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(株)ダンジョン  作者: Nob4
7/7

7 正直、舐めていたかもしれない

更新が遅れました…

 翌日から早速慌ただしい日々を送ることになった。駆け出しの起業家に休んでいる暇なんてないし、休みなんてあって無いようなものだ。常に仕事のことが頭の片隅にあるからな。

 そして、覚悟していた…いや、覚悟しているつもりだったが、事前の予測を遥かに超えていた。本業の開発についてではなく、会社の運営についてだ。各種届出・手続き・経理や労務等々…

 もちろん事前に下調べはしていたしタスクとして書き出してあったが、実際に書類という形で目の前に出てきた瞬間に諦めた。百聞は一見に如かず、捕らぬ狸の皮算用。開発の合間に済ませれば事務方の人件費を浮かせることができる、そんな甘い考えを持っていた自分自身を叱りつけてやりたくなる。


 素直に専門家に依頼することにした。餅は餅屋だな。

 幸いなことに大学時代の友人に司法書士・税理士・社会保険労務士といったそれぞれの道の専門家がいるので、素直に彼らに依頼することにした。優秀な友人がいてよかった。


 諸々の事務方業務については外注したので、これでやっと本業に集中できる。開業直後でリソースが限られているのに、少ないそれをさらに本業以外に割くなんて本末転倒だと今は思う。

 これでやっとやりたいことに集中できる環境がある程度整った。焼き鳥で会社名を発表してから1週間が過ぎた。


「やっと先輩も本腰入れて開発に取り組めそうデスね」

「そうだな、正直甘く見ていたと思う、反省しないと」

「そこまで気にしなくてもいいと思いますよ」


 オフィスでもあるリビングで、窓の外を眺めながらアイスカフェオレを飲んで一息ついていたが、エミリーも少し休憩するようだ。

 俺が手続きや外注の契約・打ち合わせなどで忙殺されていた間、エミリーには先に開発に取り組んでもらっていた。


 開発しなければならないものは山のようにあるが、当然のことだが今後の計画を踏まえて優先順位をつけてある。

 エミリーはダンジョンに最適なAIの開発だ。といっても、ゼロから開発するわけではない。いくらエミリーが優秀でも負担が大きい。彼女にはオープンソフトのAIをカスタマイズしてもらっている。それなら大丈夫だと言っていたので信じて任せることにしたのだ。もちろん追加要員が必要な場合は手配するつもりだが、そこの判断も任せている。


「それにしても、あのパネル素材は凄いデスね。どこのメーカーデスか?」


 話題に出たのは今日届いた荷物のことだ。この素材を知っていたからダンジョンを作ろうと思えたんだ。


「パナニックっていう日本のメーカーだよ。本当に凄いよな、透明の液晶パネルなんてさ」


 作業机兼テーブルの上からパネルを一枚取り、パネル越しに窓の外を見る。こいつは可能性の塊だと、そう思う。


「これがリアルとバーチャルの境界線だ」



 十月に入り少し肌寒さを感じる日も増えた頃、会社設立から二ヶ月が経った。

 元々優秀な二人が脇目も振らずに作業に没頭し続けた結果、MRゴーグルとAIの開発も順調に進んで完成の目処もついた頃、開発を次のステージに進める知らせが届いた。


You've Got Mail.You've Got Mail.


「せんぱーい、スマホがなってますよー」

「お、サンキュー。今からカフェオレ入れるけど、エミリーも飲む?」

「ホットでお願いします!」

「オッケー」


 スマホを受け取り、いつもと同じようにキッチンに向かう。気が付いた時には俺がカフェオレ係?みたいな感じになっていたけど特に気にしていない。何故ってそもそもカフェオレを飲みたいのは俺であって、ついでにエミリーの分も淹れているに過ぎないからだ。一杯も二杯も変わらないからな。

 マグカップにコーヒーを注ぎ、たっぷりのミルクを注ぐ。あくまでミルクの甘さだけにしたいので砂糖は入れない。ミルクを入れて温くなったカフェオレを電子レンジで温める。


「はい、お待ちどうさま」


 微笑みながらお礼を言って受け取るエミリーを見て思う。大分慣れたけど、やっぱりかわいい。天使の微笑みをチラ見しつつカフェオレを一口含む。

 優しい甘さに癒されながらメールをチェックし、その内容に思わずにやけてしまった。ついに出来たか、と。


「エミリー、カフェオレを飲んだら出かけよう。今回は一緒に来て欲しい。前に依頼していたものが完成したそうだから、現地で直接内容を確認して問題なければそのまま受領するつもりだ」

「デートデスね!帰りでいいデスから、秋・冬の服も買いに行きませんか?」


 …はい?それは楽しみだけど、俺の話のどこからそんな返事が捻り出せるんだ?


「いやいや、仕事!帰りね、帰りに買い物するから向うに着いたら集中してくれよ?!」

「もちろんデス!」


 妙に気合を入れて自室に着替えに行ったエミリーの背中を見送り、思わず溜息をついてしまった…

読んでいただき、ありがとうございます。

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