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たとえ誰にも報われなくても

作者: 鱈井 元衡

「間違いない、姫様だ」

 津山つやま敬一けいいちはクリスタルが映す二人の姿を観て、したり顔を浮かべた。

 服装はすっかり変わってしまったが、顔はかつての姿をよく遺している。

「ようやくまみえることがかなう……!」

 ――まだ、死んでも死に切れんな。

 伊豆王国が滅びたとはいえ、いまだ血統は絶えていない。ならば、王国復興のためあのお方に一縷の望みをかけるほかはないではないか。

 だが、その傍にいる人間が問題なのだ。何をあの男を姫と親しげにしゃべっているのだろう。姫君をもっともよく理解している人間など、この私をおいて他にいない!

「まず、あの男を始末せねばならん。野望達成のために!」

 これが虚しいことか? いや、意義のあることだ……!

 怪しげに輝く月を背後、藍色の空が広がる中、津山は両腕を挙げて空中に飛び上がっていた。


 ◇


由奈ゆな!」

 テーブルをかこみ、椅子に座っていた鴻野こうのの娘たちが、木下きのした由奈ゆなをしかりつけるように呼ぶ。

「何をぐずぐずしているの。さっさとこの食器を洗うのよ」

 かつてはより高貴な身であったろう下女に、横柄な態度。

「全くあなたと来たら、元の身分にかまけて仕事をおろそかにするんだから!」


 部屋の隅でほうきを立てかけ、由奈は黙ってテーブルの上の食器をとり始めた。

 綺麗に食べきってもいない。残飯が片隅に残っているのが多い。

 ――きっと、急に裕福になってしまったせいで内面が立ち遅れているのだ。

 さして丁重な忖度もしない、この屋敷の賓客。


「……あれがもと姫様なのか?」

 意外そうな顔でたずねる。

「ああ。宮殿の外でふらついていたのを見たんだからな、間違いない」

 鴻野こうの喬平きょうへいは駿河王国の重臣である。

 白髪の多く混じった頭で、目は大きく、唇も幅が長い。ややゆがんだ弧を描くそれは、実に内面を象徴するように見えてならない。

 一方会話の相手は、二倍も肩幅の広く、筋肉質の屈強な青年。

 服の下に鎖かたびらを着こみ、腰には長剣をはいている。


関本せきもと殿は下田しもだに行ったことがおありか?」

「いや。親父は商売でよく出かけていたようだが」

 あまり自信もなさげな声で、賓客は返事。

「強勢を誇った伊豆の都も今は廃墟となり、伊豆の兵士どもの血が稲を元気よく育てているであろうな」


 鴻野は伊豆征服に功績があり、下田攻略の際は魔法式で、ミスリル製の城壁を突き破ったそうな。

 体力では関本に劣るとはいえ、恐らく魔力の強さで言えば一般の魔法使を越えているに違いない。だが、人間性はどうか。

「鴻野殿が直接捕えて自分の物にした、ということか」

「ああ。略奪から数日が経っていたし、他に金目の品もなかったからな」


 ――卑しい人間だ。無論おくびにも出さないが、関本はすでにこの男に愛想をつかしている。

 魔法使いならかえって仕えやすいと期待していたのだが、嫌な予感をここまでかぎつけるとむしろ離れ去った方がいいかもしれん。

 そして、部屋を往来する由奈の様子を観察する。

 ――これがかつて気品にあふれた姫君の姿なのか、と驚いてしまう。

 祖国を喪ったという事情を差し引いても、この少女は驚くほど従順だ。もはや、意志があるかどうかさえ明確ではない。

 銀のティアラや絹のドレスに代えて、今の姫君はみずぼらしい布の服を着て、髪の毛もぼろぼろに乱れている。その眼光には光がない。来る日を来る日を、希望も期待もなく、くぐつのように迎えている。


 一体その果てに何があるというのだ。


「鴻野殿、あの娘にどれほどの価値がある?」

「……知るか」

 興味もない様子で。

「下僕などいくらでも代えが効くからな。元王女だからといって丁重に扱う義理などありはせん」

 ――なるほどな。成り上がり者のさがだろう。いやしくも特殊な血筋を持つ人間だ。ぞんざいに扱えば世間の不興を買うであろうに。

 しかし進言したりはしない。その悲惨さをすでに経験してしまった子だ。

 関本自身、どこか自分の境遇が彼女に重なる気がした。その誉れ高い家柄のために、受けた災も一塩ではない……。


 姫君が再び、皿をかかえ壁際を通りかかる。関本はその時、由奈が意外と端正な顔立ちをしていることに気づいた。

 家畜のような生き方で損なわれたとしても、まだ根元から気高さがうせたとは思えない。現に姿勢もしゃんとしているし、丸みを帯びた優しげな顔つきもかつての豊かな生活の産物であろう。

