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世界樹の門  作者: どら焼きドラゴン
第2章 異能力
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第22話

こっちも久しぶりに投稿

「ほら!どうした!お前の気持ちはそんなもんか?」


 堀先生のキックが腹をとらえ、体がくの字に曲がる。


「ぐ、ぐうう!ぐぉお!」


 負けじとこちらも堀先生の足をつかみ体制を崩させると、背負い投げの要領で、投げ飛ばそうとした。


「ハッ!」


 ____ズダンッ!


 しかし堀先生は地面に身体が付く寸前に床に手をつき威力を殺すと、足で身体を固定し、逆に床に叩きつけた。


「ぐほっ!」


 背中から叩きつけられ肺の空気が抜ける。しかし、それに苦しむ余裕はない。


 バコッ!


「ほう? どうやらまだやる気があったようだな。」


「フー! フー……。くそ! 上手くいかねぇな。」


「ふむ、ヒントだ。お前は技術はそこそこあるが、身体に振り回され過ぎだな。持ち前の馬鹿力で技術力が台無しになっている。」


「馬鹿力………なるほど。」


 ヒョロヒョロだった時の感覚で戦っていたから違和感があったのか。やはり先生には見抜かれるか。


 ならば!


「力を活かしてひれ伏せさせるのみ!」


 堀先生に真面目からぶつかり合い力と力のつばぜり合いに持ち込む。

 こちらの方がパワーは上だ。必ず押しきれる!


【勇気をだせ!力を解放しろ!龍の力を忘れるな!】


 そう思った瞬間、身体の底から何かが溢れる気がした。

 前に病院のトレーニングジムの時は違い鱗は生えてないが、似ている。


「真面目からきたか! しかし、それでは私をたお…おおおおおおお!?」


「うぉおおおおおおお!!」


 堀先生の腕とシャツの上から腹を掴み持ち上げる。


「なんだ!? いきなり力が増した!? うわぁああああ!」


 ジタバタ暴れる堀先生にびくともせず、大きく振りかぶると先生を壁に放り投げた。


 壁にヒビが入る程の音が響きわたり、勝敗を見ていてたギャラリーに伝えた。


 堀先生は凹んだ壁からずり落ちる。しかし、片膝をつくだけで倒れることはなかった。


「……タフだな。」


「グフッ、いやー!やられたやられた! はっはっは!」


 堀先生はいきなり笑いだす。もう殺気は放ってなかった。

 ちょっと拍子抜けである。


「…え。」


「うん、合格。というかパーフェクトだよ。」


「合格? まだ一撃で吹き飛ばしただけだが?」


「それだよ。まさか吹き飛ばされるなんて予想してなかったんだよ。異能力も使ってなかったみたいだし?」


 堀先生はそう言うと弥生をチラリと見る。


「ええ、そいつの異能力は戦闘向きではないわ。異能力を使っていたら私わかるもの。」


「………。」


 まただ、龍の力は異能力とは違うのだろうか。


 そもそも俺の異能力は『あらゆる生物とのコミュニケーションが可能になる』と判断された。

 ではあの龍になれる力、いまさっきの力、そして弥生を助けた時の力、あれらはいったい何なのだ?

