ブラックラビット兄弟
「ワイマ!散歩だよ散歩だよ!」
「ワン!ワン!」
ノフィナはワイマを散歩に連れ出す。
ワイマは尻尾を勢いよく振り回し、思いっきり嬉しそうな様子を見せる。
(可愛いなぁ…♪)
ノフィナはそんなワイマの表情と仕草に顔がにやけてしまう。
「あんまり遠くまで行っちゃ駄目だぞ!」
「はーい!」
ユグドが呼びかけノフィナは元気よく返事する。
「大丈夫かしら…」
「まだ心配してるのか?大丈夫だって♪」
神経質になるゾノミをユグドが心配いらないと宥める。
「最近、物騒な組織が現れて正義を名乗っているから心配で心配で…」
「ブラックラビットか…コロナ警察の少年グループで成り立っていて村中で反政府を許さないと掲げて暴れている連中だな…」
ユグドはゾノミの言う事ももっともだと思い深刻な表情になる。
しかしユグドは持ち前、楽観的でお人好しな性格だ。
彼はゾノミに心配症過ぎるのを諌める。
「ゾノミは心配症過ぎるんだって、ノフィナあれでもしっかりしてるし、気に病み過ぎたら身が持たないぞ!」
「そうだと良いんだけど…」
(ゾノミもいっぱいいじめられてきたからな…こうはなるかも知れないな…)
ユグドはちょっと困り顔で笑ってみせた。
ーーー
「〜♪」
ノフィナは「川辺のデート」をハミングしながらワイマを連れ出し散歩をしている。
太陽の光で川辺が煌めき、ボートに乗ってカップルが楽しんでいる様子が見える。
(楽しそうだなぁ…私もいつかは誰かとこうしてデートしているのかなぁ…)
それを羨ましそうに見つめ目を細めていたノフィナだったが
「こんな所に亜人がいるぞ!」
「反政府の所に引き取られているからコロナ亜人か!コロナ亜人!!」
心ない悪口である集団が囁き合っている。
『ノフィナ気をつけて、後ろに変な連中がいるよ!』
「大丈夫、聞こえないふりすれば…」
内心きゅっと心は痛むも聞こえないフリして通り過ぎようとするノフィナ。
「おい無視するなよ!!」
後ろから口汚い言葉が放たれる。
ノフィナは取り囲まれる。
「何か?」
ノフィナは恐怖と不快感を押し殺し毅然に前を見据える。
「ヘッヘッヘ…」
どんな悪どい悪戯をしようかと言うふうに連中が薄ら笑いを浮かべている。
四方向に取り囲まれていて、不良っぽい出立ちをしており、うさ耳は着けているが不思議と可愛らしさは微塵も感じない。
「モンスター女、ここはお前のいる所じゃないぞ!とっとと引越せ!」
「反社会に引き取られた亜人が!」
ノフィナはカッとなって言い返す。
「モンスターじゃない!それと反社会じゃなく勇者です!!」
しかし暗兎は言った。
「じゃあお前の体から生えているものは何なんだ!化け物ですて言ってるようなものじゃないか!!」
『このっ!』
「やめてノフィン!!」
ノフィンが反撃に出ようとするのをノフィナが止める。
『しかし…』
「ここで騒ぎを起こす訳にいかない!」
「ユグドとゾノミは勇者であって反社会組織じゃありません!これで失礼させていただきます!!」
こう睨みつけて一声放つと過ぎ去ろうとした。
「生意気な女め!!」
ドカンドカンドカン!!!
こうされながらも誰か助けてくれると思ったがノフィナの判断は甘かった。
皆、助けるどころか素通りしたりしている。
それどころか「ブラックラビット様!コロナを広げようとする輩をどんどんやっつけてください!!」と誰かが応援し「おう!任せとけ!!」と返す滅兎。
こうなったら反撃に出るしかない、その代わりノフィンにはやらせない、かえって騒ぎになるから、そしてそして、私も勇者になってやるんだ!
「ノフィナボム!!」
ノフィナは魔法で軽い爆破を目の前に起こさせた。
「ちっ、やる気かこいつ!」
連中はイラッとした表情を見せる。
ノフィナは前を睨んで短刀を目の前に出現させてそれを握る。
「ユグドさんとゾノミさんの事を反社会組織と言った事を謝りなさい!」
短刀を勇ましく突き出しノフィナは啖呵を切る。
「謝らなければならないのはてめーの方だこの野郎!!」
兎四兄弟はノフィナを一気にたたみ込んだ。
ドンドンドン!!
ノフィナはやられながらも応戦する。
しかしノフィンに頼ろうとしない。
『ノフィナ…!僕はどうしたら良いんだ!』
やり疲れたのかドンっと突き倒し死兎が抵抗もままならないノフィナに脅しをかける。
「許して欲しかったら勇者とか言う反社会やってるユグドとゾノミに勇者やめるように言って来い!」
女の子に対する配慮をかけず髪を引っ張りあげる。
「言いません!」
ボロボロになっても強気な姿勢を崩さずノフィナは言った。
「コイツどうする?」
「丸裸にして川にでも突き落とせ!!」
「やめてやめて!!」
「うるせえコロナ亜人の癖に!!」
そしてそして、ノフィナは身ぐるみを剥がされる。
そして「せーの!」と悪ノリの掛け声と共に川に突き落とされる。
「アッハッハコロナ亜人成敗したったぞー!!」
「よくやったー!!」
周囲は拍手する。
人がコロナ感染したり、自粛をしないのを見ると無条件に敵対視される社会システムがこの時代は出来上がってしまった。
相手がどんな連中でも、「正しい」事をしたらそれが「正義」になるのだ。
「出来上がった」と言うより「中世に逆行した」と言えよう。
ーーー
ノフィナは無事に家に帰れたが随分日が暮れてしまった上にボロボロの状態で帰ってきたのでユグドとゾノミに思いっきり心配された。
「一体何があったんだ?」
ーーー翌日。
「ごめんなさいごめんなさい!俺達が悪かったです許してください!」
兎達は土下座し目の前で仁王立ちするユグドとゾノミに必死に謝る。
「謝って済むと思ったら…!」
「ゾノミ!気持ちはわかるが奴らも反省してるんだ、もう良いだろう!」
散々痛めつけたのであんな事はもうしないでいただきたいものだ。
そしてそしてユグドとゾノミは夕暮れを見る。
「本当に嫌な世の中ね……」
「ああ…自粛や誤った報道を間に受ける連中も多い…大魔王コロナを倒さない限り収束は夢のそのまた夢だと言うのに…」
唇を噛み締める二人。
コロナ報道の収束への道のりはまだまだ遠い……。