 何より……首にかけた、青白く光る宝石。身分の低い人間には本来相容れないはず。

 ――あの娘、この家で飼い殺しておくには惜しい。


「鴻野どの、少し席を外してもよいか」

「何?」

 関本は意味ありげに見えないようとりつくろいながら、

「あの娘と話がしたいと思うてな」


 ◇


 ――あの日から、私は誰でもなくなった。

 由奈の心には、恐ろしくなるほど雑念がなかった。あるのは、ただ今日を無事に過ごすということだけ。

 鴻野家の人間に仕えるほか、残っているものは何もない。

 このまま、朽ち果てるだけ。

 ――これ以上、事態がひどくなるなんてことはない。


「やあ」

 廊下にさしかかり、鴻野たちから距離を置いたところで由奈に声をかける関本。

 心もとない顔つきで、少女は賓客を眺め返す。

「木下由奈と言ったね。元々は伊豆の姫君だとか」

 由奈は、ややためらってから、

「はい」

「ということは、かつては王宮に住んでいたんだな?」

「そう……ですね」

 依然として、言葉には生気がない。


「王宮での暮らしは? さぞかし裕福だったろうな」

「……」

 由奈は答えない。答えてやる道理もない。――私には、もうそれを語る意味がないのだから。

「おいおい、その質問には答えないってか? せっかく俺が話し相手になってやろうってのに」

 由奈は黙ったまま。反目しているわけではない。ただ、壮絶な無気力ゆえに。


「その宝石は? 誰からもらった」

「……お母さまから」

 ――私にそんなこと訊いて、何になるってんだ。こいつは、どうせ金目当てで諸国を渡り歩く傭兵風情。興味を持つはずがない。

「お母さまはどういう人だった?」

 由奈は、今度も沈黙した。

「じゃあ、いつその宝石をもらった?」

 ――答えたところで、何が変わるというんだ……。

 もう私は、だれでもない。

 故郷もない。家族もいない。

 あの日々から完全に切り離された私にはもう歴史がない。人間という以外に何の特徴もない、肉。

「それが主人に対する態度か? にしてはあまりに反抗的過ぎんか」

 関本は、半ばあきれたようにつぶやく。

「当然だ。都が落とされたんだからな……語りたくないのも無理はない」


 ――お母さまが敵の手に倒れたとき、私は槍を持って奴らに立ち向かおうとした。

 けど、私は奴らの手に捕まった。

 地面に叩きつけられ、無理やり縛られて、牢獄に入れられた。

 しばらくして、私は強引に外に出された。何人かの男が立って話し合う。私の価値がどうだの……

 回想に、口をさしはさむ関本。

「まだお姫さまであるという意識にかまけてて、この状態を受け入れる気になりもしていない」

 

