「うん、みんなコロナを恐れて来ないんだ…」
…とその時、「バリィン!!」と窓ガラスが割れる。
「きゃっ!一体何っ!?」
突然ガラスが割れて驚くノフィナ。
「コノヤロー!!……また奴らか…」
「奴ら?」
「コロナ警察だよ、昨日も「店閉めろ」と張り紙していきやがった」
大声で叫んだかと思うと暗いテンションに戻り、聞かれるや悔しそうに声を震わせそう答える。
「酷い……」
「この時期だ、仕方がない、行く先不安ではあるけどな…」
そうしている内にメニューが来る。
「うわ〜美味しそう〜♪いただきまーす♪」
しかし美味しそうな料理が運ばれてくるとさっきまでの重い空気は無かった事になるのが不思議な所。
ノフィナは早速席に座り、出されたメニューを口に運んだ。
「ん〜〜〜美味すぃ〜〜〜〜〜♪」
思わず頬が緩みとろけるノフィナ。
そしてそして、もっと味を求めるように食べまくる。
バクバクバク……。
「ん〜〜〜デリシャス〜〜♪」
「ちゃんと味わって食べなさい、ほらこんなにこぼして…」
ノフィナが美味しそうに食べている所ゾノミが実の保護者のように注意する。
「あぁこんなに美味しそうに食べてくれる客見るの久しぶりだなケリー…♪」
「そうだな……この瞬間がウチの一番の楽しみなんだ………」
うるうるとするヤンキー夫婦。
「そんなに客が来なかったんですか?」
「あぁ、もう三週間以上だ……」
「えぇ!?」
ユグドとゾノミは驚く。
「こんなに美味しいのに誰も来ないなんて勿体ないですよ!今すぐ売り込みましょう!」
ノフィナが景気づける。
「このご時世に売り込んでみても客なんて来るのかね?」
「でもでも、やってみないとわからないぜ?」
サマーンが訝しげに腕を組むがケリーはノフィナの意見に賛同するように紡ぐ。
「じゃあチラシを作ってコピーでもしましょう!」
ゾノミが意見し皆でチラシのデザインや文を考える事に。
ーーー
そしてそして、ケリーとサマーン、ユグド達で別々の場所でチラシ配りに奔走する。
繁華街付近ではコロナの影響で人通りが少なく休業となっているので、どうしても生活物資が必要になり、人が集まってくるドラッグストア周辺に場所を絞り込む。
「熱い男と女のレストラン(ケリーとサマーンの開いてる店名)!絶対美味しいので来てみてくださーい!!」
3人の中で最もチラシを配るのが上手いのはゾノミだ。
「どうぞ♪」
「お、ありがとう♪」
彼女の配り方は手慣れているように見えるし、実際いっぱい人が手に取っている。
一方でノフィナは人の通行を邪魔しているようにしか見えない。
「はいはーいチラシですよー♪」
元気よく配ってみるものの人は迷惑そうに舌打ちしたり時には体をぶつけたりする。
「うう……負けちゃ駄目よノフィナ!」
ノフィナは涙ぐんで耐える。
『ゾノミやユグドを見習いなよ』
とノフィンのダメ出し付きで。
その半々がユグドだ。そこそこチラシ配りの効果はあるが表情が固く若い女性や子供連れなどは逃げてしまう。
「何が駄目なんだ…?」
とノフィナ程では無いとは言えゾノミと比較して中々減らない事を疑問に感じる。
「ユグドは表情が固いのよ、もっと柔らかい表情で配ってみて?」
「こ…こうかい?」
ユグドは笑顔を作ってみるがやはり固く
「緊張するのは仕方が無いわ」
とゾノミはせめてもの慰めをかける。
………とその時。
「お前ら!何人の断りも無くレストランなんかのチラシを配ってるんでごわすかーー!!」
男の怒鳴り声が轟く。
そこには小太りの頭が禿げた背広の男が鋭い剣幕でユグド達を睨んでいた。
「困っている友達のレストランのチラシ配りです」
毅然とユグドは答える。
「飲食店が自粛しなければならないこの時期にチラシ配りとは見上げた根性でごわすな!このマッサの剣のサビにしてくれるでごわす!!」
マッサと名乗った男が手を突き出すとそこに剣が現れ、「無尽剣十時丸!!」と叫び構えた。
「ここは戦うしか無さそうですね!」
ユグドが前に出る。
「あの人もコロナ警察?」
「そうみたいね…」
ノフィナとゾノミは囁きあう。
「貴様、中々腕が立ちそうでごわすな、しかし薩摩隼人であるおいどんには勝てないでごわす!」
「しかしこの戦いは引き下がれません、妻や養妹が見ていますからね、本気で戦わせていただきますよ!」
ユグドが緑色の闘気を沸きたたせ、臨戦態勢を取る。
「ユグドさん!」
ノフィナは一緒に戦おうとするがユグドは首を横に振る。
「これは男と男の戦い、君はゾノミと戦う所を見ているんだ!」
「後悔しても知らぬでごわす!破ーーーーっ!!!」
マッサは闘気を込めて炎のような気体を噴出させる。
(くっ、なんて闘気だ…)
ユグドはマッサの闘気に圧倒されかけるが自らも負けじと闘気を噴出させる。
「示現流!真空突き!!」
マッサの放った真空突きはユグドの心臓を貫こうする。
「くっ!」辛うじて避けた先の地面には穴が空き、ジュワワと音を立てて煙が舞う。
