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彼の叶わない夢

作者: 行世長旅

彼は、叶えられないと分かっている夢をいつまでも追い続けていた。


出来る能力が無いのなら、出来るようになるまで努力すればいい。……だなんて、そんな簡単な話ではない。


彼自身も、私も、絶対に不可能だと分かっている。


それでも彼は、夢を諦めなかった。


身体が動かなくても、気持ちが負けていても、頭が働かなくても、それでもいつも、夢を追うと口にしていた。


だから私は以前、

出来ることをしようよ。

と、彼にそう言ったことがある。


すると彼は、

出来なくてもいい。追い続けることに意味があるんだ。

と返答した。


私には意味が分からなかった。

出来ないことを夢見るより、出来ることをした方が建設的ではないか。


けれどやっぱり彼は、諦めなかった。


そしてある時、

間に合わなかったか……。

とだけ言い残し、姿を消した。


その後彼の死を知らされたのは、1週間後のことだった。


遺書には、

タイムリミットが来た。僕はもう、夢を追うことすら出来ない。

と、それのみが書かれていた。


私は半分理解して、半分理解出来なかった。


おそらく、夢を追い続けることで「自分」を保っていたのだ。

叶わないとしても、夢にすがることで生きていられた。


けれど、それが出来ないことだと知っているのなら別のことをやればいいじゃないか。

他に出来ることなんてたくさんあるのだから、夢に拘る必要は無い。


私には、彼がそこまであの夢に執着した理由が分からない。


生き甲斐どころではない、せいそのものだと言える何かなど、抱えるだけ生きにくいだけだったんじゃないのか……?

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