 その時、由奈に何かがふつふつと湧いてきた。

 無意識にためこんできた負の感情が、今はっきりはじけてくる。


「お前に何が分かる!」

 由奈は切れて、関本の腹をなぐりつけていた。

「ぐっ……!!」

 突然のことだけあり、関本は腰をぬかして尻もちをつく。

 拳が痛むのも気にせず、腹に打撃を由奈。

「誰に私の気持ちが分かるんだ! 誰も私の苦しみなんて知らないくせに!」

 もはや由奈にとって関本はこの世の悪全てだった。由奈は、拳で何度も関本の腹を叩く。

「死んでしまえ!」

 それはあまりに愚かしい八つ当たりだった。あの惨劇とは何の関係もない人間に由奈は全ての罪をなすりつけた。

「いなくなればいい! お前らみんな!!」


 しばらくして、由奈は関本が抵抗しないことに気付いた。

 関本は、由奈のかよわい打撃を静かに受け止めていた。

 由奈のどうしようもない感情を、決して否定することなく、真正面から。

 急に由奈は、自分がいかに愚かしいことをしているかに驚いた。恥じた。

 自分のやっていることには何の意味もない。すると、次第に憎しみよりも悲しみのほうが勝ってくる。いつの間に自分が泣いていることがわかる。

 由奈は、関本の腹にすがりつき、その服をぬらしていた。

「……やめろ。痛いじゃないか」

 おだやかな声が聞こえてきたので、震えながら目を開け、頭をあげる。

 息は荒い。しかし、怒ってはいない様子。

「幼いよ、あんたは。まるで昔の俺みたいだな」

 苦笑さえ浮かべて、上半身を起こそうと。

 由奈は現実に返りつつあった。不安が次は押し寄せる。

 ――この人は、何をするつもりなのだろう。

「関本……さま?」 自身なさげに、首をかしげる。

 はりきった声、思い切り両腕を振り上げ、その場に立ち上がった。

「お前には素質がある」

 ほめているとしか思えない態度。動揺する由奈。

「何の話……ですか……?」

「最初はまるでロウ人形か何かかと思ったが、やはり腐っても姫君か」

 関本はなぞめいた言葉で続ける。

「こんな豚小屋に押し込められてていい人間ではない。だから、ひとつ取引しろ」

「取引……?」

 ――違う。こんな人、今まで出会ったことがない。

 由奈は、鴻野家の人間とも、下田宮廷の人間とも違う何かを、眼光にかぎつけたのだった。

「お前を、買う」


 ◇


 関本は、後ろに由奈を連れてその場にもどる。

「どうだ鴻野殿、あの娘を私にくださらんか」

 関本は、とっさの判断で。

「何、由奈を?」

 軽蔑さえ見え隠れする声を、鴻野は出す。

「あんなやせ細った奴を、外に連れ出してどうするつもりだ」

「大して価値もない物をここに止どめておく理由もあるまい?

 鴻野殿、無理にとは言わん。俺はあの娘がこのまま朽ち果てていくのを観てはいられんのだ」

 主人は、全く理解できないとでも言いたげな表情。

 王女としての価値がなくなった今、ただの奴隷と変わりがないと本気で信じているのだろう。

「……銀貨三枚でどうだ」


「三枚……」

 ――所詮その程度の価値しかない、というわけだ。関本は心底彼の俗物根性にあきれざるをえない。

「分かった。支払えない額じゃない」


 関本は、無表情の由奈をさえぎる。

 立ち止まる由奈。言葉に迷う関本。

 

