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高校生の恋。  作者: 黒蝶
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第11話  「君と机を並べて。」

夏休みが終わり、新学期が始まるとすぐに席替えがあった。

黒板に書かれた座席表と、自分が引いたクジの番号を照らし

合わせると、私の新しい席は窓側の、前から三番目。

視力が飛びきり良いわけではないが、悪すぎるほどでもない

私にとっては、無難な場所だった。

「理子、どうだった?」

朋ちゃんが席を移動して聞いてきた。

私は窓側の席になったことを伝えた。

「いいなぁ〜。私なんて教卓の近くだよ。」

朋ちゃんが引いたクジは、真ん中の列の左側、前から二番目を

示していた。

授業中、教壇に立つ先生の視野に一番入りやすい場所。

「これじゃあ昼寝もできないじゃん。」と朋ちゃんは愚痴を

溢した。

そんな朋ちゃんに私は笑った。

「それじゃあ席を移動してください。」

平原先生が言うと、教室中が椅子を引く音や、机を引きずる音、

生徒達の声でざわめいた。

私は新しい席に机と椅子を置いて座った。

ふぅ――と一息ついた。

周りはまだ賑やかだった。

私の斜め前にはさやかが座った。

「やったね理子、近くじゃん。」

さやかが言った。

「ね。すごいラッキー。」

私達は”自習のとき一緒にやろう”などとたわいない事を話していた。

ふと気がつくと、私の隣に誰かが机を置いた。

私は隣に視線をやった。

一瞬、呼吸が止まったように私は固まった。

室岡くんがいた。

「あれ、隣佐倉?」

彼はそう言うと腰を下ろした。

「あ、うん。」

そう言って私は目を反らした。

室岡くんを見れなかった。

「あいつら三人して何気にくっついててさ、俺だけ離れてつまんねぇ

とか思ってたんだよ。」

廊下の方を見ると、林くん、塚田くん、陣内くんが、通路を挟んで

それぞれの席で話していた。

「何気に仁科もいるじゃん。」

さやかを前に室岡くんは言った。

「何気で悪かったね。」

室岡くんが笑った。

「よろしくな、佐倉。」

「うん・・・」

いろんな気持ちが混ざってる。

ドキドキして、そして胸の奥が痛い。

室岡くんが好きだと思った。でも彼には彼女がいる。


大丈夫、まだ戻れる――


ただの友達に。クラスメイトに。


私は彼を気になり始めただけで、本気で好きになったわけじゃない。


そう自分に言い聞かせた。


次の授業の時間になり、教科担当の先生が入ってきた。

みんなが一斉に席に着く。

隣の彼も席に着いた。

「寝てたら起こしてくれよな。」

彼が小声で言った。

見ると、ただ微笑んでいた。

またドキドキした。

静かな授業中、この心臓の音が教室中に響くんじゃないかってくらい、

その音は大きく、そして早かった。

隣に室岡くんがいるというだけで、こんなにも心がざわめく。

彼のことが上手く見れない。

前はこんなじゃなかったのに――

とにかく想いだけが溢れた。


もう、戻れないかもしれない。


室岡くんのことが好き――

私はもう、それしか考えられない。


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