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高校生の恋。  作者: 黒蝶
13/40

第13話  「聖なる日のパーティー。」

初めて、クリスマスを家以外の場所で過ごした。

夏休みに海に行ったメンバーでクリスマスパーティーをする計画

が立てられたのは、冬休み直前の終業式の日だった。

最初にパーティーをしよう、と言い出したのは室岡くんだった

ようだ。

男子だけでは活気がない、との塚田くんの意見に、それなら気軽に

話せる女子がいいということで私達にお呼びがかかったらしい。

『24日、午後四時に林くんの家に集合だって。』

というメールが由美ちゃんから届いたのは、終業式の翌日だった。


今日は12月24日―――

私達女子は四人揃って林くんの家に向かっていた。

「こんな大勢で押しかけて、林くんの家迷惑じゃないのかな?」

冬休み直前に、眼鏡からコンタクトに買えた由美ちゃんが道すがら

に言った。

「大丈夫だよ。パーティーは明良んちのアトリエでやるって

言ってたし。」

彫刻を趣味としていた林くんのお祖父さんが、生前アトリエと称して

使用していた離れがあり、お祖父さんが亡くなられた今は、宴会場

として利用されることが多いと、さやかが話してくれた。

「さすが、よく知ってるね。」

私は言った。

「褒められても嬉しくないんだけど。」とさやかが言うと、私達

三人は一斉に笑った。

「ねぇ、プレゼント何にした?」

朋ちゃんが言う。

クリスマスらしくプレゼント交換も計画されていて、ひとりひとつずつ

プレゼントを用意して持っていくことになっている。

「女の子どおしならどんなものがいいかわかるけど、男子も

いるからね。」さやかが言った。

自分が選んだプレゼントが誰のもになるかわからないので、男子も

女子ももらって喜ぶものを選らばなければいけなかった。

「でもここで言っちゃうと楽しみが減るよ?」

そう私が言うと、「そうだね。」とみんなが口々に言った。

結局、プレゼントの中身は内緒になった。


林くんの家のアトリエに入ると、すでに男子達は飲んだり食べたりを

始めていた。

室岡くんもそこにいた。

「なぁ、こういうの考えたんだけどどうかな?」と陣内くんが

唐突に言ってきた。

陣内くんの案は、プレゼントが誰のものかわからない方がおもしろい

んじゃないか、という話だった。

ただそのまま交換するだけでは、包み紙などで誰が持ってきたものか

がすぐにわかってしまうので、黒いビニール袋に入れて中が見えない

ようにし、帰るときに好きなものをビニール袋ごと選んで持って帰る

ようにしないか、と陣内くんは言った。

「それおもしろそうじゃん。」

そう最初に言ったのは塚田くんだった。

「私も。やっぱプレゼントはドッキリがいいよね。」

と朋ちゃんが言う。

みんなその突然の案に賛成だった。

私も同じ気持ちだった。

誰かが室岡くんのプレゼントをもらって、それをすぐ近くで見る

のは気が進まなかった。

私達は各自黒のビニール袋を持ち、ひとりずつ順番に別室に入ると、

そこで用意してきたプレゼントを袋に入れ、そのまま広間へと戻る。

その作業は全員が入れ替え終えるまで繰り返され、最後に別室に入った

塚田くんが戻ってくると、私達は袋ごとプレゼントを大きなダンボール

箱の中に入れた。

どれも黒いビニール袋。

どれが私ので、どれが室岡くんのかわからない。

そうして私達のクリスマスパーティーは始まった。


全員が分担して持ち寄ったジュースやお菓子、サンドイッチなどの

軽食類は、みるみるうちに減っていった。

パーティーは本当に楽しかった。

気づくと夜の九時になりかけていた。

「もう遅いし、そろそろお開きにしようぜ。」

言い出したのは室岡くんだった。

何人かから”もうちょっと”などと言う声も出たが、あっさりと

聞き流されてしまった。

「何が入ってんのかな?」

由美ちゃんが言った。

私達は、ダンボール箱に入れられた黒いビニール袋を物色していた。

どれもみんな同じに見える。

私は手を伸ばし適当な袋を掴んだ。

重いとも軽いとも、小さいとも大きいとも言えないようなものだった。


室岡くんのだったらいいのに――


「これって、ひょっとしたら自分のものが当たる可能性あるよな。」

と林くんが言った。

そういえばそうだね――

とみんなが口々に言い、そして一斉に笑った。

笑い声が飛び交う中で、私達は林くんの家のアトリエを後にした。

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