第35話 「恋を綺麗な思い出に。」
その日の昼休みに、朋ちゃんに心境を話した。
朋ちゃんは、黙って私の話すのを聞いてくれた。
「理子はそれでいいの?あきらめちゃっていいの?」
朋ちゃんは言った。
「あきらめるわけじゃないよ。」
私は言った。
あきらめたわけじゃない――
サッカーの試合に室岡くんと付き合っていた女の子が来ていて、
彼と楽しそうに話しているのを見た時は、胸が痛かった。
好きでいるのが辛いと思った。
でも嫌いになんてなれなくて、そう思おうとすれば余計、好きな
気持ちだけが溢れた。
だから、好きだという気持ちは今も私の中にある。
でもそれだけ。ただ彼を好きなだけ。
これ以上恋に悩むのは嫌だった。傷つくのが恐かった。
それは逃げなのかもしれないけど、こんな恋の形もあるんじゃ
ないかって思う。
そう朋ちゃんに話すと、彼女は”そっか”と言った。
「理子がそう決めたんなら、私はそれでいいと思うよ。」
朋ちゃんが言う。
「うん、ありがとう。」
そう私は言った。
出会ったことは運命でも、この恋は運命の恋じゃなかった。
それでも、会えてよかったと思う。
いつもドキドキして、楽しくて、悲しいこともあったけど、
悪いことばっかりじゃなかった。
もしも、”好き”って言えるあと一歩の勇気があったなら、
こんな結末にはならなかったのだろうか?
だけど、”友達”というところにいたからこそ、あんな風に
笑いあうことができたのかもしれない。
一緒に笑いあい、言葉を交わし、時には君に触れた。
どれも全て一瞬の出来事で、だけどどれも永遠に感じられた。
好きになったのは高一のとき。
高三になった今でも、その気持ちは変わらないまま。
三年間、ずっと室岡くんのことが好きだった。
気が付けば三年間も彼を好きでいた。
私はこの恋と供に、高校生活を過ごした。
いつか、時が経って、今を懐かしむときが来たら、私はきっと
この恋のことを思い出す。
そして”あんな事もあったなぁ”って思ったりするのかもしれない。
おそらく一緒に思い浮かぶのは、室岡くんのあの声と、踵を
履き潰した内履きから鳴る、パタッパタッという音。
それからあの背中と、笑った顔。
私はそれらを思い出して、そっと微笑むことだろう。
綺麗なまま、穏やかの気持ちのまま、私は室岡君への恋を
ひとり、心の中のアルバムに仕舞った。
――好きだよ、室岡くん。――
私はアルバムに鍵をかけた。