 関本は、若干敬意を示した口調。

「木下姫……と言ったか」

 しばらくしてから、由奈は全く抑揚にかけた、低い声で、

「今はもう姫ではありません」

 関本は何度か思案したが、結局率直に。

「……木下由奈。今からお前は俺のしもべだ」


 胸元にかかった一つの宝石。察れば察るほど、なぜこのような少女が下賤な身に甘んじているのだろうと疑問が絶えない。

 ふところから銀貨三枚を取りだし、鴻野に向き直る。

「鴻野殿、これで問題なかろう?」

「うむ。確かに額どおりだ」

 うなずく魔法使。

「少し待て。書類を持ってくる」


 先ほどまでたわいもない会話を交わしていた二人の娘が、かんだかい声をあげる。

「まあ、あんなむさ苦しい男がこんなひ弱な娘を買ってどうするというの?」

「いい気味よ。あんな不気味な子がいなくなってせいせいするわ!」


 鴻野喬平はテーブルに一つの書状を置き、関本に語るよう、

「これから木下由奈は鴻野喬平ではなく関本寛の所有だ。異存はないな?」

 さしてうまくもない字で、日付と、契約の内容をしたためている。

「ああ。俺は字が読めんから血で署名するぞ」

 関本は親指を噛み、血をもらすと之を文章の末尾になすりつける。

 何の感慨もないかのように、その情景をそばでながめる由奈。

 痛みで親指を抑えつつ、自分の所有物となった少女に命じる。

「こっちを向け、由奈」

 少女はまっすぐ関本の瞳を視すえる。 

 理由を探ることもなく、由奈は関本が信頼に値する人間である気がした。自分の感情をあれほどぶつけても、


 喬平も、その娘も、ほとんど同じ目つき。

「全く、こんな娘を連れて何をしようというのか……」


 ◇


 日はすでに暮れ、夜空がさびしく見下ろす中、砂と土の上を二人の男女が歩いている。


「関本さま……でしたね?」

 やはり、若干残るよそよそしさ。

「『さま』なんてつけられると恥ずかしいな。まあ、師匠とでも呼んでくれ」

 元から汚れ仕事に身を染める関本には、敬意を払われることに慣れていなかった。

 まして相手は元王族だ。さすがに下に見るなどためらってしまう。


「師匠?」

 まだよくわからないという風に主人の顔を見上げる由奈。

 関本は、どこか心がしめつけられる感じがした。

 ――そうだ。この子はまだ何も理解してはいない。

「……なぜ俺がお前を買ったか、分かるか?」

 関本は少女の両肩に手を載せ、話を聴かせる。

「今は乱世だ。本当に信頼できるものなんて、どこにもありはしない」

 半分は、自分自身に向けた言葉。

「誰かに守ってもらうなんて期待してはならん。この俺自身にさえ期待してはいけないんだ」


 由奈は、うつむいている。

「……そんなの、わかってますよ」

 ――きっとこの人の事情があって言ったことばなんだ。私には、とても想像も及ばないことだけれど。


「由奈。これを握れ」

 またもや自分自身の世界に没入していたことを恥じ、関本の手を凝視する由奈。

 一振りの短剣がのっかっている。

 随分古そうだが、装飾を欠き、細長く引きしまった身は、さながら獣の角のよう。

「俺がまだ若造だったころに使っていた剣だ。今もときたま研いでいる」

「なぜ――続けるのですか?」

 関本は終始落ち着いた声で答える。

「やられる前に、やるためだ」


 ――恐い。身が震える。

「肌身離さず持っているがいい。このことを教訓として覚えていられるように、な」

 ああ、この人は私とは全く違う世界に生きてきた人間なのだ。

 こんな、戦乱の中を生きてきた人についていくなら、まだ鴻野家でこき使われていた頃のほうがましにさえ思える。

 関本はそして、由奈にその鞘をにぎらせた――重い!

 ふと腰を抜かしそうになる由奈。

「お前が一人前になったら同じ剣をもう一振りやる。それまではそれだけで我慢しろ」

「で……できません!」

 無意識に、関本に差し出していた。

「そんな、いつ死ぬか分からない場所で生きられるような人間じゃありません。ずっと、それを知らずに生きてきましたから……」

 手の平を出して、あい変わらず悠長に構える師匠。

「構わん。誰だって最初はそうだ。気づいたらそんな恐怖は消え去っているのさ」


 由奈には何万何千もの感情が去来する。

 私はかつて王女だった。今はもう下女としてどん底にいる。

 私はこれから何をすればいい? この人は私に何をさせたい?

 私は、何になりたいんだ?


 由奈は、考えてもきりのない不安に、押しつぶされそうになっていた。


「昔の思い出について訊くのはまだ、だめか」

 由奈の繊細な精神を、関本の声は幾分かやわらげていた。

「……この宝石のことですか?」

 ――あんな奴らだから取り上げるんじゃないかと思ったが、まだ人の心があるらしい。

「さっき母上からもらったと聞いた。どうしてだ?」

 ――今は黙って、この人に従うしかない。まだ、何者にもなれていないんだから。

「……はい。『会いたい人を引き付ける力』があるそうです」

 関本はゆさぶられ、少し顔をそむけた。――そんな力、欲しくもないな。


「でも、もうお母さまは――」

「いや、それは語らなくていい。お前が嫌なことは話さなくていい」

 由奈が完全に心を開いた状態だと期待してはいない。それより、心の傷を広げることはできるだけ避けたい。

「お前が一番言いたいことを言えばいいんだ」

 由奈はまた眉をひそめる。鈍く光る短剣を細い両手でかかえ、その身をだれか親しげな人間みたいに見つめている。

 関本は黙ることにした。まだこの少女には、抱えているものが多すぎるのだ。

 じっとして、刀身に目を留めたままその場に。


「訊いてすまなかったよ。どうしても人の心が読めない性格でね」

 がんばってその表情を保とうとしていることはいなめない。

「まだ、自分の感情をとらえられないんです。あの日のことをどう考えてるのか。どれくらい悲しんでるのか。自分でもさっぱり」

「ああ。たった今知り合ったばかりだからな。まだ互いのことを何も……」

 突然、関本の顔つきが変わった。眼筋をひきしめ、由奈の背後を鋭い目でにらみつける。


「由奈!!」

 突然、少女の体に黒い影が飛びつき、虚空へと持ち上げていった。


 ◇


 あかりのない、閉ざされた木立の中。闇ばかりというわけではない。光の結晶が霧みたいに、無数に散っている。一匹一匹が命を持った、森の精霊。


「……姫様!」

 気を失ったままの由奈に、津山は叫ぶ。

 今すぐにでも両腕でゆさぶりたい気持ちだったが、王女にそんな無礼は許されない。

 ――もし、あの時のことをお忘れでなければ、私のことをまだ覚えていてくださるはずだ。

 辛抱づよく、侍従は待つことにした。そして、その時はきた。


「……ここは……」

 由奈の体がわずかに震え、目が静かにあき始めた。

 その目はまず一人の男の顔を目にした。

 すっかりやつれてしわが出てしまったが、かつての流れるような輪郭は消え失せていない。黒縁の眼鏡は顔の半分を飾り、鼻のつくりにしても、眉毛の描きにしても、新木の小枝のようにつつましい。

