父親は誰?
「シフォンがサホ様の娘!?」
「……はぁ!?アルドてめえ、突然夜中に起きだしてサホ達のほうに聞き耳たてて……お前寝ぼけてるだろ!」
私がノームの言葉を理解するより、アルドが事態を理解するほうが早かったようだ。でもさすがにルイスには聞こえないのか、彼はアルドが混乱していると思っているらしい。
「娘……本当に?」
確かに、最初見た時から何となく自分に似ていると感じていた。それにこの世界では魔法が使えるのは私のように異世界から来た人間かアルドのように特殊な血脈の者、そうでなければルイスのように突然変異しかない。でもそれだって一つの時代、一つの属性に一人だ。それを破ってしまう存在は。
「未来から?……!もしかしてお昼の話、本当だったの?私が仕事も完了しないうちに死んで、それで生き残った貴女が助けに?」
シフォンはずっと俯いていた。唇を血が滲みそうなほど噛みしめていた。それでも精霊に言われては認めざるをえないのか、ぽつぽつと語りだした。
「お母さんは……死にました。私の知ってる母は、私の目の前で。懸賞金が出てるのを勘違いした連中が、死体でもそれなりに出るだろうと。残された私は逃げました。魔法は母以上に使えたから。フジまで逃げて、そこでライガと出会い、過去に飛ばしてもらったのです」
未来で私が殺されている。ぞっとはしたが、違和感はない。これまでシフォンは警告染みた事と言ってくれたし、魔法の事もこれで説明がついた。でも聞きなれない名前は何だろう。シフォンは知らないのが不思議だと言わんばかりに目を丸くした後、『ライガ』の正体を教えてくれた。
「フジの洞窟最深部に氷づけで眠る男の人の名前ですよ。……アルドの遠い先祖の親戚になります」
突然仲間に入った少女は未来から来た私の娘で、最終目的地にいる人が飛ばしてくれて、その人はアルドの親戚?で。私のあまりよくない頭は大混乱だった。駆けつけてきたアルドとルイスが部屋に入るまで呆然としていた。
「サホ!おい、大丈夫か?」
「……ルイス?」
気がつけばルイスが私の肩を抱いて心配そうに覗き込んでいた。不安にさせてはいけないと明るく振る舞おうとして、距離が近いのにはたと気づき、頬が熱くなる。つられたのかルイスの真っ赤になった。
「わ、悪い。無作法だったな」
「う、ううん、私こそ。ちょっと混乱してただけなの。心配かけてごめん」
こんな時なのに、ルイスのほうに気がいってしまう。でも仕方ないよね?だって好きな人なんだもん……あれ、そうすると。
「シフォン、そういえば父親って……」
アルドは茶色の茶目。ルイスは金髪で緑目。で、私の娘とされるシフォンは銀髪の緑目。一応予定では男の人はアルドとルイスしか関わらないで旅を終えるはずだったから……これ、そういうことなのかな?
「……母と、死にました」
いや、そういうことじゃなくて誰なんだっていう話なんだけど。でも強いて聞き出すのは心苦しいなこれ。
「え、サホの実子で間違いないのか、じゃあ……俺か!?」
と、ここでようやく事態が呑み込めたらしいルイスが発言する。え、ちょっとそれでいいの?だってそうなったら未来で私と貴方が結婚してるってことなんだけど、それで納得してくれるの?ルイス。
――サホ。サホ。実子と認めるのだな――
耳飾りのノームが確認をとるように言ってくる。何を今更。
――少しだけ、この少女を労わってやってくれ。未来を変えるために来た、哀れな娘だ――
そう言ってノームは押し黙った。父親の話、タブーかな。だってその話題の時に割り込むように言って、さらに未来を変えるために云々ってそういう事じゃないだろうか。シフォンは、私とルイスはどうなるのかな。
「サホ……ううん、お母さん、心配しないで。本当だったらお母さんは今頃、逃亡生活が始まって木の根を食べるような生活してたんだよ。それがこうやって無事に生活できてる。私、すごく嬉しいんだ」
父親のことは保留にしよう。今はそれより親孝行な娘が可愛い。うん。