 龍は言っていた【自分と融合すると本当の意味で龍を自分自身のモノにする】と。


 つまり……。


「……()能力ではなくなったということか。」


「ん? どうしたんだい?」


「いや、なんでもない。」


 今はまだ話す時ではないだろう。人間を辞めた確証なんて必要ない。自分が何者かは自分で決めるものだ。自分が正しいと思った道に行けばいい。


「そうか。うーむ、時間も丁度いい。お昼にしようか!」


 堀先生はそう言って朗らかに笑った。たしかに腹が減ったな。人間とは、なんて柄にでもないこと考えていたからかいつもより食えそうだ。


「グラス、こい。飯に行くぞ。」


『飯! 飯! 肉! 肉! 旦那、俺は はんばぐ ってのが食ってみたい。』


 弥生の持っていたバスケットから飛び出したグラスは肩に乗ると、早く行こうとばかりに鼻をピクピクさせる。


「はんばぐ? ああ、ハンバーグな。」


「ちょっと! イグアナにハンバーグはだめでしょ!」


 弥生が空のバスケットを持ちながら付いてくる。

 まったくいつもうるさい奴だ。


「大丈夫だろ、多分。」


「身体壊したら可哀想でしょ?」


『俺は大丈夫です!』


「本人は大丈夫だ! って意気込んでるが?」


「ダメなものはダメーー!!」


 また顎をアッパーされた。何故だ。



 ■■□■■



「ふむ、古橋 竜鬼の異能力は『あらゆる生物とのコミュニケーション』よってランクを下方しろ、と。はぁー。」


「中島、諦めろ。弥生の異能力、『鑑定と観測』系の能力に判断させたのだ。」


 滝尾の執務室で報告書を読んでいた中島教授は頭を抱える。滝尾はコーヒーを口に含み、心を落ち着けながらこれからの社会に思考を巡らせる。


「今は認めらてないが、官僚の奴らにもそういった異能力に目覚めたのがいる。彼らは頑張って新しい体制を作っている。……そのうち、異能力による差別化や事件も増えるだろうからな。」


「ああ、インターネットではすでに『選ばれし者』『異能力者』『使徒』なんて言われてる。特別感を覚えた若者がどうなるか……想像に難くないな。」


「そうだ。それに、若者でなくてもだ。社会の底辺、というと語弊があるが社会に不満に思っている奴らが強力な異能力に目覚めるケースもある。私からしたらそちらが怖いね、彼らは我々のような高所得者に対していい感情をもっていない。」


 例えば、会社員で上司に目をつけられ、いびられていた人間が突然、戦闘系異能力に目覚めたとしたらということである。

 学生でも同じである。クラスメイトから蔑まれ、いじめを受け、怨み、つらみが溜まった人間に目覚める圧倒的な『力』。それがどんな使われ方をするか、考えると恐ろしい。


「うむ、話が逸れたな。」


「そうだな。今は竜鬼くんのことについてだ。」


 二人は頭が痛い話はやめだといわんばかりに半ば強引に話題を変えた。


「この書類にあるように、やはり龍鬼の異能力は公開した方が良いのでは? 彼は肉体そのものすら変わっている。あそこまで変化したのは未だ彼のみだ。それに、親も心配している筈だろう? 一応病院に面会断絶ということにしてあるが……長くはもたんぞ。」


「………彼の親はいないさ。彼は幼少期に自動車事故で両親を失っている。」


「それは……では、この報告書にある面会を求める家族ってのは?」


「竜鬼くんの今の保護者である、彼らの遠縁のやつらだよ。やつらは……マスコミがあの巨大な木の麓から出てきた謎の人物達に運ばれ、警察に引き渡されたシーンを流しただろう? そう、竜鬼くんだね。それを見て会いたいと来てるみたいだ。」


 中島は黙る、あまりにも彼の家庭環境が複雑ということになんだか嫌な予感がしたからだ。

 

「……正直に言うと、竜鬼くんは純粋な日本人ですらないんだ。」


「国籍は日本人となってるが……?」


「それはやつらが勝手に変えてるからさ、調べると彼、凄まじい家系だよ。」


 滝尾はそう言って、一枚のファイルを中島に渡す。

 ファイルを開き中の資料を見て、中島は目を見開いた。いや、驚愕した。


「あ、あり得ん! 苗字、名前、国籍から家系まで全部違うじゃないか!」


「そう。彼の本当の名前はジャスパー・竜鬼・ロバーツ。アメリカ人と日本人の二重国籍。母が日本人とイギリス人のハーフだがこちらは生粋の日本人だな。父方がかなり大物だ、アグラフォーティスは知っているな?」


「たしか世界的な製薬会社だろ? 様々な事業に手を伸ばしていて、お前の会社ともたしか取引してたじゃないか。まさか!?」


「ああ…あそこの社長が彼の本当の父だ。いや、今は元社長か。」


「ということは竜鬼くんの家族だと言っている彼らも怪しくなってきたな。」


「それもそうだが…もうひとつ問題があってな。」


 滝尾はこれが一番の悩みだと言いながら机の引き出しから一通の手紙を取り出した。


「ほら、竜鬼くんはあの門を見つけ、あの門から出てきた人に連れてこられただろ? ニュースにもなったあの映像はもちろん海外メディアにも高値で取引された。そしてその運ばれていた少年が竜鬼くんだという情報もね。」


「なるほど。で?どこの国がコンタクトを求めているんだ?」


「あ、いやそっちではなくてな。竜鬼くんの名前を知った父方の祖父がコンタクトを取ってきたんだ。差出人を見てみな。」


 中島教授が手紙の包みに書いてあった差出人名をみて目を見開いた。

 

「……まさか、アメリカ海兵隊(U S M C)からとはね……。しかも、大佐クラスとは……。」


「返事はどうする?」


「竜鬼くんに話してからかな。彼にも聞いてみたいことは沢山あるからね。」











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