 由奈はそのような顔の人間を、記憶していた。


「あなたは!!」

 由奈は反射的に津山の両腕から離れる。まず、ひそやかな恐怖をもって。

 誰かであることは分かっても、誰であるかを思い出すのは一瞬の後。

 男は期待と不安の入り混じった表情で、少女の顔を注視する。

「……なぜ、ここに」

 津山は興奮した声でまくしたてる。

「ああ。私は待っていたのです、この時を! 再び王女に巡り遇う時を!」

 相手がどんな心情であろうが、お構いなしに。

「宝石の力のおかげです。そして、姫さまがまだ存命であることこそ、伊豆王国は滅びていないということの証左ではありませんか!」

 はげしい感激に、しかし由奈は同調しない。

「ねえ……津山」 目はやつれ、低い声のまま。


 異様な反応に、めんくらう。

 しばし沈黙してから、津山の心に落ち着きとともに、影が差す。

 ――ああ。何と言うことだ。苦難の日々が姫様を憔悴させてしまったのか。

「……いかがなさいました」 一抹の不安をいだきつつ。


 辛い。うれしいからこそ、逆に辛さが倍増してしまう。

 目の前にいる人間は、自分がもっとも信じていた人間なのだ。かつては、自分の一部とも言ってよいほどの。

 すでに切り離されてしまった。今は関係のない、赤の他人。

「もう、私はあの時の私じゃない」

「何をおっしゃるのです。私とともに王宮の庭を駆け巡った日をお忘れですか?」

 笑って見せる津山。

「いや。あの時私は二度、あなたに勝ったよね」

 由奈も津山と同じ顔になった。心はその真逆なのに。


「そう。では、初めて文字を習った時は?」

「あの高価な絹の布地に落書きしちゃったかな。あまりちゃんとは覚えられなかったんだけども」

 由奈は笑うしかなかった。いやずっと笑っていたかった。こんな日がまた来るなんて思ってなかったから。

「その時は召使にちょっと叱られたかも。何しろ国書に使うものに勝手に書いちゃったからね」

「高値のものをはたいてしまった私にも責任がありましたから……」

 ――なぜ、こんな話をしていられるんだろう。自嘲が心を腐らせてくる。

「今でもあの頃のこと、忘れない」

「それはよかった……」


 津山の笑顔が、そこで途絶える。


「なら。なおさら。――なぜそのようななりなのです!」

 激高する津山。腕も頭も振るわせて、歯をくいしばって。

「姫様はなぜそんな粗末な衣装なのですか? 誰があなたの身を辱めた? 今すぐにでも見つけ出して、八裂にしてやる!!」

 由奈は、おびえた。津山がこれほど憎しみを露わにしてさけぶ情景など、見たことがない。それだけに大きい衝撃。


 津山も自分の逸脱に気づき、やや顔をしかめる。

「……一体何が、あったのですか?」

 由奈も震える。あの言葉を、繰り返したくはない。


 しかしその時、望まない来客。

「由奈!!」

 遠くから関本の叫び。

「関本さま……?」

 由奈は無意識に声の方向を。一方津山は怒りを含んだ疑いの目で、

「さま……だと!?」


 ――あいつは、俺が見こんだ相手だ。もしいま逃せば――

 長剣を片手ににぎり、由奈へと向かう関本。

 道を外れた木々の間にわけいって、軽快な動きで走り抜ける。魔術の力でなければありえない動き。

「関本さま!」

 由奈が名前を呼んだ時、関本は場所を知った。

 一踏で草おいしげる地面を飛び越え、たいまつがともすあかりの中へ突入する。


 一人の少女、一人の男が立っていた。


「貴様、どうやってここに来た!?」

 男は激しく怒った声で関本に。

 背は高く、肉づきは薄い。眼鏡ごしに、強くつりあがった目を見せつける。


「無礼な物言いだな。貴様こそ名をなのらないか」

 知らない男がいるこの状況、関本はいてもたってもいられなかった。

「ここにいらっしゃるのは畏れ多くも伊豆王国の姫君、木下由奈殿下であらせられるぞ。貴様ごとき無頼漢が側にいていい人間などではない」

 高慢にさえ思えるその声は、しかし一種貴族の気高さにあふれている。

 関本はすでに、この男がただ者ではないことに気づいていた。なるほど、

「となると、うぬはその侍従らしいな?」

 

 由奈は、目をつぶって鑑まいとした。どちらにも、加勢なんてしたくない。

 たった今遇ったばかりの関本に比べれば、津山はずっと長い年月、苦楽をともにした仲だった。

 自分の心を、奥深くまで知っている忠実な従者。

 だが、それはいつの話なのだろう?

