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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

誰よりも英雄だった男

作者: 柴野まい
掲載日:2017/06/04

 英雄と呼ばれた男がいた。

 男は戦争で功績を挙げ、平民から英雄となった。


 戦争で功績を挙げたということは、沢山の人を殺したということである。

 沢山の人を殺し、彼は英雄と相成った。


 全ては祖国の為に。


 男は孤児であった。

 生きるために何でもした。

 盗み、喧嘩、殺し、人には言えない事まで。

 そんな仕事の方が金が沢山貰えたから。


 そんなある日、彼は盗みの現行犯として憲兵に捕まった。

 牢で処分を待つだけだった男に誰かが聞いてきた。

 お前に家族はいないのか、と。

 男は答えた。

 家族とは何ぞや、と。

 その誰かは驚いていた。

 男には何故驚かれたのか分からなかった。

 その誰かはいつの間にか居なくなった。


 そして、処分が降る。

 それは国の孤児院へ行く事だった。


 男は大層驚いた。

 刑罰が降ると思っていたから。

 刑罰が降るはずだった男は孤児院へ行った。


 孤児院では何もかもが新しい事だらけだった。

 いつも誰かがいる。

 いつも誰かが笑っていた。

 いつもご飯が食べられた。

 暖かいお湯に浸かれた。

 ほんの少しの仕事だけで金が沢山貰えた。

 人の暖かさを知らずに育った男にとって、其処は幸せに満ち満ちていた。

 男の今までの人生からは信じられない事だらけだった。

 男はこの楽園を作った国に深く感謝した。



 数年後、孤児院を出た男は戦争に志願兵として参加していた。

 国を脅かす蛮族を排除するために。


 男はもうすでに人殺しだったから、良心が今更痛むはずもなく。

 ただ淡々と殺し続けた。


 男には武の才能があった。

 それもただの才能ではなく、天賦の才が。

 しかも、肉体はその時が全盛期。

 剣を使い、的確に蛮族の首を跳ねていく。

 そんな芸当は他の凡百の者には出来る訳がなかった。

 人を人とも思わないで淡々と首を跳ねていく姿に、仲間のはずの人すらも恐怖させた。


 だが、男が蛮族の首を跳ねながら蛮族の頭領のいる場所に行き、頭領の首を呆気なく跳ねる。


 蛮族は降伏した。


 そして男は国で功績を積む。

 功績と言っても他の国にとっては傍迷惑だったろうが。


 功績を挙げて、男はいつの間にか英雄と呼ばれていた。


 男は祖国を守っていただけであったから、英雄なんて自分には出来ないと思っていた。


 だが彼は、英雄に相応しい活躍をした。

 敵の大将を葬り去り、宰相と国王を捕虜にした。


 その功績で、彼は大将となった。


 だが、男も人間だった。

 敵から受けた剣。

 それは、男の鎧を貫通して、体を抉る。

 耐え難いほどの痛みに襲われながらも、男は祖国を守るために戦う。

 しかし、途中で折れた。

 男が折れて。敵の蹂躙が始まった。


 男はそれを見ていた。

 動けない体で。

 いくら体を奮い立たせようとしても、動かない。動かせない。


 そして男は捕虜となった。


 因果応報、彼を表す言葉はそれが一番相応しいだろう。


 そして、男が居なくなった祖国は降伏した。


 男はその事を知らなかった。

 男が祖国に帰ると、浴びせられたのは耳をつんざくような罵声。


 人殺し、戦犯、愚王の狗と。


 つい先程までは英雄だったはずなのに、今男は愚者と呼ばれていた。


 そして男は処刑される。

 祖国の為に。


 処刑の日、英雄はこんな言葉を残した。


「英雄とは誰よりも愚かな者であろう」

「祖国に栄光を」



 誰よりも英雄だった男

 fin

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