ユグドはジャンプし「ユグドブレード!!」とマッサを縦薙ぎに斬りかかった。
「甘い!」マッサはユグドの剣撃を横に弾き、縦薙ぎに振るう。
「キイイイィン!!!」
ユグドは歯軋りしながら剣で剣を防ぐ。
ガチガチと刃と刃が鳴り、ユグドはマッサに圧されていく。
「「ユグドさん!」「ユグド!」しっかり!!」」ノフィナとゾノミは懸命にエールを送る。
「大地と一体!ガイアダイブ!!」
ユグドは体をスクリューさせて地面に潜った。
「甘い!示現流奥義大地噴出剣!!」
マッサは剣先いっぱいに赤い闘気を纏わせ、それを全体重をかけて大地に突き刺す。
「ぐあああぁ!!!」
すると激しい地鳴りと共に大地が噴出し、ユグドは上空に弾き出された。
ドサリッ!ユグドは火傷を負い地面に崩れる。
「見たか!薩摩隼人の底力!」
マッサは不敵に笑う。
「笑うな!」
「誰でごわすか!」
今度は向こうからサマーンとケリーがやってきた。
「今度は貴様らでごわすか!」
「よくも俺の可愛い後輩をいじめてくれたな!」
サマーンが鋭い目つきでマッサを睨みつける。
サマーンは稲光のような闘気を噴出させる。
しかしマッサはもっと物凄いオーラでサマーンのオーラを圧倒させる。
「どりゃーーサマーソルト!!」
「ぐあっ!」
サマーンは瞬時の内に宙返りしマッサを蹴りつける。
マッサはそれを避けて横薙ぎに真空斬りを放つ。
「ぬんっ!!」
「危ねえ!」
真空斬りの刃はあちら側のコンクリート式の壁に切り傷を刻む。
後で損害賠償が出そうだがコロナ警察のマッサにはどうでも良い事だった。
「本気で行くぜ!サンダーソード!!」
サマーンは電流を纏った鋭い剣を握りマッサと応戦する。
物質化したサンダーソードが炸裂するがマッサはそれを剣で受け止める。
やはり簡単にはやられてくれない。
そしてそして更にサマーンはそこから激しい電流を迸らせる。
「どりゃあああぁサマーンボルト!!」
「強力防壁!!」
マッサは赤いオーラをより物質化させ、サマーンの高圧電流を防ぐ。
「「どりゃーどりゃーどりゃー!!!」」
キーンキーンキーン!!
マッサとサマーンは激しい攻防戦を繰り広げる。
そしてそして、かまいたちや電流の糸が空を舞い、それは周囲のものを引き裂いたり空飛ぶ小鳥をも地に落とす。
「なんて凄まじい戦いだ…」
「貴方、じっとしてて…」
ゾノミが治療魔法を施している中置いてけぼりとなったユグドは二人の戦いに目を見張る。
「サマーンさんも、とっても強いんですね…」
「当たり前だ、サマーンもこの町最大の不良だったからな!」
ケリーがノフィナの言葉に答えた。
「しかしこのままじゃアイツが危ねえな、ウチもちょっくら行ってくるわ!」
ケリーがそう言うと彼女も戦場へと向かって行った。
「ケリーさん!危ないですよ、戻ってきてください!!」
ノフィナが呼び止めるもユグドは
「心配いらない、ケリー先輩も凄く強いんだ!」と言ってきた。
「ウチも助太刀するぜ!」
「ケリー!油断するな!」
ケリーが助けに入りサマーンはマッサの強さを認めているのかそう注意を呼びかける。
「ふん、助けに入ったのが小娘か!おいどんも舐められたものでごわす!」
「ウチを甘く見るなよ!」
他の客は「マッサさん頑張れ!」「コロナ広げる奴なんかやっつけろ!」とエールを送っていた。
「あなた達サマーンさん達を応援しなさいよっ!!」
「ノフィナちゃんギャラリー達の言う事は聞き流しましょう!」
サマーンとケリーは見事な連携プレーを見せ、マッサを翻弄する。
「二手に分かれて攻撃だ!!」
「了解!!」
一人じゃ太刀打ち出来ない事も二人ならなんとかなる!
サマーンとケリーは夫婦でもあり相棒でもあった。
なんせ、その異能と息のあったプレーで世界を救った事のある強者なのだ。
「うっ!くそっ!」
流石のマッサも二人の連携プレーに翻弄されとうに息を上げている。
「「どりゃーーーー!!!」」
サマーンとケリーはダブルキックをマッサに食らわせ、マッサは激しく壁に打ち付けられてそのまま気絶した。
「あの夫婦かっけー!」
「私もそう思う!!」
人々は一気にサマーンとケリーに注目を向けはじめた。
「人ってゲンキンだなー」
「ふふっそうね♪」
ともあれ、こうしてサマーンとケリーの経営する店に人気が出始め、沢山の客が訪れるようになった。
「うわー美味んめえ〜!」
「最高に美味しいわ!」
人々はその濃厚な味わいを思いっきり楽しむ。
「アンタ達のおかげでウチの店に人気が出始めて閉店せずに済んだよ!」
「いやーまさか後輩に助けられるなんてなー!」
夫婦はいつものハイテンションな性格に戻りユグド達に礼を述べる。
「いえいえ俺は結局何もできませんでした、これも一重に貴方達の活躍、そしてゾノミやノフィナちゃんの活躍のおかげです!」
ユグドは自分は立てずに他の皆を立てた。
「またまた謙遜すんなよ!」
「痛いっ!」
ユグドはサマーンに思いきり背中を叩かれる。
その場にまた笑いが戻った。