 頭をうつむく。地面には、関本が受け取った短剣が力なく横たわる。

「答えてやる義理はない。姫様に少しでも触れれば容赦はしない」

 津山は、あくまでも由奈の理解者として望む。


 だから関本も、話を続けることなどできなかった。

 いよいよ柄をにぎりつぶし、片足で土を踏み鳴らした時、


「束縛せよ。――シラクモアミ!」


 突然白い光条が津山の前で現れて次々と関本に飛びかかり、瞬く間にしばり上げてしまう。

 屈強な肉体にも関わらず、光の網が関本の鎧に密着して、完全に動くこともままならない。


「な、何を……!」 関本は、なんとか自由な口をしゃにむに揮う。


 完全に彼のことなど眼中になかった。

「さあ姫様、この者に構う必要はございません。私とともに参りましょう」

 打って変わって優しげな声で、おびえる主人に手をさしのべる。

 しかし主人の方は、申し出に対し決して乗り気ではない。


「……どこに?」

 由奈は、暗い顔、暗い言葉で従者に。

 関本がせっかくあの奴隷の家から連れ出したというのに、まるで戻らねばならないかのような意気消沈ぶり。

 津山は失望した。本来失望してはいけないはずなのに、じわじわと気力が抜けていくのを実感せずにはいられなかった。

 ――これが今の姫君か。どれほどの辛酸をなめたのだろう?

「なぜ、そのようなお顔なのです? なぜ」

 津山は、できるだけ由奈を刺激しないように問う。

「だから、私たちはどこに向かうの?」

 ――論を待たない。突然現れたのだし、何よりやり方も不作法に過ぎた。


「北に向かいましょう。ここは駿河王国の深奥。とても生き延びられる環境とは見えません。そこでまずこの国から逃げなければならない。ところで、坂東地方の諸国が信濃王国に次々と軍隊を送り出し、圧迫していることはご存知でしょう?」

 静かに、自分の策略を打ち明ける津山。

「かつて信濃は伊豆の盟友でした。以前伊豆が信濃と結んで駿河を討ったことがありましてな。だから彼らは我々を歓迎してくれるはずだ」

 しかし由奈は、顔色一変えなかった。そんな話には興味もない、という風に。

 さすがに津山にも、不満めいた感情がこみあげる。

 ――私がこれほど尽くしているというというのに、なんという薄情ぶりか。


 もだす津山。虫も死んだように鳴き声をちっとも発しない。

 長く続くこの沈黙を破ったのは、関本だった。

「……それがお前の忠誠か?」

 ただその一言で、津山は感情を逆なでさせられる。

「黙れ。姫様とわずか一夜しか過ごしていない貴様に、姫様のお心がわかるものか」

「俺が見た限りでは、由奈はさして王国のことなんて関心もない様子だったぞ」

「それは、貴様の判断がにぶいからだ」


 由奈は耳を塞いでいた。こんな不毛なけんかに、何の価値が。

 その後も津山と関本は激しく言葉を闘わせていた。聴き取りたくもない雑音の数々。

「――私はもう姫君じゃない」

 どちらかが言い終わるともなく、叫ぶ由奈。

 一振の短剣が、足元でなお見捨てられている。

「伊豆王国はもうない。私は元の身分をすてて、関本様の……」

 刃の鋭さを、気味悪いものとして捉えつつ、

「しもべ、になったの」


 津山は腸も煮えくりかえる気分だった。まさか自分のたのんだ人物がこれほど根性をなくしているとなると、決して心穏やかにはいられない。

「関本と言うのか? 一体姫君に何をしでかした……!!」

 白い網は幾重にも関本の体にとりついている。津山の意志がある以上、関本は決して

「俺は鴻野家でその子と遇って、哀れだったから解放してやっただけだ。他意はない」

「そうだ、私も姫様を偶然にお見つけしたわけではないからな。鴻野家に姫様がいらっしゃるとの情報を得るまで、国々を巡り歩く日々だった。どれほどの紆余曲折があったことか? だのに……貴様が!」

 がつがつと歩きだしたので、由奈は怖気づいて叫ぶ。


「やめて!」

 ――我々の悲願を、ここで挫折させるわけにはいかない。津山は必死だった。

 もしここで姫君をのがせば、自分の存在価値はかけらもなくなってしまう。

「なぜ、それほどまでにこの男をかばいなさるのです! たった」

「もう、どうだっていい! 私はそんなきなくさいことに関わりたくないもの!」

 由奈は怒りさえこもった調子で、津山を拒絶したのだった。


「全く、どちらにつけばいいのやら……」

 ぼやく関本。――俺はそんな迷いからすでに自由になっている。国を復興させるだと? 今さら国自体がなくなってしまった今頃に……。

 どちらにも、舌打ちしたい気分。


「無論、私が勝手なことも承知しております……」

 津山を、激しい虚無感が襲う。

 津山は、その存在を決して肯定するつもりなどなかった。だからこそ、どこまでも、ねばりつづける。

「私にとってはあの日々こそが総てだった。姫様と一緒にいられればそれでよかった。伊豆王国が存在する世界が当然のものでしたから。けれど、都の崩壊で何もかもが崩れてしまった!」

 自分は王国を復興させなければいけないのだ。かつての日常を取戻すために。そうすればまた、本来の自分になれるかもしれないと、そう。

 姫君も、かつての姿に。

「それ以来私は誰でもなくなったのです。あなたの従者でない私など生きている意味がない。だから! 要求するのです――伊豆のあらたなる国王として、即位していただきたい!」

 片腕をあげ、拳をにぎりしめ、静かに震わせる。

 一体どれほどの力がこもっていたのだろう。由奈は、血がにじむ音を幻の中に聴いた。


 ――逃げ出したい。顔をそむける由奈。

「ねえ、一つ訊いてもいい?」

「……何を」 ほとんど、津山の声は礼節をかいていた。

 すでに、由奈がかつての栄光と決別したと、分かった後だったから。

 ――どんな言葉を、おかけになるのやら。


「母上はどこにおられるの?」

 目を見開く津山。

「母上は――」

 津山は、目をつむる。

 下田の都が陥落した時、何をしていたか。

 さして戦うことも知らなかった彼は、宮殿から逃げ出したのだ。由奈や他の女官を連れて、ひとけのない場所に避難しようと。

 女王自身は、あくまでも宮殿に居残った。相討になるのを覚悟で。

 だから、女王の最期を目にしてはいない。だがどうなったかは分かる。

 一国の君主たるお方が名もない一兵卒の槍で砕けたのだ。

 その後? 想像するだにおぞましい。首級となって駿河王の元に運ばれる方が丁重なくらいだ。わざわざ想像するまでもない。思い出せ! 名前も知らない無数の民草を!

 斬り殺された、捕えられた、売り飛ばされた!

 そして、耳を塞いだ。


「そうなんだ」

 由奈はごく低い声で答える。失望も、憎しみさえも、もうそこにはなかった。

 津山は、それまで以上に強い屈辱を感じ、その場にへたれこむ。様々な感情が抜けだしたかのように。


 関本は、なぐさめるように言う。

「あきらめろ。お前は姫君の従者ではない」

 ――なんと面倒な奴だ。これ以上無駄話に耳をかたむける時間はない。

「お前の様子を観ると、過去の苦しみに縛られているとしか思えん。由奈の方がはるかに今に生きている」

 由奈の地面にはまだ短剣が捨てられたまま。


 しゃがれた声を散らす津山。

「うるさい! うるさい! うるさぁい! 私はこの野望を達成せねば、死んでも死に切れんのだ!」

 やおら立ち上がり、血走った目を前方に投げかけ、

「さあ姫様、どうか私の手をお執りください! 私は」

 心臓があまりにも痛い。津山がたとえ過去に偏執しているとしても、その根幹にある感情は本物なのだ。

 それこそ、まさに由奈がはるか昔にほうり捨てたもの。だからこそ、自分の汚点を示されるかのように、痛かった。

 由奈は楽な方を求めた。すなわち津山を、

 否定する方を。


「あなたの知ってる木下由奈はもう、いないから……」

 続ける関本。

「と姫君がおっしゃっておりますぞ、さあどう出ますかな従者どの」


 津山はもう二人を知らなかった。右手を開いて挙げ、何かの反響する音とともに叫ぶ。

「炎の精霊よ、我が求めに応じて顕現せよ……」

 右手に、白い光がともり、どんどん輝きを増す。

 ――ああ。みんなおしまいだ。あの男を始末してやる。そして私自身も……


「まずい……何を召喚する!」

 精霊への嘆願によってシラクモアミの魔力が切れた関本は、すぐに剣を構えて魔法を考えつくが――この距離では、間に合わん!


 由奈は無意識に地面の短剣を片手でつかんでいた。

 ためらうことなく、津山の太ももに刃を突きさした。


 肉をつらぬく感触。

「あ」

 由奈はすぐに引き抜き、後ずさり、見上げる。

 津山の背後に円形の文様が燃えかけていたが、突如光を失いくすぶりだす。

 そして津山の体ががちりと動かなくなり、わずかに激痛をくらった場所に顔を向けて、

「ああああああああ!!」

 後ろへ、ばたりとたおれゆく。

 

「木下由奈はもう、死んだ」

 由奈は短剣を両手で持ち、きっさきをのたうち回る津山に。

「もう、この世のどこにもいない……」

 ――ああ、今、目の前で人が苦しんでいる。でも、この人は、誰?

 もう、関わってやる暇も、ない。


 関本はため息をついた。

「『会いたい人を引きつける力』――ろくなもんじゃないな。俺だったら川に流している所だ」

 ――会いたい人とは誰だ? 憎い人間にも会わせてくれるとか? じゃあ復讐にもつかえそうだな。そうやって一族皆殺しにした、あの男を呼び寄せて……。

 馬鹿げた妄想だ。そんな醜いことに使うために女王は姫に宝石を与えたのか? 断じて、そんなはずはない。はずはないにしても、なんと愚かしい結末。


「お前は姫様じゃない……」

 津山は、息をしぼりながら由奈を罵る。

「こんな薄情な娘が……あの姫様であるはずは……、ない……!!」

 関本は由奈のところにまで歩み寄り、その横顔をながめる。

「あ、あ」

 瞳が小さくちぢまっている。

 開いた口が一定しない幅でゆれ動く。

 両手がだらりと下がって剣を今にも落としそうに。

「いくぞ、木下姫」

 津山の顔を見ないように、由奈の肩をつかみながら。

「この男はお前の従者ではない……」

 それでも由奈は動かなかった。関本は引きずるようにして由奈とともにこの場を後にせねばならなかった。



 ――私はとんでもないことをしでかした。

 津山を刺した時は、さして罪深さに苦しんだわけではなかった。自分でも、何が起こったのかわからなったから。

 だが時間が経つごとに、平然と生きている自分に、とてつもない違和感。なぜ、あれを許してしまった?


「なぜ俺を救った、由奈?」

「え……?」

 二人は、月が照らす道の外れ、ごつごつした岩の上に座り語らう。

「お前が奴を刺してくれなきゃ、俺の命はとうになかった。いや、なぜ俺を選んだ? わずか数日の付き合いなのに?」

 再び由奈に震えが生まれる。これこそが、この世の恐ろしさ。

 あれほど心も体も一緒だった人間を、簡単に見放してしまったのだ。選んだのは、この夜出会ったばかりの、素性のしれない戦士。由奈は驚くほど、この男のことを疑っていなかった。そのこともまた、かえって怖ろしい。

「わ……わかりません。でも……」

 ――なんだろう。津山と再会した時、ほとんどうれしいとは感じなかった。一種のなつかしさはあっても、安心感と言うには少し違う。

 もし、昔通りの私たちだったら決して会話がこじれるはずはなかった。けど、事実は逆。

「どうだ、由奈。まだ俺を疑っているか?」

「な、何をですか?」

 ――だめだ、まだあの男のことが頭の中から消えない。心の奥底にまだ忍びこんでいる感じ。いつでも、また表に出てくるかも……。

「俺たちはたがいをまだよく知ってはおらん。お前が俺を信じているとは言い切れんからな」

 津山の呪縛とあいまって、由奈はやや薄暗い気持ちになる。

 ――このお方は強い。強いからこそ、堂々と私に接することができるのだ。けれど、私は師匠様を……。


 由奈は、言葉に迷ったあげく、

「でも不思議ですね。せ……師匠様とはもう何年もつき添っている仲、という感じがします」

 不意に苦笑する関本。

「おいおい、まだ一日も経っておらんぞ?」

 ――やはりこの世の中に慣れ切っていないんだな。汚れの多いこの世の中に。少女は自分を信じようとしている。

 いや、きっといずれその時はくる。どうせこんな仲も長続きなどしないのだから。

「だが……お前にとって、ここは忌まわしい場所であることに変わりはない」

 すると、由奈の顔つきが一気に鋭くなる。

 ――ああ。離れたがるのも無理はない。

「どこに、ゆくのですか」

 答えが待ち遠しいかのように師匠を見上げる由奈。

 

「もうこの地にも要はない。ちょうど離れようと思ってたしな。これからどんどん西国へ向かうつもりなんだ」

 すでに由奈は関本の話に聴き入っていた。

 ――これから私は、国々をさまようことになるんだ。もう国を失った以上、もう元にはもどれない。

 不安だった。だが同時に、明るい気持ちがどこかでただようのも感じる。

 これから何があるんだろう? 何を経験するのだろう?

「ひとまずは近江の国、大津に行くとしよう。あそこには知己がいてな、数ヶ月は食わせてもらえるはずだ。何より闘技場があるし、一流の戦士が集っている街でもある」

「おうみ……?」

 興味津々な眼光。

「知らないのか?」

「いえ、坂東や南海の国々しか耳にしたことがなく……」

「そうか。それだけ目にしている世界が小さかったわけだな。これからは違う」

 怖い。けど、明るい。どちらが少女の感情を占めているのやら。

「俺たちはもっと広い場所を旅するのさ。どこにもとどまらない旅だ。お前も、加わるだろ?」


 一瞬の間をおき、うなずく由奈。

「……はい!」

 ――この人なら、信じる心を、どこまでも持ち続けられるかも――その時は、そう思っていた。

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